「太り過ぎかもしれない…」
「肥満が原因の病気ってどんな病気?」
太り過ぎが原因の病気について、お医者さんに聞きました。
病気になる理由や肥満がもたらす体調不良についても解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
太りすぎで“体調不良”になるしくみ
脂肪がたまっていると、血糖値や血圧値、中性脂肪などが高くなり、血流が悪化します。
その結果、慢性的な疲労感など体調不良に陥ることがあります。
肥満になれば、体が重くて動きにくくなるため、さらに脂肪がたまりやすい状況になります。
早めに肥満を改善しなければ、どんどんと健康から遠ざかり、健康とはかけ離れた「悪循環の体質」になってしまうのです。
”太りすぎ”の目安
日本肥満学会では、肥満(太り過ぎ)はBMI25以上をいいます。
- BMI25以上30未満が肥満度Ⅰ
- BMI30以上35未満が肥満度Ⅱ
- BMI35以上40未満が肥満度Ⅲ
- BMI40以上が肥満度Ⅳ
とされています。
ただ、BMI25以上でも病気ではありません。
BMIはあくまでも簡易に肥満をみるための指標で、身長が高いほど体重が重くなるという理論で計算されます。
筋肉質の方は、体重が重くなりやすいので、太っていないのにBMIが高くでてしまうことがあります。
肥満によって健康障害が出ている場合は「肥満症」という病気になります。
太りすぎるとでる症状
※足腰の痛みは、体重が重いために起こる症状です。
特に注意「太り過ぎ」が原因になる3つの病気
肥満の状態が続くと、
- 2型糖尿病
- 心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中
- 痛風
といった病気を招くリスクがあります。
それぞれの病気を詳しくご紹介します。
病気① 2型糖尿病
インスリンの分泌が悪くなることで、高血糖状態が続いてしまう病気です。
血管にダメージを与えるため、次第に全身の健康が損なわれていきます。
すい臓から出る「インスリン」というホルモンには、血糖値を下げる働きがあるため、不足すると血液内の糖分が多くなってしまいます。
食べ過ぎ・肥満・運動不足など、生活習慣の乱れが原因で、発病した場合は「2型糖尿病」と診断されます。
特に肥満になると発症する糖尿病を「肥満糖尿病」といいます。
「肥満糖尿病」である場合、今までの食生活を見直さないと、症状は悪化します。
ただし、体重を落とすように努力をし、実際に体重を落とせれば、改善する場合もあります。
糖尿病が悪化すると…
糖尿病は、
- 失明(糖尿病網膜症)
- 腎不全(糖尿病性腎症)
- 指先からの壊死
を招く恐れがあります。
指先が壊死すると、手足切断するケースもあります。
これらの重大な合併症を避けるためにも、血糖値のコントロール(管理)が必要になります。
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病気② 心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中
血栓が脳や心臓に詰まると、心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中を引き起こすリスクがあります。
これらの病気は命に危険が及ぶので、注意が必要です。
血栓は、揚げものなど「脂っこいもの」を食べ過ぎて肥満体質になった人に生じやすいです。
この場合、血液がどろどろ状態になっていると考えられます(脂質異常症)。
また、血管内にプラーク(※)が形成されると、血液が通りづらくなり、血管は柔軟性を失ってもろくなります。
状態によっては、もろくなった血管が切れてしまい、体内で大出血を起こすこともあります。
※プラーク:血液内の余分なコレステロールなどで形成される、血管内の異常な細胞
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病気③ 痛風
結晶化した尿酸によって関節炎が起こり、足の親指などに激痛が走る病気です。
激しい痛みで、一時的に歩行が困難になることもあります。
「尿酸値が高いですね」
人間ドックを受けたときなどに、そんなことを言われた経験はありませんか?
