閉経後に出血があるのに、検診で「異常なし」と言われた…。
このまま様子を見ても大丈夫?
閉経後に出血した場合に考えられる原因を、お医者さんに聞いてみました。
「子宮頚ガン」や「子宮体ガン」などの命に関わる病気が隠れている恐れもあります。
要注意な症状を解説するので、心当たりがないか確認してみましょう。
監修者
経歴
医療法人社団 石野医院
日本医科大学
日本医科大学付属病院
日本医科大付属第二病院
国立横須賀病院
東部地域病院
石野医院
閉経後に出血があるのに「異常なし」ホントに大丈夫?
閉経後に出血があるけど、病院の検診で「異常なし」と言われました…。これって、本当に大丈夫なのでしょうか?
閉経後に出血があった場合、大丈夫とは言い切れません。
何らかの異常や病気により、出血している可能性があります。
もし、異常なしと診断されても1年に1回程度は検診を受けましょう。
「子宮体ガン」などの命に関わる病気が隠れている恐れもあります。
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「ストレス」が影響している可能性は…?
ストレスのせいで出血が起こることもあると聞きました。最近、悩み事が多いので、もしかしたらストレスの影響かな?と思っているのですが…。
閉経後の場合、不正出血(生理以外の出血)がストレスの影響で起こることは少ないと考えられます。
ストレスや疲労の影響により、ホルモンバランスが乱れることで不正出血(機能性出血)が起こることもあります。しかし、このような機能性出血がご高齢で起こる方は少ないです。また、閉経後に起こることはまれです。
閉経後の場合は、何らかの病気によって起こる不正出血(器質性出血)であることが多いです。
閉経後の出血で「よくある原因」
閉経後に出血する場合、よくある原因として「萎縮性膣炎」が挙げられます。
萎縮性膣炎とは、膣の壁が乾いてただれる疾患です。
加齢に伴う女性ホルモンの減少によって、膣内の自浄作用が下がり、雑菌が繁殖することで起こります。
閉経後の女性に多いことが特徴です。
萎縮性膣炎の症状チェック
- 赤いサラサラの血液が出る
- 乾燥しやすくなる
- 茶色や黄色のオリモノが出る
- かゆみがある
- 痛みがある
- 熱を感じる
- 性交痛
萎縮性膣炎の対処法
萎縮性膣炎が疑われる場合は、「婦人科」で相談しましょう。
他の病気の可能性もあるので、病院で診察を受けることが大切です。
萎縮性膣炎だった場合、病院では薬剤を用いた治療が行われることが多いです。
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「子宮の病気」の可能性もあります
- 子宮頸管ポリープ(子宮の出口付近できる腫れ物)
- 子宮頸ガン(子宮の入り口周辺にできるガン)
- 子宮体ガン(子宮の奥にできるガン)
閉経後の出血がある場合、上記のような子宮の病気が隠れている恐れもあります。
病気① 子宮頸管ポリープ(子宮の出口付近にできる腫れ物)
「子宮頸管ポリープ」は、子宮の出口にポリープができた状態です。
9割以上が良性のポリープで、ガンではありません。
子宮頸管ポリープの症状チェック
- 不正出血
- 排便時に出血する
- 性交時に出血する
- 激しい運動をした際に出血する
- おりものに血が混ざる(茶褐色のおりもの)
上記に当てはまる場合、子宮頸管ポリープが疑われます。
ポリープは、組織が柔らかく充血しやすい(血液が集まりやすい)という特徴があります。
そのため、排便時のいきみや運動、性交の際に出血することがあります。
子宮頸管ポリープになりやすい人の特徴
上記に当てはまる人は、子宮頸管ポリープになりやすい傾向があります。
ただし、子宮頸管ポリープを発症する明確な原因はわかっていません。
子宮頸管ポリープかも…対処法は?
子宮頸管ポリープが疑われる場合は、「婦人科」で検査を受けましょう。
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病気② 子宮頸ガン(子宮の入り口周辺にできるガン)
「子宮頸ガン」は、子宮の入り口周辺にガンが発生している状態です。
多くの場合、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染して発症します。
子宮頸ガンの症状チェック
- 性交痛がある
- 性交時に出血する
- おりものに血や膿が混ざる
- 粘度の濃いおりものが出る
- 水のようなおりものが出る
- 下腹部痛・腰痛
- 尿や便に血液が混じる
上記の症状に心当たりがある場合、子宮頸ガンが疑われます。
子宮頸管ガンになりやすい人の特徴は?
子宮頸ガンは、一度でも性交経験がある人であれば、誰でも発症する可能性があります。
子宮頸ガンかも…対処法は?
子宮頸ガンが疑われる場合は、早急に「婦人科」で検査を受けましょう。
子宮頸ガンは、初期の段階で自覚症状がないことが多いため、定期的に婦人科検診を受けることも大切です。
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病気③ 子宮体ガン(子宮の奥にできるガン)
「子宮体ガン」は、子宮の奥にガンが発生している状態です。
卵巣から分泌されるエストロゲン(女性ホルモンの一種)の分泌異常によって、子宮内膜が厚くなり、その部分から出血が続くケースが多いと考えられます。
子宮体ガンの症状チェック
- 少量の出血が長く続く
- 頻繁に出血する
- おりものに血が混ざる
- 下腹部痛
- 排泄痛がある
- 性交痛がある
子宮体ガンになりやすい人の特徴は?
- 出産経験がない(または少ない)
- 月経不順
- 肥満傾向
- エストロゲン(卵胞ホルモン)のみのホルモン療法を受けている
- 乳ガンの既往歴がある
- 糖尿病を患っている
子宮体ガンかも…対処法は?
