「お腹にブツブツができた…」
「かゆいけど、ダニが原因?」
市販薬の使用や病院に行く目安を医師が解説します。
かゆみの対処法やお腹にかゆみが出る病気についても聞きました。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
お腹にかゆいぶつぶつが…!これはいったい何?
原因として「①虫さされ(ダニ、ノミ等)」「②汗によるかぶれ」「③化学繊維による刺激」等が挙げられます。
① 虫さされ(ダニ、ノミ等)
虫のもつ刺激や毒により、アレルギーを引き起こす神経伝達物質のヒスタミンが増加し、炎症が生じてぶつぶつが生じる場合があります。
② 汗によるかぶれ
汗に含まれる塩分や尿酸等の成分が皮膚に刺激を与えることで、かゆみやぶつぶつが生じる場合があります。
③ 化学繊維による刺激
化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなど)の下着や服による刺激が原因で、ぶつぶつやかゆみが生じる場合があります。
お腹のぶつぶつ、どう対処する?
- 患部をタオル巻いた保冷剤等で冷やす
- 汗をかいたら早めに洗い流す・拭く
- 汗をかいたら着替える
などの対処をすることで、かゆみを抑制できる場合があります。
市販薬を使ってもいい?
症状が軽い場合や原因が判明している場合は、市販薬を使用してもかまいません。
薬局で薬剤師に相談し、購入してください。
ただし…
- 強いかゆみで患部を掻き壊している
- 患部が拡大している
- 原因がわからない
という場合は、市販薬を使用せず医療機関を受診してください。
病院に行く目安
- アトピー性皮膚炎を患っている
- 細菌等の感染が疑われる
- 眠れないほどのかゆみがある
という場合は、すみやかに皮膚科を受診してください。
お腹にかゆいぶつぶつができる3つの病気
お腹にぶつぶつができるのは、
が原因だと考えられます。
病気① 汗疹(あせも)
大量の汗により、お腹の皮膚表面の汗腺が閉塞され、皮膚中に汗が溜まり炎症が生じます。
高温多湿の環境下で汗が大量にかく・通気性が悪い衣類の着用・発熱が原因で発症すると考えられています。
症状の特徴
- かゆみがある
- 赤くて小さいぶつぶつができる
- 透明な粒状の水膨れができる
- ひりひりするような熱感がある
- かゆみを伴わない白っぽい湿疹ができる
どんな人に多い?
子どもから大人まで幅広い世代で発症します。
汗っかきの人・肥満傾向の人(皮下脂肪が多い)・多汗症の人・高齢者・汗をかいても放置してしまう人に発症しやすいです。
自分でできる対処法は?
- 汗をかいたらこまめに洗い流す
- 肌を清潔に保つ
- 下着をこまめに変える
- 通気性のよい綿素材の衣類を着用する
- 患部をタオルで巻いた保冷剤等で冷やす
- かゆくてもかかない
病院を受診する目安
患部を引っ掻いて細菌感染を起こし、とびひ状態になっている・ただれている場合は、早めに皮膚科を受診してください。
<とびひ状態とは>
とびひになると、傷口や皮膚の一部に、かゆみのある赤み・腫れ・湿疹が現れます。その後、強いかゆみを伴う水ぶくれ(水疱)があらわれます。水ぶくれは破れやすく、かいて潰してしまうと、まるで”飛び火”のように全身に発疹が広がっていきます。
病院で受ける治療法は?
- 炎症によるかゆみが強い場合 → ステロイド(塗り薬)
- 細菌感染が起きている場合 → 抗菌薬(塗り薬、飲み薬)
- アレルギーが原因でかゆみが起きている → 抗アレルギー薬(飲み薬)
を用いた治療が行われることが多いです。
どれぐらいで治る?
症状や治療内容により個人差がありますが、1~2週間ほどで症状が改善するケースが多いと考えられています。
病気② 疥癬(かいせん)
ヒゼンダニ(ダニ)がお腹の皮膚に寄生することでぶつぶつが発生します。
同居している家族間での感染もあります。
症状の特徴
- 赤色のぶつぶつが発生する
- 小さい水膨れのようなものが発生する
- 強いかゆみを伴う (特に夜間)
どんな人に多い?