尿酸は、プリン体が分解されたときにできる老廃物で、尿や便と一緒に排せつされます。
尿酸の値が基準値より高いと、「高尿酸血症」という状態になります。
高尿酸血症になると尿酸が結晶化し、それが関節に沈着(付着)すると、激痛を伴う関節炎を引き起こします。
痛風は、おいしいものばかり食べて太り、それが原因で発症するので、「ぜいたく病」とも呼ばれています。
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無理のないダイエットから始めよう
太りすぎ・肥満が気になる人は、ダイエットが必要です。
無理のないダイエットから始めてみてください。
減量方法① 食事制限
食事制限と言っても、極端に食事量を減らせばいいというわけではありません。
急に肉類を絶つのも禁物です。
肉類を摂取しないと、筋肉を作るたんぱく質が不足し、善玉コレステロールなどの必要な栄養素が足りなくなり、体調を崩す要因にもなりかねません。
主食・主菜・副菜をきちんとそろえ、栄養バランスの整った食事を摂りましょう。
減量方法② 運動
無理のない運動で体を動かし、エネルギーを消費しましょう。
例えば、駅などではエスカレーターに乗らず、階段を歩くようにする、一駅分を歩いてみる、などの取り組みです。
食事制限も、運動も、「これならできそう」と思えるところから始めてみましょう。
肥満を解消し、病気を予防するには、まずは体質改善からです。
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2022-02-25
「肥満が気になる…治療を受けようかな…」
「肥満治療は保険適用になる?」
肥満治療の保険適用について、お医者さんに聞いてみました。
肥満治療の保険適用になる条件や費用の目安なども解説します。
肥満治療の「保険適用の条件」
基本的に “BMI値が35以上の人”は、肥満治療が保険適用になります。
また、他にも
6ヶ月以上内科的治療を行っても肥満の症状改善が乏しい
「肥満症」と診断された
「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」「睡眠時無呼吸症候群」の中から一つでも合併している
などの条件に当てはまる人も、保険適用になる可能性が高いです。
ただし「保険適用される条件」は、各医療機関により異なる場合があるため受診前に確認するようにしてください。
▼BMI値の算出方法
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
(BMI値35以上になる人の例)
身長170cmの人…105㎏(BMI値:36.33)
肥満治療って「実際に何をするの?」
肥満治療は、
栄養管理・食事療法・運動指導
薬の内服
注射
減量・代謝改善手術
などが行われるケースが多いです。
治療は、基本的には医師の判断のもと行なわれます。
ただし、ご自身の希望を伝えることで加味されることもあります。担当する医師とよく相談するとよいでしょう。
「どんな治療を受けるか」によって保険適用の条件は異なる
治療の種類
保険適用の条件
サノレックス(食欲抑制剤)
BMI35以上(高度肥満症)
GLP-1注射
「2型糖尿病(※)」を持っている
(肥満は適応外)
漢方薬(防風通聖散、防已黄耆湯等)
肥満症
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術
BMI35以上
6ヶ月以上の内科的治療で症状が改善しない
糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群の中から一つでも合併している
※2型糖尿病…遺伝要因に加えて、生活習慣(運動不足や食べ過ぎ 等)の影響が加わって発症する。糖尿病の約95%以上が2型。
治療費用はいくらくらい?