子宮体ガンが疑われる場合は、早急に「婦人科」で検査を受けましょう。
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閉経後に出血があったら、早めに「婦人科」へ
検診で「異常なし」だった場合でも、閉経後に出血があったら「婦人科」で相談しましょう。
出血の原因を自分で判断してしまうのは危険です。子宮の病気である場合は、命に関わる恐れもあります。
早期発見のためにも、早めに「婦人科」で診察を受けてください。
もし、病院で異常なしと診断されても、1年に1回程度は検診を受けましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2022-07-28
閉経しているのに、生理のような痛みが…。
これって大丈夫?
「閉経後の生理痛のような痛み」について、お医者さんに聞きました。
不正出血を伴う場合、子宮ガン・卵巣ガンといった命に関わる病気が隠れていることもあります。
病院を受診する目安も解説しますので、当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
閉経後の「生理痛のような痛み」大丈夫?
閉経後に「生理痛のような痛み」がある場合、以下のような症状であれば問題ないケースが多いです。
こんな痛みは「心配いらない」場合が多い
鈍痛(鈍く重い痛み)
チクチクした痛み
痛みが数分程度で、繰り返さない
上記の場合、「一時的に体が冷えた」、もしくは「疲労がたまっている」といった原因で、腹痛が生じていると考えられます。
この痛みを和らげたいときには、お腹を温める・体を休めるなどの対処をおすすめします。
出血を伴う場合は、“深刻な病気”の可能性も
以下の症状が見られる場合、「子宮・卵巣の病気」や「尿路感染症」など深刻な病気が疑われます。
特に注意したい症状
不正出血(生理以外の出血)
おりものの増加
排尿痛・血尿
痛みが繰り返す
痛みが強くなっている
「考えられる病気」に当てはまるものはないか、下の表でチェックしてみましょう。
病名(病気の概要)
症状の特徴
子宮留膿症
(子宮内に膿が溜まっている)
腹痛
不正出血(生理以外の出血)
黄色・薄茶色のおりものの増加
子宮体ガン
(子宮体部と呼ばれる部分のガン)
腹痛
不正出血(生理以外の出血)
おりものの増加
※初期は自覚症状がないことが多い
卵巣ガン
腹痛
お腹の張り
不正出血(生理以外の出血)
おりものの増加
頻尿・便秘
※初期は自覚症状がないことが多い
膀胱炎
(膀胱で細菌が繁殖して炎症を起こしている)
腹痛
排尿痛
頻尿・血尿
腎盂腎炎
(腎臓の尿を溜めておくところや、その周辺で細菌が繁殖して炎症を起こしている)
腹痛
背中・腰の痛み
排尿痛
頻尿・残尿感
尿がにごる
吐き気・嘔吐
発熱
上記の病気を放置していると、「病気が進行して治療に時間がかかる」、「入院・手術が必要になる」といったリスクにつながります。
最悪の場合、命に関わるケースもあるので、早めに病院で診てもらいましょう。
▼「腹痛以外に症状がない」方は…
内科を探す
▼「不正出血・おりものの増加」といった症状を伴う方は…
婦人科を探す
▼「排尿痛・血尿」がみられる方は…
泌尿器科を探す
閉経後に下腹部痛がでたときの対処法
まずは、
お腹を温める
質の良い睡眠をとり、体を休める
といった対処をおすすめします。
閉経後に下腹部痛があり、出血・おりものの増加・排尿痛などがない場合は、「冷え」や「疲労」が原因として考えられます。
上記の対処により、痛みが和らぐかどうか確認してください。
もし痛みが続くようであれば、病院を受診しましょう。
対処法① まずは、お腹を温めてみよう
安静にして、痛い部分を中心にお腹と腰回りを温めましょう。
腹巻きをする
室温を上げる
ゆっくりと湯船に浸かる
といった方法がおすすめです。
また、体が冷える時間を減らすことも大切です。
「入浴前に部屋を暖めておき、入浴後はすぐに髪を乾かして服を着る」などの対策もとりましょう。
対処法② 質の良い睡眠をとり、体を休めよう
腹痛があるときは、気がつかないうちに日々の疲れが溜まっている可能性があります。
質の良い睡眠をとって、体をゆっくり休ませましょう。
ぐっすり眠るためのコツ
寝室を快適な温度・湿度に保つ
衣類・寝具を心地の良いものに整える
眠る1時間ほど前に、深呼吸しながらストレッチを行う(体温を上げる)
就寝の2〜3時間前に湯船に浸かる
眠気があるときを逃さない
眠る前に、あれこれと考えることは避けましょう。
心配事なども今日は見送って、体を休めることに集中してください。
痛みが続く・強くなっているときは迷わず病院へ!
下腹部痛などの痛みが2~3日継続している
痛みが強くなっている
出血・おりものの増加を伴う
排尿痛・血尿がある
といった場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。
上記の症状には、子宮ガン・卵巣ガンといった重い病気が隠れているケースもあります。
命の関わるリスクを避けるためにも、早めの受診を心がけましょう。
病院は何科?
症状
おすすめの診療科
腹痛(その他の症状はない)
内科
腹痛
不正出血
おりものの増加
婦人科
排尿痛
血尿
残尿感
泌尿器科
出ている症状によって、おすすめ診療科は変わります。
上の表を参考に、ご自身に合った診療科を選んでください。
医師に伝えるポイント
「生理痛のような痛み」を感じ始めた時期
1日の中で、いつ痛みを感じやすいか
痛みがおさまるまで、どのくらいかかるか
腹痛以外の症状(出血・おりものの増加・排尿痛など)
閉経の時期
受診の際は上記の点を医師に伝えると、診察がスムーズに進みます。
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泌尿器科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本産科婦人科学会 更年期障害