腎盂炎になりやすい人は?
腎盂炎になる前触れってある?
腎盂炎になりやすい人をお医者さんに聞いてみました。
腎盂炎になると出る症状や病院に行く目安も紹介します。
監修者
経歴
福岡大学病院
西田厚徳病院
平成10年 埼玉医科大学 卒業
平成10年 福岡大学病院 臨床研修
平成12年 福岡大学病院 呼吸器科入局
平成24年 荒牧内科開業
腎盂炎になりやすい人は?
- 女性(20~30歳代)
- ストレス・疲労過多
- 水分摂取量が不足している
- 加齢に伴い筋力が低下している
- 免疫力が低下している
- 膀胱炎を放置している
- 尿路結石や前立腺肥大症にかかっている
- 神経因性膀胱や膀胱尿管逆流症を発症している
上記のような人は腎盂炎になりやすい傾向があります。
特に女性は、男性よりも尿道が短く、膣や肛門が外尿道口に近いため、腎盂炎を発症しやすいと考えられています。
要注意!腎盂炎を発症しやすい行動
- 排尿を我慢することが多い
- 排尿・排便後に後ろから前に拭いている
- 性交後、陰部を清潔にしていない
といった行動に当てはまる場合、腎盂炎を発症しやすいです。
上記の行動をしていると、細菌が尿道から腎盂へさかのぼって侵入しやすいため、発症しやすくなります。
腎盂炎の症状チェック
- 38度以上の高熱(特に午後から夕方)
- 背中や腰に響くような激痛が起きる
- 吐き気・嘔吐
- 悪寒戦慄
- 全身倦怠感
- 排尿痛
- 尿の濁り
腎盂炎にかかると、上記のような症状がでます。
腎盂炎に「前触れ」はある?
腎盂炎は上記のような、「膀胱炎と似た症状」が前触れとして出る場合があります。
腎盂炎かも…病院へ行くべき?
腎盂炎が疑われる場合には、早急に病院へ行くようにしてください。
放置していると、菌血症や敗血症※を発症し、非常に重篤な状態になるリスクが高まります。
※敗血症とは、細菌などの病原体が血管やリンパ管の中に入り、組織や臓器などに障害を引き起こす病気です。
血圧の急激な低下や、多臓器不全等を起こすなど、命に関わる恐れもあります。
病院は何科?
泌尿器科で診察をしてもらうようにしましょう。
腎盂炎の治療法
腎盂炎が軽~中度の場合、病院では抗生物質の内服または点滴によって治療することが多いです。
ただし、高熱が続く等、症状が重度の場合は入院が必要になる場合があります。
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腎盂炎と腎盂腎炎ってどんな違いがあるの?
発症の原因は?
腎盂炎と腎盂腎炎の違いについて、お医者さんに聞いてみました。
腎盂腎炎の発症原因や治療期間の目安、予防法も解説します。
腎盂炎と腎盂腎炎の違い
「腎盂炎(じんうえん)」とは、腎臓の中の腎盂(※)に炎症が起きる病気です。
「腎盂腎炎(じんうじんえん)」は、腎盂内で繁殖した細菌により、腎臓にまで炎症が広がっている状態のことを指します。
※腎盂:腎臓と尿管を接続する部分。
尿道の出口から細菌が入り、尿路をさかのぼって腎盂に侵入すると、腎盂炎を発症します。
腎盂炎を起こすと腎臓全体に感染が広がることが多いため、結果的に腎盂腎炎を発症します。
腎盂腎炎の主な症状
背中や腰が痛む
発熱
排尿時に痛む
残尿感がある
尿が濁る
全身がだるい
吐き気・嘔吐
※自覚できる症状がないケースもあります。
腎炎や膀胱炎との違いは?
「腎炎」とは、腎盂腎炎などの腎臓の内部で起こる炎症の総称です。
「膀胱炎」は、腎臓ではなく膀胱に生じた感染症のことです。
膀胱炎になると、頻尿・排尿痛・尿が濁る・残尿感・膀胱の不快感などの症状がみられます。
ストレスや疲労がたまっている人、トイレを我慢しがちな人、女性が発症しやすい傾向があります。
腎盂腎炎が女性に多い原因
肛門(大腸菌などが発生する)と尿道の距離が近い
尿道が短い
生理や性交で陰部が不衛生になることがある
妊娠すると尿の流れが悪くなる(子宮が大きくなり尿管が圧迫されるため)
体の構造上、女性は大腸菌などの細菌が尿道やその奥まで侵入しやすいため、膀胱炎・腎盂腎炎等の発症リスクが高いと考えられます。
女性で腎盂腎炎を発症しやすい人の特徴は?
膀胱炎を放置している
疲労やストレスがたまっている
陰部が清潔に保たれていない
上記に当てはまる女性は、腎盂腎炎を発症しやすい傾向があります。
腎盂炎・腎盂腎炎は早めに病院へ
腎盂炎や腎盂腎炎の疑いがある場合、治療を受けないと重症化する恐れがあるため、必ず病院へ行くようにしてください。
放置していると、再発を繰り返して腎機能が低下し、慢性腎不全を発症したり、腎移植や透析を受けたりする必要が出てきます。
また、敗血症(※)を起こした場合は、命を落とす恐れもあります。
※敗血症:細菌などが血管やリンパ管の中に入り、組織や臓器など全身に障害を引き起こす病気。
何科に行けばいい?