高齢者施設や入院している人にみられるケースが多いです。
自分でできる対処法は?
疥癬は接触により感染する恐れがあります。
自己判断でケアせず、皮膚科を受診してください。
病院で受ける治療法は?
クロタミトンクリームやフェノトリンローションの塗り薬、抗ヒスタミン薬の飲み薬を用いた治療が行われます。
また、イベルメクチンという飲み薬が日本でも使用可能になりましたが、副作用が出る場合があるため医師との相談が必要です。
どれぐらいで治る?
出現している症状や治療内容による個人差がありますが、3~4週間ほどで症状が改善するケースが多いです。
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2022-09-30
疥癬を放置すると、どうなるの?
自然に治ることはある?
疥癬を放置した場合のリスクについて、お医者さんに聞きました。
早めに医療機関を受診すべき理由や、他の人にうつさないための過ごし方についても解説します。
疥癬(かいせん)を放置すると…どうなる?
疥癬を放置すると、
不快なかゆみが続く
皮膚の角化(皮膚の表面が硬くなる)が続く
赤い腫れが続く
肌疾患が慢性化して肌の色が黒くなる(色素沈着していく)
人にうつしてしまう
といったリスクがあります。
自然治癒することはないの?
疥癬は、自然治癒することもありますが、1ヶ月程度はかかります。
この間に、かゆみ・赤み・しこりなどが発生し、他の人に感染させる恐れもあります。
強いかゆみで睡眠不足になってしまう人も多いので、放置せずに医療機関を受診しましょう。
「アルコール消毒」などのセルフケアでは治らない?
疥癬はアルコールでは死滅させられません。
疥癬の原因となるヒゼンダニが皮膚に寄生している場合、セルフケアで死滅させる方法はないので、病院で治療を受けましょう。
病院は「皮膚科」を受診してください。
皮膚科を探す
「疥癬」ってどんな病気?
疥癬とは、ダニの一種である「ヒゼンダニ」に感染することで発生する皮膚の病気です。
強いかゆみ・肌の腫れ・赤いぶつぶつ・しこり・角化などを起こします。
ヒゼンダニの中には、人間だけに感染する「ヒトヒゼンダニ」という種類があり、体温が適温のため、人間に寄生して生きています。
とても小さく、目で見つけることは難しいです。
他の人への感染に注意しよう!
通常、疥癬は感染している人の肌から別の人の肌にダニが移動して、感染を広げていきます。
「角化疥癬」という感染力が強いタイプの場合は、衣類や布団を介して感染することもあります。
疥癬の症状が出ている場合は、他の人への感染に注意しながら生活しましょう。
他の人に「うつさない」ための過ごし方
肌を他の人に密着させない
衣類やタオルなどを共有しない
布団を並べて一緒に眠らない
同じ机の上で作業をしない
入浴は最後にする
治療が終わるまでは、上記のことに注意して過ごしてください。
なお、ヒゼンダニは、高温と乾燥に弱く、50度の場所に10分以上置かれると生きられません。
ご自宅に乾燥機がある場合は、衣類を乾燥機にかけるようにしましょう。
人から離れると弱る性質があるので、人の肌ではなく室内にいるヒゼンダニに対しては、殺虫剤を使用すると効果的です。
“うつる確率”はどれくらい?
割合は一概には言えませんが、患者との肌の接触が多いほど、感染率は上がります。
感染して症状が出るまでは、数カ月かかることもあるので、感染経路が不明なこともあります。
患部に刺激を与える行動はNG!
肌を掻く・擦るといったことはやめましょう。
ダニが飛び散って感染が広がります。
また、肌が傷ついて他の細菌などに感染してしまうリスクが上がります。
「熱いお風呂」は逆効果
熱い湯で入浴しても、ヒゼンダニを死滅させることはできません。
むしろ、ヒゼンダニの感染で弱っている肌には刺激が強く、抵抗力がさらに弱まる恐れがあります。
入浴の際は、通常通り40度程度のお湯に浸かりましょう。
体を洗うときも、強くは擦らずに優しく洗ってください。
市販薬は使ってもいい?
