「爪の黒い線は“栄養不足”のサイン…?」
「これって大丈夫…?」
栄養不足によって爪が黒く変色する仕組みについて、お医者さんに聞いてみました。
黒い線がでたときのセルフケアの方法や、メラノーマ(がん)との見分け方などについても解説します。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
爪の黒い線は“栄養不足”サイン!
爪に黒い線が入る原因として、栄養不足が考えられます。
栄養不足になると、爪を形成している爪母(爪の付け根部分)への血流量が減少します。
その結果、一時的に「爪を形成する作用」が低下して、爪が黒く変色すると考えられています。
こんな爪の黒い線は「栄養不足」かも
- 線の幅は1ミリ~数ミリ程度のケースが多い
- 黒色の線の部分と色がない部分の境目がはっきりしている
他にもある“栄養不足”サイン
栄養不足のサインは、爪の黒い線だけではありません。
次の症状に当てはまる人は、食生活に偏りがないか注意する必要があります。
▼爪に現れる“栄養不足”サイン
- 爪の横方向に筋が入る
- 爪に白っぽい色の縦筋が入る
- 爪に深い溝が生じる
- 爪にひび割れが生じる
- 爪の先端が割れる
▼体に現れる“栄養不足”サイン
- 皮膚の乾燥・炎症
- 倦怠感
- 下肢のむくみ
- 尿量減少(尿の色が濃くなる)
- 便秘・下痢
- 体重減少
- 抜け毛
- 感染症にかかりやすい
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2021-07-05
「爪に横線が入っている」
「でこぼこしていて、色もおかしいけど大丈夫?」
考えられる病気や、何科に受診すべきかをお医者さんに聞きました。
病院での治療方法に加え、ご自身でできるケア方法も説明します。
爪の状態で病気がわかるって本当?
爪に体の不調のサインがあらわるのは本当です。
皮膚が角化したものが爪です。ケラチンと呼ばれるたんぱく質でできています。
体に不調があると、爪の栄養状態が悪くなるので、爪の発育に影響が出ます。
こんな爪は病気のサインかも
爪に現れる病気のサインとして
横溝ができる
色がおかしい
でこぼこ・スプーン状に変形している
といった異変があらわれることがあります。
その① 爪に横溝ができる
糖尿病や亜鉛欠乏によって、爪に横溝ができることがあります。爪の横溝は爪甲横溝(そうこうおうこう)と呼ばれ、病気以外に物理的な力で爪が障害された時にも起こります。
爪を作る毛母細胞に、一定期間必要な栄養が送られていないと、爪に横溝ができます。
病気の可能性が低いケース
横溝が一本の指程度しかない場合は、病気の可能性は低いと思われます。
爪をかんだり、ぶつけたりすることによって横溝ができることもあるからです。
病気の可能性が高いケース
複数の指や全部の指に横溝ができていたら、糖尿病や亜鉛欠乏など病気の影響が考えられます。
他にも、こんな症状が出ていたら要注意
食欲がなくなる
胃が痛む
胸が痛む
お腹が張る
胃がもたれる
喉に違和感がある
熱が出る
その② 爪の色がおかしい
肝臓病・貧血・緑膿菌の感染などによって、爪の変色を起こす事があります。
末端の爪まで栄養が行き渡りにくくなり、爪が栄養不足となって変色を起こします。
◆爪が黄色っぽく変色している
肝臓・胆管の病気が考えられます。
胆汁が血流に乗って染み出しているため、爪が黄色っぽくなります。
◆爪が緑色に変色している
緑膿菌の感染している可能性があります。
◆爪が白く変色している
爪水虫(爪白癬)や肝硬変を発症している可能性があります。
病気の可能性が低いケース
赤黒い色は内出血の可能性が高いです。
どこかに爪を打った、挟んだという後は、内出血を起こしその部分が変色を起こします。
病気の可能性が高いケース
複数の爪に同じような症状があるときは、病気を疑います。
※爪白癬や緑膿菌は1本の指のみ発症することもありますが、そういう場合は色を見て判断します。
他にも、こんな症状が出ていたら要注意
足の裏に感覚異常
手足が冷える
感染症にかかりやすい
ケガや傷の治りが遅い
体がだるい
食欲がなくなる
吐き気がする
むくむ
皮膚や目が黄色くなる
お腹が張る
めまいが起こる
頭痛がする
その③ 爪がでこぼこ・スプーン状に変形している
鉄欠乏貧血になると、爪が変形することがあります。
貧血になると、爪を作る力が変化し、変形や変色を起こします。
病気の可能性が低いケース
重い荷物が爪に乗ったり、慢性的に力が加わったりして、変形した場合は病気が影響していることは少ないと考えられます。
病気の可能性が高いケース
爪がデコボコしている・反っている・白っぽくなっているという場合は、貧血が原因で、異常が起きている可能性が高いです。
他にも、
めまいがする
頭が痛い
眠れない
爪が割れる
という症状が出ていたら要注意です。
不安な爪の異変は早めに病院で相談を
爪の異常を見つけたら、体調や習慣を振り返り、早めに内科・皮膚科など医療機関へ行きましょう。病気が原因の場合、早期発見できれば進行を食い止め、早めの段階で治療することも可能です。
爪だけで、病気だと決めることはできませんが、今までの爪と明らかに違い、もろい・割れる・色が変わったという場合は、爪に栄養が行き渡っておらず、何かが起きている可能性があります。
お医者さんには、どう伝えればいい?
