「肌が固い」「ザラザラしている」
このような状態の肌を、一般的に「サメ肌」と言います。
しかし、これは病名ではありません。
それでも、このような肌状態に悩んでいる女性が、多くいます。
サメ肌は、何が原因で起こるのでしょうか。
また、対処方法はあるのでしょうか。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
急に“サメ肌”になる原因は“ターンオーバーの異常”かも
サメ肌は、ターンオーバー(皮膚の生まれ変わり)の停滞によって厚くなった「角質」だと考えられます。
皮膚の表面では、常にターンオーバーが行われています。
基底膜(表皮の底辺)から産まれた基底細胞が、最終的には角質細胞(表皮の表面)になっていきます。
通常であれば、角質細胞は、肌を表面で守る役目を終えた後、垢になって剥がれ落ちます。
しかし、何らかの影響でターンオーバーに異常が起こり、保湿機能が働いていない状態の角層が垢にならずそのまま肌に残ることがあります。
すると、角層が厚くなって、肌が硬くザラザラした質感になるのです。
医学的には“毛孔性苔癬”という状態
サメ肌のように急に“肌がザラザラ”する場合は、種別を分けるとすれば、毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)という皮膚病に状態が近いかもしれません。
毛孔性苔癬の症状
- カサカサする
- パラパラと粉にようなものが剥がれ落ちる
- キメが粗くなる
- 毛穴が目立つ
※痛み・かゆみなどの症状は、普段はほぼありませんが、冬の空気が乾燥する時期には、かゆみが現れることもあります。
毛孔性苔癬になりやすい人
- 肥満傾向
- アトピー性皮膚炎を患っている
- 尋常性魚鱗癬(※)を患っている
上記の人は、毛孔性苔癬を発症しやすいと言われています。
(※)尋常性魚鱗癬…皮膚が乾燥して硬くなり、魚のウロコのようになる病気
肥満の場合は、新陳代謝低下などで角質が溜まりやすくなり、発症リスクを高めると考えられます。
また、遺伝による体質が要因の一つになることもあります。
治すには…とにかく“保湿”が大事
サメ肌のケアは、何よりも保湿することです。
保湿すると、肌の表面が柔らかくなるだけなく、正常にターンオーバーを行う手助けにもなります。
保湿を続けていけば、肌の状態は少しずつ改善していくでしょう。
サメ肌は加齢とともに減っていくことが多いので、過度に悩まずにゆっくり構えてください。
個人差はありますが、成人した頃になくなる人や、30代~40代でなくなる人が多いです。
肌の保湿する方法
肌の保湿には、
- 「化粧水」で角質層まで水分を浸透させる
- 「乳液」や「クリーム」などで肌水分の蒸発を防ぐ
などの方法があります。
体の乾燥が気になる方は、「ボディクリーム」や「ボディオイル」を使ってケアしてください。
入浴時に「保湿系の入浴剤」を活用するのもよいです。
どんな保湿剤がおすすめ?
油分を含み、皮膚の水分を守ってくれるものを選びましょう。季節によって変えても良いです。
冬は「ワセリン」など油分の多い軟膏・クリーム、夏はさっぱりのローション(乳液)タイプが良いでしょう。
保湿のやり方OK例・NG例
OK例
- 保湿はお風呂上がりに行う
- まずは水分と保湿成分入りの化粧水をたっぷりつける
- ある程度水分が浸透したら、保湿力の高いクリームや乳液をつける
※保湿したい箇所より広めにつけるとよいでしょう。
NG例
→乾燥の原因となるので、たくさんつけるようにしましょう。
ビタミンA・βカロテンでの摂取もおすすめ!
ビタミンAやβカロテンは、皮膚や粘膜を正常に保つのに有効です。
食生活に取り入れて積極的に摂取しましょう。
なお、ビタミンAは摂りすぎると過剰症を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
βカロテンの形で体に取り入れれば、必要量がビタミンAに変換されるので過剰症になることがありません。
栄養素
|
豊富に含まれる食材の例
|
ビタミンA
|
レバー、バター、卵黄、ニンジン、うなぎ、モロヘイヤ、ほうれん草
|
βカロテン
|
にんじん、ほうれん草、ピーマン、かぼちゃ
|
油と一緒に摂取するのがおすすめ!