すぐに病院に行けない場合や、症状が軽い場合は、市販薬を使用してもいいでしょう。
「オイラックスソフト」
「イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏」
などの市販の塗り薬は、疥癬に使用できます。
内服薬で使えるものは、現在ありません。
※市販薬は、必ず薬剤師に相談してから使用しましょう。
「オイラックスソフト」は、クロタミトンという疥癬に有効な成分が配合されています。
「イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏」に含まれるイオウという成分も、疥癬に有効です。
ただし、これらの塗り薬を化膿している部分や傷になっている部分につけてしまうと、刺激が強く、逆に悪化することもあるので注意してください。
塗った際に刺激を感じた、肌状態が悪くなったという場合は、使用をやめて医療機関に相談しましょう。
「ステロイド配合」の塗り薬は使用不可!
疥癬を悪化させるため、ステロイド配合のものは使用できません。
先に挙げたオイラックスシリーズの中には、ステロイド配合のものがあるので注意してください。
「ムヒ」は使ってもいい?
ステロイドが入っていない「ムヒS」であれば使用できます。
ただし、根本的な治療にはならないため注意しましょう。
かゆみを抑える効果は期待できますが、ヒゼンダニを死滅させる効果は期待できません。
また、ムヒにもステロイドが入っているタイプがあり、そちらは使用できないので注意してください。
※ステロイドが配合されているかわからない場合は、薬剤師に相談しましょう。
早めに「皮膚科」で相談しよう
疥癬を疑う場合は、人にうつらないようにするためにも、早めに皮膚科で治療を受けましょう。
特に、
強いかゆみ
赤いポツポツ
角化(皮膚の表面が硬くなる)
肌にできた線状の盛り上がり
などの症状が出ている場合は、疥癬の感染が広がっていると考えられるため、早めの受診をおすすめします。
医師に伝えること
かゆみが現れた時期
かゆみの強さ(我慢できるか、できないかなど)
症状が出ている範囲
受診の際に上記のことを医師に伝えると、診察がスムーズに進むと考えられます。
この他、ヒゼンダニの感染が疑われる場合は、「疥癬が流行っていた場所に通っていた」「パートナーが疥癬に感染していた」など、自分がうつされるような環境にいたかについても伝えてください。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本薬局方 イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏
第一三共ヘルスケア オイラックスソフト
病気③ 痒疹(ようしん)
痒疹には急性と慢性があります。
どちらも発症原因ははっきりとわかっていませんが、
- 急性痒疹 → 虫さされ
- 慢性痒疹 → アレルギー(アトピー性皮膚炎等)・虫さされ・内臓疾患・糖尿病・悪性腫瘍・使用中の薬
などが関係していると考えられています。
症状の特徴
- かゆみを伴うぶつぶつができる
- 赤い色のぶつぶつができる
- ぶつぶつが散らばるように発生する
- 小豆くらいの大きさのぶつぶつができる
- 硬い茶色のイボ状の塊が発生する
どんな人に多い?
急性痒疹は子どもに多くみられます。
慢性痒疹は40歳から50代に多くみられると考えられています。
自分でできる対処法は?
痒疹は強いかゆみを伴うケースが多いので、皮膚科の受診をおすすめします。
引っかくと皮膚の一部が剥がれて細菌感染が起こり、伝染性膿痂疹を起こす恐れがあります。
病院で受ける治療法は?
ステロイド薬の塗り薬・抗ヒスタミンの飲み薬・抗アレルギーの飲み薬・漢方薬を用いた治療が行われるケースが多いです。
どれぐらいで治る?
1週間程度で改善するケースもあれば、年単位の時間を要するケースもあります。
症状や治療内容により個人差は大きいです。
何科で受診すればいい?
お腹にかゆいぶつぶつができた時は、皮膚科を受診しましょう。
薬の処方により、かゆみ等の不快な症状の改善や症状の悪化予防が期待できます。
放置してかゆみが強くなり引っ掻いてしまうと、細菌感染を起こす可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう。
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2021-02-17
全身に痒いブツブツができた…!
「痒みを抑えるためには、冷やす?温める?」
「市販薬を使ってもいい?」
お医者さんに、“正しい対処法”を聞きました。
発疹の原因と病院に行く目安も解説します。
全身に痒いぶつぶつが出た!どう対処する?