一般的な目安としては、検査費用込みで2,000円~1万円程度必要になるケースが多いです。
ただし、各医療機関により異なるため、受診前に確認しておくとよいでしょう。
「保険適用」のケースの治療費
2,000円~7,000円程度
「保険適用外」のケースの治療費
治療費 診察費…1回5,000円程度
薬剤費(30日分)…2万~5万円程度
肥満治療の種類別「費用目安」
治療の種類
費用の目安
リベルサス内服薬
300円/30mg1錠
ジャディアンス(内服薬)
300円/1錠
サノレックス(内服薬)
400~770円/1錠
GLP-1注射(自己注射/内服もあり)
5,5000円/30日分
トルリシティー(自己注射)
8,500円/1本
脂肪燃焼注射
2,750円/1回
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術
70万円以上(保険適用外の場合)
※肥満治療の種類と費用は各医療機関によって異なるため、受診前に確認するようにしてください。
一般的な初診の流れ
初診の流れ(一例)
問診・カウンセリング(体重測定等)
診察
血液検査(※)
尿検査
内臓脂肪の検査
治療法の提示
※コレステロール値・中性脂肪量を明確にして、内臓や体の代謝状態等を確認します。
初診でよく聞かれること
初診の際には、
日々の食生活や生活習慣について
肥満に伴う病気を発症しているか
今までの経緯について
既往歴について
などを伝えると診察がスムーズに進むと考えられます。
肥満治療を検討している方は「内科」で受診しましょう。
内科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
東京都立多摩総合医療センター 外科(消化器・一般)
小牧市民病院 肥満症治療チーム
順天堂医院 肥満外来
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2022-02-17
「ランニングしているのにお腹が痩せない…」
「走り方がいけない?」
走ってもお腹が痩せない理由を、栄養士さんに聞いてみました。
ランニングフォームなど、お腹のお肉を落としやすくする走り方も解説します。
ランニングで「お腹が痩せない」5つの理由
走るペースが速すぎる
ランニング時間が短い
ランニングを始めたばかりである
摂取エネルギー量の方が多い
ランニング時の姿勢が正しくない
理由1. 走るペースが速すぎる
速すぎるランニングは、脂肪が燃焼されにくくなります。
脂肪燃焼には、楽〜ややきつい程度のスピードがおすすめです。
目安としては、最大心拍数の40〜60%の強度です。
それよりも速く走ってしまうと、脂肪より糖質がエネルギー源として使われる可能性が高くなり、脂肪燃焼の効果が期待できなくなります。
「最大心拍数」の算出方法・心拍数の計り方
最大心拍数は、「220-年齢」で算出することができます。
心拍数は、心拍数と脈拍数はほとんど同じで、以下の方法で測ることができます。
利き手の人差し指・中指・薬指の3本の指で、利き手でない側の手首の内側にある動脈(親指側で拍動が触れるところ)を10 秒間計る
その数値を6 倍する(1分間の脈拍数となる)
理由2. ランニング時間が短い
ランニング時間が短すぎると脂肪燃焼効果はあまり期待できません。
少なくとも20分間以上行うようにしましょう。
ランニングは、開始~10分は「糖質」を燃焼します。
10分継続後から徐々に「脂肪」が燃焼され、効果的に脂肪燃焼が行われるのは20分後といわれています。
理由3. ランニングを始めたばかりである
ランニングは即効性のあるダイエット方法ではありません。
コツコツ続けることが大切になります。
日々の食生活や運動不足などで蓄積した脂肪は、簡単には落とせません。
始めたばかりでは、エネルギー消費量も少なく実感するのは難しいです。
まずは1ヶ月続けてみよう
体重1kg落とすには、7200kcal消費する必要があります。
つまり、今よりも1日に240klcal多く消費できれば、30日で1kg痩せることができます
消費エネルギーをさらに増やせば、より早くお腹の変化を実感できるでしょう。
理由4. 摂取エネルギー量の方が多い
運動で消費するエネルギー量は、想像しているよりも少ないです。
ランニングを言い訳に食べ過ぎていないか注意しましょう。
食べる量が多ければ、ランニングをしてもお腹周りの脂肪は落とせません。
例えば、50kgの人が30分ランニング(6.4km/時)をした場合の消費エネルギー量は150kcalで、ごはんお茶碗一杯分よりも少ないエネルギー量です。
「睡眠時間を削って走る」のは逆効果!