爪の変化はいつからあらわれたか
爪にどのような変化があらわれたか
爪以外に不調はあるか(頭痛・疲労感など)
などをひとつずつ明確に伝えましょう。
病院は何科?
爪の異常は、内科・皮膚科を受診するとよいでしょう。
※症状によっては、適切な診療科を紹介されることもあります。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本臨床検査医学会 貧血
黒い線がでたときの「セルフケア」
栄養不足によって爪に黒い線ができたときは、
- ビタミンB群を摂取する
- タンパク質を摂取する
- 鉄分を摂取する
- ストレスを発散する
- 良質な睡眠をとる
などのセルフケアを実践しましょう。
その1. ビタミンB群を摂取する
ビタミンB群が多い
|
レバー/豚肉/ウナギ/サンマ/マグロ/イワシ/カツオ/貝類/緑黄色野菜/ナッツ類/バナナ/牛乳等
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ビタミンB群を多く含む食品の摂取により、細胞の新陳代謝が促進され、爪の強化につながると考えられています。
その2. タンパク質を摂取する
タンパク質が多い
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肉類/魚類/大豆製品/乳製品/卵等
|
タンパク質は爪を形成する原料(ケラチン)になるため、しっかり摂ることで爪の健康状態の改善につながると考えられます。
その3. 鉄分を摂取する
鉄分が多い
|
レバー/煮干し/パセリ/納豆/ひじき/しじみ/小松菜等
|
鉄分は全身の細胞エネルギーの産生に必須の栄養成分です。
しっかり鉄分を摂ることで、爪の先まで酸素が届けられるようになり、爪の健康状態の改善につながると考えられます。
サプリメントを飲むのもおすすめ!
バランスのよい食事をなかなか摂れないときは、サプリメントの補助的に使用するのもよいでしょう。
食事からのみでは摂取しきれない栄養分を補うことができるため、爪の健康状態の改善に有効と考えられます。
その4. ストレスを発散する
運動、音楽、入浴等、自分なりのストレス発散法を見つけて実践してみましょう。
できるだけストレスを溜めないようにすると、爪の健康が維持されやすいです。
その5. 良質な睡眠をとる
良質な睡眠をとるために
- 就寝直前までパソコンやスマホを使用しない
- 部屋の照明を暗くする
- 就寝の1時間半前くらいに入浴して身体を温める
など心がけましょう。
良質な睡眠を十分とって溜まった疲れを解消させると、爪の状態がよくなりやすいです。
一方睡眠不足や疲労過多だと、爪の健康状態にも悪影響を及ぼす場合があります。
メラノーマ(皮膚がん)との見分け方
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爪の黒い線の特徴
|
栄養不足による黒い線
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- 爪の黒い線の色が淡い黒色
- 輪郭がぼんやりしているように見える
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メラノーマ(皮膚がん)
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- 黒い線の色が濃く、線もくっきりしている
- 黒い線の幅が6ミリ以上ある
- 「爪先端」と「爪根元」の黒い線の色が異なる
- 爪のみではなく「爪根元」や「指先端の皮膚」も黒い
- 爪の変形を伴う
|
「メラノーマ」という皮膚がんによって、爪の黒い線が生じるケースも稀にあります。
ご自身で見分けるのは難しいため、心配な症状があるときは早めに皮膚科で相談しましょう。
メラノーマを放置すると、がん細胞が他の部位に広がっていき、命に関わることもあります。
皮膚科を探す
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2022-05-24
「皮膚の中に黒い点ができた…」
「これは何?」
皮膚の中にできた黒い点の正体を、お医者さんに聞きました。
皮膚ガンを発症しているケースも稀にあるため、注意が必要です。
心当たりのある症状がないか確認してみましょう。
「皮膚の中にできた黒い点」のよくある原因
皮膚の中にできた黒い点は、
コメド(黒ニキビ)
粉瘤
のいずれかである可能性が高いです。
「コメド」は、皮脂の分泌・ターンオーバーの乱れが原因で発生する“ニキビのはじまり”の段階です。
コメドが炎症を起こすと、赤ニキビ・黄ニキビになります。
一方「粉瘤」は良性腫瘍であり、皮膚の下に形成された袋状の組織に、垢・皮脂といった老廃物が詰まっています。
粉瘤ができる原因は今のところはっきりとわかっていませんが、体質が関係しているといわれています。
いずれも初期段階では痛みを感じないのが特徴です。
原因
どんな状態か
症状の特徴
コメド
(黒ニキビ)
毛穴に汚れが詰まっている状態。
表面がざらざらしている
押すと「芯」のような角質が出てくる
粉瘤
垢・皮脂が入った「袋状のしこり」が形成されている状態。
しこりのようなできもの
中心部に黒い点がある
強く押すと、臭いどろどろした物質が出てくる
顔・耳のうしろ・首・背中に発生しやすい
「コメド」は潰さないことが大切!