冷水・タオルで巻いた保冷剤を使い、かゆい部分を冷やしましょう。
また、市販のかゆみ止めや抗アレルギー薬を使用しても大丈夫です。
よくあるNG!間違った対処法
患部に爪でバッテンを作る
掻きむしる
温める
などの行動は、症状を悪化させる恐れがあります。
このぶつぶつは大丈夫…?病院行くべき?
ぶつぶつが数十分~数時間で治まり、症状を繰り返さない場合は、一旦様子を見てもいいでしょう。
ただし、
1日以上経っても治らない
ぶつぶつが悪化している
他にも不調(腹痛、吐き気、発熱等)がある
といった場合は、早めに病院を受診してください。
受診する際は、まず皮膚科で相談しましょう。
たとえば蕁麻疹なら1日で治りますが、1日経過しても出ている場合は他の病気の恐れがあります。中には他人にうつす皮膚の病気のケースもあります。
自己判断で症状を判断するのは難しいです。
病院できちんと原因を調べて対処するのが安心です。
皮膚科を探す
考えられる2つの原因
全身にあらわれる痒いぶつぶつは
蕁麻疹(じんましん)
虫刺され(ダニ)
が原因となっているケースが多いです。
原因① 蕁麻疹(じんましん)
蕁麻疹を発症すると、全身に痒いぶつぶつができる場合があります。
ぶつぶつの大きさには個人差があり、1~2mm程度から、皮膚のほとんどが覆われるケースまであります。
蕁麻疹は、あらゆる人が発症する症状です。
ぶつぶつの特徴
皮膚の一部が赤く盛りあがる
線状・円形・楕円形など、形はさまざま
通常、ぶつぶつは数十分から数時間以内に消える
(半日から1日ほど消えない場合もある)
蕁麻疹の原因
蕁麻疹の原因は、実に様々です。
例えば…
汗による刺激
寒い環境にさらされる
日光の刺激
アレルギー物質の接触、摂取
特定の薬剤による作用
などがよくある原因です。
疲労やストレスも、蕁麻疹の発症に関わっています。
また、膠原病やシェーグレン症候群など、病気によって引き起こされるケースもあります。
発症しやすい人
アトピー体質やアレルギー体質の方に発症しやすいです。
自分でできる対処法は?
アレルギーに心当たりがある場合は、原因の食品や物質を避けましょう。
また、ストレスや疲労がきっかけで蕁麻疹が出ることもあるので、日頃からしっかりと体を休めるようにしてください。
上記の対処を行っても症状を繰り返す場合は、皮膚科での相談をおすすめします。
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原因② 虫刺され(ダニ)
ダニに刺されると、全身に痒いブツブツができる場合があります。
わき腹や下腹部、ふとももの内側など、虫刺されはあらゆる場所に生じます。
ぶつぶつの特徴
かゆみが強い
赤く小さなぶつぶつ
虫刺され(ダニ)の原因
ダニが付着した家具、寝具の使用
屋外でのダニの接触
ダニは高温多湿の環境を好むため、カーペットやソファー、畳などに潜んでいます。
また、“マダニ”という屋外(庭や公園、野山等)にいるダニに刺されるケースもあります。
発症しやすい人
犬や猫を飼っている人は、発症しやすいといえます。
ペットに付着したダニが、室内に侵入するためです。
自分でできる対処法は?
部屋や寝具にこまめに掃除機をかけ、清潔な環境を保ってください。
部屋を換気したり、布団乾燥機を使用したりするのもよいでしょう。
また、ネズミに媒介するダニもいるので、ネズミ駆除が必要なケースもあります。
病院で相談がオススメ
“ぶつぶつ”をかいたことによって、症状が悪化するケースもあります。
お困りの場合は一度皮膚科を受診し、原因に合わせた治療を受けましょう。
特に「早急な受診が必要」なケース
腹痛や発熱
気分不良
気道閉塞感(喉がつまる感じ・息苦しい感じ)
などを伴うときは、アレルギーの可能性が高いため要注意です。
アレルギー症状に心当たりがある方は、早急に受診してください。
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▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 蕁麻疹
日本皮膚科学会ガイドライン 蕁麻疹診療ガイドライン 2018
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。