ビタミンA・βカロテンは、油と一緒に摂取すると、吸収力が良くなることがわかっています。
炒めたり、油を引いて焼いたりして、食べてみてくださいね。
サメ肌が治らない人が無意識にやっていること
保湿してもサメ肌が治らない場合、
- 保湿が足りていない
- 皮膚を触っている(掻いている)
- 食べ過ぎ(ビタミン不足)
などが原因として考えられます。
皮膚を触ったり、掻いたりしないよう、サメ肌になっている箇所は衣類を身につけましょう。
また、入浴で洗浄して生活にした後に保湿を怠らないようにしてください。
食事やおやつは、適量を摂るようにしましょう。
油分・糖分の摂取が多いと肌荒れを起こしやすくなるので要注意です。
サメ肌は、皮膚科で治療できるの?
皮膚科、美容皮膚科どちらでも治療可能です。
保険治療の場合、尿素軟膏(角質を柔らかくする)、赤みを抑える軟膏などが処方されます。
美容皮膚科でできること
美容皮膚科は保険適用外ですが、
- レーザーピーリング・ダーマペン(角質をレーザーなどで取り除く)
- ケミカルピーリング(角質を薬剤で取り除く)
- トレチノイン(ビタミンA誘導体の塗り薬)
といった、さまざまな方法で治療を行えます。
特に、こんな症状は早めの受診がおすすめ
- 「カサカサ」や「毛穴のぶつぶつ」が増えてきた
- かゆみを感じてきた
といたことがあれば早めに受診しましょう。
早期治療スタートで、悪化するリスクを避けられることが多いです。
皮膚科を探す
皮膚科では、どんな治療を受けられるの?
病院で行うサメ肌治療は、乾燥やごわつきの症状を和らげる治療が、中心になります。
治療例
|
治療内容
|
保険適用かどうか
|
保湿剤の処方
|
- 角層を柔らかくする成分を含む保湿剤(尿素)などによるケア
|
|
ピーリング
|
|
- 保険適用外
- 費用:1回10,000円程度
- 複数回の治療が必要なことが多い
- 赤みが治療後に出ることもある
|
ピーリングレーザー
|
|
- 保険適用外
- 費用:1回20,000円〜30,000円程度
- 複数回の治療が必要なことが多い
- 赤みが治療後に出ることもある
|
皮膚科を探す
合わせて読みたい
2020-08-18
背中のブツブツがかゆい…。
これはニキビ?どうしたら治るのかを教えて!
背中にできたブツブツの正体をお医者さんに聞きました。
正しいケア方法や病院に行く目安も解説します。
背中のブツブツがかゆい…これは何?
背中できたかゆいブツブツは
①ニキビ
②カビ
の可能性があります。
ブツブツ原因1.ニキビ
ニキビの原因であるアクネ菌が増えて、炎症を起こすこと、ブツブツができます。
皮脂の分泌が多く、毛穴の先がつまると、毛穴の中に皮脂がたまりやすくなり、アクネ菌が増えてしまいます。
背中ニキビができやすい人
不規則な生活、睡眠不足、ストレス、生理周期などにより、ホルモンバランスが乱れると、ニキビはできやすくなります。
汗や皮脂が出やすい夏や乾燥しやすい冬にもできます。
ブツブツの特徴
数は少なく、大きいものもあれば小さいものもあります。
最初は、毛穴がつまり白っぽく盛り上がった白ニキビができます。その後、赤いブツブツができ、進行すると膿がたまります。
正しいケア方法
洗う時は、石鹸をしっかりと泡立て、優しく洗いましょう。しっかり泡立てられれば、手でもタオルでも構いません。こずらず「泡」で洗うことが大切です。
洗ったあとは、すすぎ残しがないように洗い流してください。乾燥が気になれば、保湿剤を使用すると良いでしょう。
\注意/
タオルなどでゴシゴシとこするのはNGです!また、ナイロンタオルは刺激になりやすいので避けましょう。
市販薬はどう選ぶ?