コメドを潰したり、触ったりすると炎症を起こして赤ニキビになりやすいです。
コメドができたときは、
肌を優しく洗う
保湿をする
といった対処にとどめ、自然治癒を待ちましょう。
また、栄養バランスの良い食事・十分な睡眠を心がけるとコメドの再発を防ぎやすくなります。
「コメドの数が多い」「コメドが増えていて気になる」といった場合は、皮膚科で相談してみましょう。
粉瘤の除去は「皮膚科」で相談を
粉瘤は良性腫瘍なので、気にならないのであれば治療は必要ありません。
ただし、自然に消えないため、取り除きたい人は皮膚科で治療を受ける必要があります。
また、放っておくとどんどん大きくなるケースもあります。
できるだけ手術の傷跡を目立たせたくない人は、粉瘤が小さいうちに切除することをおすすめします。
粉瘤の手術の手順
局所麻酔をする
メスを使って、皮膚の表面ごと粉瘤を切り取る
※重症の場合には、患部を切開して膿を出します。
麻酔を導入するため、痛みは少なく身体への負担も少ない手術です。
手術をしてから7~10日後に、傷口の状態の確認や抜糸をします。
皮膚科を探す
皮膚ガン(メラノーマ)が疑われるケースも…
「皮膚ガン」の特徴
直径が5mm以上
色むらがある(にじみ)
形がいびつで、輪郭がギザギザしている
左右非対称
潰瘍をともなう
徐々に大きくなる
「皮膚の中の黒い点」が上記症状に当てはまる場合、皮膚ガンも疑われます。
皮膚ガンは、皮膚のメラニン(色素を作る色素細胞)がガン化することで発症します。
他のガンと同様に、進行すると他の組織に転移して命を落とすリスクがあります。
皮膚ガンは体のどの部分にできやすい?
足の裏
手のひら
手足の爪部
胸
腹
背中
顔
など、皮膚ガンが発生する場所はさまざまです。
皮膚ガンに「なりやすい人」
皮膚ガンは、
肌の色が白い人
紫外線をよく浴びる人
高齢者
皮膚ガンを発症した家族がいる人
などに発症しやすい傾向があります。
病院で受ける治療法は?
手術・薬物療法・放射線治療があり、ガンの進行度によって治療法は異なります。
▼手術
ガンが発生している部分のふちから約1~2cm離して広範囲に切りとります。
▼薬物療法
飲み薬のほかに、注射や点滴で体内に薬を取り込みます。
▼放射線治療
高エネルギーのX線や電子線をガン細胞にあてて、ガンを小さくします。
皮膚科を探す
こんな症状は皮膚科で相談を
皮膚の中の黒い点が
直径が5mm以上
徐々に大きくなってきている
形がいびつに見える
といった場合は、一度皮膚科で相談してみましょう。
上記の症状には皮膚ガンが疑われるため、念のため検査を受けることをおすすめします。
また、「黒い点の周囲がしこりのように盛り上がっている」という場合は、粉瘤が考えられます。
粉瘤は治療を受けないと取り除けないため、しこりが気になるときにも皮膚科で相談すると良いでしょう。
皮膚科を探す
▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 アテローム(粉瘤)
MSD マニュアル家庭版 黒色腫
国立がん研究センター がん情報サービス 悪性黒色腫(皮膚)