睡眠時間が短いと、食欲が沸くホルモンが多く分泌され、過食の原因になります。
ランニングで減量を試みる場合は、しっかりと睡眠時間を確保しましょう。
理由5. ランニング時の姿勢が正しくない
姿勢が正しくないと、
脂肪の燃焼が効率的に行われない
疲れやすく長時間走れない
などの原因で、痩せにくくなります
また、膝や腰に過剰な負担がかかり、痛めてしまうリスクもあるので注意が必要です。
パーソナルトレーナーに「正しい走り方」を教えてもらうなどもおすすめです。
ランニングを「毎日すると痩せにくくなるって本当?」
マラソンランナーのように強度の高いランニングを毎日行なっていると、筋肉が落ちて基礎代謝が下がり痩せにくくなることがあります。
また、体が十分に回復しないまま走ることでフォームが崩れ、効率よく脂肪燃焼が行われなくなる可能性もあります。
ランニングは毎日行っても構いませんが、負荷をかけすぎないように注意しましょう。
“お腹痩せ”したい人のランニングの4大原則
お腹痩せしたい人は、
姿勢
足の上げ方・踏み出し方
腕の振り方
力み過ぎないようにする
の4点を意識してランニングしましょう。
チェックポイント① 姿勢
猫背にならないように背筋を伸ばす
肩の力は抜く
重心を高い位置に置く
お腹は少し引っ込める
軽く前傾姿勢になるようにする
目線はしっかりと正面を向き、下げない
正しい姿勢で走ることで、効率よく筋肉を使って脂肪を燃焼しやすくします。
また、体への負担も軽減できます。
チェックポイント② 足の上げ方・踏み出し方
自然と上がる程度で、無理に上げる必要はない
力を抜いて軽く踏み出す
骨盤を前に倒す姿勢で走り出す
骨盤を前傾させると、足が自然に前に出るようなイメージで走ることができ、膝への負担も少なく走りやすくなります。
チェックポイント③ 腕の振り方
ひじを引き上げるようなイメージで振る
腕の力を抜いて小刻みに振る
腕と足は連動しているため、腕の振り方がよいと走りやすくなります。
チェックポイント④ 力み過ぎないようにする
力みすぎるとすぐに疲れてしまいます。
周りの景色を見たり、音楽を聴いて、走っている間リラックスができるようにしてみてください。
正しい姿勢で走るのは大切なことですが、意識しすぎず、なるべく自然な状態を保ちましょう。
ランニングの効果がでるまで…どれくらいかかる?
脂肪は内臓脂肪から燃焼されるため、内臓型肥満の方は比較的早い段階で変化を実感できるでしょう。
ただし、生活習慣、食事内容、走る時間や速さなど、人によって条件が異なるため個人差が大きいです。
1〜2日で実感できるものではないため、焦らずに継続してみましょう。
もっと効率的に!プランク+ランニング+ストレッチがおすすめ
ランニング前…プランク
ランニング後…ストレッチ
を行い、ランニングをより効率的にしましょう。
ランニング前にプランクしよう
プランクは、以下の手順で行いましょう。
伏せをして、肘を90℃に曲げて地面につく
足を伸ばし、つま先を立てる
お尻を上げてその状態を1分キープする
プランクは、腹筋が鍛えられるだけなく、正しい姿勢でランニングを行うのに必要な体幹を鍛えることもできます。
また、走る前に行うことで体が温まり、脂肪燃焼の準備が整います。
プランクが大変な場合には、代わりに腹筋20回を行っても構いません。
ランニング後にストレッチをしよう
以下の手順で行いましょう。
※1か所につき20秒は伸ばすようにしましょう。
① 二の腕のストレッチ
肘を頭の横で抱えるようにして、二の腕を伸ばす。
② 背中のストレッチ
背中の後ろで手を組み、手のひらを後ろに向けて伸ばす。
③ お腹のストレッチ
うつ伏せになり、肘を床について天井をみるように反る。
④ 足のストレッチ
床に座り、片足は伸ばし、片足は曲げた状態で上半身を前倒す。
(足を変えて反対も伸ばしましょう)
⑤ アキレス腱ストレッチ
足を前後に開き、前に体重をかける。足を変えて反対も伸ばす。
直接腹筋に関わるわけではありませんが、ランニング後のストレッチは、疲労回復や筋肉痛の軽減につながります。
体のコンディションが良くなると、翌日以降のランニングも正しいフォームで行えるようになり、脂肪燃焼が促進されやすくなります。ぜひ、取り組んでみてください。
▼参考
厚生労働省 肥満症・メタボリックシンドローム の人を対象にした運動プログラム
厚生労働省 運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書
公益財団法人長寿科学振興財団 心拍数と運動強度