殺菌成分の入っている薬がおすすめです。スプレータイプのものは背中に届きやすいです。
ブツブツ原因2.カビ(マラセチア菌)
マラセチア菌という真菌(カビ)が、皮膚の毛根を包む組織(毛包)に感染することで炎症を起こします。
この菌は常在菌なので、多くの人の背中にみられ、通常では特に悪影響はありません。
汗をかいてそのままにしたり、不衛生にしていたりすると、増殖してぶつぶつを引き起こします。
カビ菌によるブツブツができやすい人
皮脂が出やすい思春期から20代前後の人や、汗っかきの人にできやすいです。
厚着をして洋服の中が蒸れる場合や、免疫力が低下している場合も、マラセチア菌が増殖しやすいです。季節的には、高温多湿の梅雨から夏にかけて増えやすいです。
ブツブツの特徴
通常のニキビよりも小さい、大きさは均一の赤いブツブツです。
ひとつだけできることもあれば、多数できることもあります。
正しいケア方法
汗をかいたらこまめに拭く、着替えるなどし、背中を清潔に保ちましょう。
そのために、蒸れやすい下着や服装は避けることも大切です。
また、免疫力が下がらないように
バランスのよい食事
適度な運動
良質な睡眠
ストレスをためない
といったことを心がけ、規則正しい生活をするようにしましょう。
市販薬はどう選ぶ?
抗生物質や抗真菌成分の入った薬がおすすめです。
スプレータイプのものは背中に届きやすいです。
背中のブツブツにこれはNG!
背中にブツブツができているときに、
触る
潰す
かきむしる
ごしごしこすって洗う
原因がよくわからないのにむやみに市販薬を使う
汗をかいて、そのままにする
といった行動はやめましょう。
背中のブツブツが治らない原因に繋がります。
疑問「ブツブツがあっても日焼け止めは塗るべき?」
ブツブツができていても、背中の開いた服を着る時には、がん予防の観点から日焼け止めを塗りましょう。
そして、夜はしっかり日焼け止めを落としてください。
病院に行く目安
しっかりとしたセルフケアや、市販薬の使用を続けても、1週間以上治らない場合には病院を受診しましょう。
原因と合っていないケア方法によって、炎症がひどくなっている可能性が考えられます。病院を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。
受診するのは何科?
まずは、皮膚科を受診しましょう。
皮膚科を探す
※背中のブツブツ以外に、月経不順や毛深くなっている部分があるといった場合は、婦人科や内分泌内科をすすめるケースもあります。
皮膚科での治療法
症状に合った適切な薬の処方の他、次のような治療を行うケースもあります。
<脱毛>
毛の色味に反応させて、熱が毛を伝って毛根にある毛母細胞を破壊します。その途中にある皮脂腺にも熱が伝わるので、殺菌効果が生まれます。
<ケミカルピーリング>
古い角質を除去することで一緒にアクネ菌やマラセチア菌も除菌することが可能です。
※治療方法は、医師の判断や病院の設備により異なります。
参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 にきび
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa3/q01.html
第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局 背中ニキビ(身体ニキビ)の対策
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/50_senakanikibi/index2.html
Medical Mycology Journal 第53巻 第1号 平成24年 マラセチア感染症
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mmj/53/1/53_1_7/_pdf
合わせて読みたい
2020-06-05
「顔の湿疹が治らない!」
湿疹の原因と対処法をお医者さんに聞きました。
早く治す方法をはじめ、やってはいけない対処法も解説します。
病院へ行った方がいい症状もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
なぜ?顔の湿疹が、なかなか治らない!
顔の湿疹がなかなか治らない場合、アレルギー反応の可能性があります。
また、肌状態は健康状態にも左右されます。ストレスや疲れ、食生活の乱れなどでも湿疹が治らないがあります。
<アレルギーの原因の例>
花粉
ハウスダスト
乾燥
メイク
シャンプー
ボディソープ
金属
ずっと治らないと…どうなっちゃうの?
湿疹が慢性化すると、皮膚が硬くなり、黒ずみや跡が残ることがあります。
先生教えて!早く治す方法は?