「泌尿器科」や「腎臓内科」で診察をしてもらうようにしましょう。
なお、妊娠している可能性があり、かかりつけの産婦人科以外の医療機関を受診する場合は、医師にその旨を伝えてください。
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どれくらいで治るの?
病気の重症度によって症状がおさまるまでの期間が異なります。
※重症度を自分で判断することは難しいため、早めに医師に診てもらうことが大切です。
重症度
改善するまでの目安の期間
軽症
4~7日程度
重症
2~3週間程度
「軽症」の場合、抗菌薬を用いた治療により、4~7日程度で症状がおさまることが多いです。
ただし、治療は1~2週間ほど続けます。
「重症」の場合は、症状が改善するまで2~3週間程度は必要です。状況によりさらに長引く可能性があります。
7〜14日間程度入院し、点滴治療を行います。
繰り返さないために!予防のススメ
陰部を清潔に保つ
しっかりと水分をとり、こまめにトイレに行く
腎盂炎・腎盂腎炎を発症・悪化させないために、普段から上記のことを意識しましょう。
予防法① 陰部を清潔に保つ
陰部を清潔に保つために、
1日の終わりに必ず入浴する・シャワーを浴びる
生理用ナプキン・おりものシートをこまめに交換する
排便後は前から後ろに向かって、しっかりとふき取る
といったことを心がけましょう。
上記の習慣により、膀胱への細菌の侵入を防ぐことができるため、腎盂炎・腎盂腎炎の予防につながります。
予防法② しっかりと水分をとり、こまめにトイレに行く
1日1.2リットル以上は水を飲み、食後や休憩時などに、こまめにトイレに行くようにしてください。
しっかりと水分補給をすることで尿が生成され、尿道に付着する菌を流すことができます。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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▼参考
一般社団法人 日本感染症学会 27 腎盂腎炎(Pyelonephritis)
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―
MSD Manual家庭版 腎臓の感染症
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繰り返し発症する腎盂腎炎。
「背中や腰がズキズキ痛む…」
「風邪のような吐き気や寒気も…」
再発する腎盂腎炎の原因と対処法をお医者さんに聞きました。
重い病気に繋がる可能性もあるので、放置はNGです。
なぜ?腎盂腎炎を「繰り返す」2つの原因
腎盂腎炎を繰り返すよくある原因として、
自己判断で薬を中断して再発した
別の病気を発症している
の2つのケースがあります。
「症状がなくなったから」といって、薬を飲みきらずいると、細菌が体の中に残っているため、腎盂腎炎を繰り返します。
また、「尿路結石」や「膀胱尿管逆流症」といった泌尿器科系の病気を発症して、腎盂腎炎を繰り返しているケースがあります。
繰り返す腎盂腎炎…どう対処する?
腎盂腎炎を再発したら、すぐに泌尿器科または内科を受診しましょう。
腎盂腎炎を放置すると、腎不全になり人工透析が必要になったり、全身に障害がでる病気(敗血症)になってしまったりすることもあります。
また、医師の指示通り、再発防止のために処方薬は必ず飲み切ってください。
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腎盂腎炎を繰り返す「病気」
腎盂腎炎を繰り返すのは
尿路結石
膀胱尿管逆流症
という病気の可能性があります
原因① 尿路結石
尿路結石は、尿の通り道に結石(シュウ酸カルシウム結石など)ができる病気です。
尿路に結石など異物があると、細菌が増殖し、腎盂腎炎を繰り返しやすくなります。
どう対処すればいい?
水分を摂る
カルシウムを摂る
食事以外に1日に1~2リットルの水分をとることを意識してください。
特に、入浴後や運動後は、意識して水分をとりましょう。
カルシウムは腸の中で結石の原因となるシュウ酸と結合すると便になります。
牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、小魚、大豆製品を意識して食べましょう。
原因② 膀胱尿管逆流症
腎臓に尿が逆流する病気です。
膀胱尿管逆流症は先天性の場合が多く、新生児や子どもに見られることがあります。
尿が逆流することで細菌が侵入しやすくなり、腎盂腎炎を繰り返します。
どう対処すればいい?
1日に1~2リットルの水分を摂ってください。
ただし、自己判断は危険なので、まずは泌尿器科など専門医での検査をおすすめします。
症状が軽い場合は経過観察し、重い場合は手術をします。
病院で検査を受けて再発を防止しよう
腎盂腎炎が慢性化すると腎不全になり、人工透析が必要になったり、細菌が血液に侵入し、敗血症(※)を起こしたりすることがあります。
命を落とすリスクがあるので、腎盂腎炎を繰り返す場合は速やかに病院へ行きましょう。
※敗血症…細菌をはじめとする種々の病原体が血管やリンパ管の中に入って組織や臓器など全身に障害を引き起こす病気
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▼参考
MSDマニュアルプロフェッショナル版:慢性腎盂腎炎
日本小児外科学会:膀胱尿管逆流症
徳島県医師会:腎盂腎炎
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。