「スキンケアのコツは?」「市販薬を何を選べばよいの?」
自宅でできる顔湿疹のセルフケア方法をご紹介します。
洗顔方法
皮脂の表面についた汚れをしっかりと洗い流すことが大切です。
<スキンケアの4ポイント>
低刺激の石けんを使う
優しく洗う(こすりすぎない)
石けんは少量を泡立てて使う
石けんが残らないように、しっかりすすぐ
スキンケアの方法
しっかり石鹸を洗い流した後は、乾燥を防ぐため保湿をします。
乾燥がひどくないときはローションタイプ、乾燥がひどい時はクリームタイプがおすすめです。まずは手を清潔にして行いましょう。こすらずに、力を入れず塗ります。傷口がある場所は避けましょう。
<ローションの場合>
適量を手のひらにとり、その後、手のひらで皮膚に馴染ませるようにやさしく伸ばします。
<クリームの場合>
人差し指でクリームをとって、肌に点在させ、その後、手のひらで皮膚に馴染ませるようにやさしく伸ばします。
皮膚の乾燥は湿疹や痒みの悪化につながります。保湿剤は刺激の少ないものを選び、優しく全体に伸ばすように塗りましょう。
市販薬の選び方
皮膚の炎症を抑えるもの:ステロイド外薬
痒みを伴うもの:抗ヒスタミン薬
原因にもよりますが、基本はステロイド外薬を使用します。
しかし、自己判断はせずに病院を受診することをおすすめします。
皮膚科を探す
やってはいけない“絶対NG”ケア
皮膚を清潔するために、強い力で顔を洗うと皮膚を傷つけてしまい、逆効果になります。
また、1日のうちに何度も洗顔を行うと、皮膚が乾燥してバリア機能が低下してしまうため、注意しましょう。洗顔は、1日2回~3回ほどでよいでしょう。
セルフケアでは治りにくいことも!
セルフケアでは湿疹の原因がわかりません。
そのため、皮膚科を受診して、原因にあった薬を処方してもらうことをおすすめします。
肌荒れで、皮膚科に行ってもいいの?
肌荒れで皮膚科を受診しても大丈夫です。
肌荒れの原因は、人によって様々です。
そのため、原因を突き止めて正しい治療をすることが、早く治すためには必要になります。
また、合わない市販薬を使い続けるより、症状に合った薬を使う方が、金銭的にも安く済みます。
皮膚科を探す
湿疹が出る病気の場合も…
湿疹がでる「病気」のケースもあります。
病気1. 光線過敏症
日光アレルギーとも呼ばれます。
日光に皮膚が過敏に反応して、炎症が生じることをいいます。
<湿疹の特徴>
日光にあたると、赤くなり炎症を起こす
皮膚が腫れる
水ぶくれができる
かゆみを伴う
病気2. 帯状疱疹
水疱瘡のウイルスによって発症する感染症です。水疱瘡にかかったことのある人なら、誰でもなる可能性があります。
体の片方だけ(右半身だけ、左半身だけ)に症状が出ている場合は、帯状疱疹の可能性が高くなります。
水疱瘡は、治癒してもウイルスが体内に残っています。
ストレスや疲れ、加齢などが原因で免疫力が低下した際に、潜伏していたウイルスが活性化し、皮膚に発疹が起こります。
<湿疹の特徴>
数日間、神経痛のような痛みがある
水ぶくれのような赤い発疹が現れる
強い痛みが起こる
病気3.アトピー性皮膚炎
肌のバリア機能が低下し、皮膚が炎症を起こし、かゆみや湿疹を繰り返す病気です。
<湿疹の特徴>
かゆみがある
赤みやささくれだって皮が剥ける
良くなったり、悪くなったりを繰り返す
病気4.全身性エリテマトーデス
原因が不明な難病です。
自分の体を自分の免疫が攻撃をし、自己免疫反応により自分の体に様々な炎症が起こる病気です。
38度以上の発熱や全身倦怠感、関節痛などの症状が現れます。
<湿疹の特徴>
顔や耳、首の周りなどに蝶の羽のような紅斑がでる
痛みやかゆみはない
こんな症状なら皮膚科へ
基本的に、湿疹が出たら早めに皮膚科を受診しましょう。
跡が残ってしまったり、早く治すのを予防するためにも、早期受診が大切です。
特に、
湿疹が増える
湿疹に痛みがある
発熱
疲労感
全身倦怠感
食欲不振
という症状を伴う場合は、悪化していたり、深刻な病気の可能性もあるのですぐに受診するようにしましょう。
病院での治療法
塗り薬や飲み薬で治療を行います。
皮膚科を探す
参考
公益財団法人 日本皮膚科学科会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q05.html
第一三共ヘルスケア ひふ研
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/symptom/shisshin/
かゆみナビ
https://www.kyowakirin.co.jp/kayumi/
東京医科大学病院 お薬のしおり
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/yakuzai/data/138.pdf