風邪ではないのに、マスクをすると鼻水が出る…
マスクの中で鼻がツーっと垂れてくる…
マスクをした途端に鼻がずるずるして困る…
マスクをすると鼻水が出るのは、体の防御反応かもしれません。
医師が詳しく解説します。
監修者
経歴
1991年に兵庫医科大学を卒業後、兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年医療法人協和会に所属。2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。
専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。
学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。
「マスクをした時に鼻水が出る」のは湿気や温度差の影響
特に風邪の症状ではないのにマスクをした時に鼻水が出るのは、主に
が影響していると考えられます。
これは風邪やウイルス性のものとは関係なく起こる、体の生理反応のひとつです。
外でマスクをすると、一気に口の中に湿気がこもることはありませんか?
その湿気が鼻水の原因かもしれません。
湿度の増加
マスク内で呼吸すると水蒸気がこもり、マスクの中の湿度が上がります。この湿気が鼻腔内に入ると粘膜が刺激され、余分な湿気を排出しようとして鼻水が増えます。
鼻の粘膜は異常な環境変化や刺激から体を守るため、防御反応を示します。
鼻腔内の粘膜が湿気で潤いすぎてしまうことで体が湿度のバランスを保とうとし、余分な湿気を鼻水で排出しようとするのです。
鼻や口周りの温度差
マスクをしていると鼻や口周りの温度が上がります。特に冬はマスクをする前とマスクの中とでは温度差があるため、その温度差が鼻腔内の血管や粘膜に影響し、鼻水を増やすと考えられます。
特に冬は、マスクをしていない状態では冷たい外気にさらされていることで鼻腔内の血管が収縮しています。
そこでマスクをすることで急激に温度が上昇し、血管が拡張。この血管の収縮と拡張の変化が鼻腔内の神経を刺激し、鼻水の原因となります。
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2021-08-31
「マスクをしているせいか、肌が荒れてきた…」
「ニキビも増えた気がする…」
なぜマスクで肌荒れが起こるのか、医師に聞きました。
セルフケア方法や皮膚科に行く目安も解説します。
なぜマスクをしていると肌が荒れるの?
マスクで肌が荒れる場合、
マスクによる摩擦
マスク内の蒸れ
乾燥
が原因として考えられます。
マスク肌荒れの「特徴」
マスクで覆っている皮膚に、赤み、かゆみ、ぶつぶつ(ニキビ・湿疹)が発生します。
原因① マスクによる摩擦
マスクをしていると、布や紙が肌を常に擦っている状態になるので、皮膚の炎症や肌荒れをひき起こします。
特に会話をしているときは、マスクが動いて摩擦が強くなります。
原因② マスク内の蒸れ
汗や呼気の水分で蒸れているマスクの中は、肌が細菌感染を起こしやすい状態です。
皮脂も分泌されやすいため、アクネ菌の増殖につながり、ニキビが発生する原因になります。
原因③ 乾燥
紙や布が肌を擦ると、肌の水分や油分が拭き取られ、乾燥が起こりやすくなります。
乾燥は皮膚のバリア機能を低下させてしまうため、赤み・湿疹・ひび割れなどの原因となります。
マスク肌荒れ(赤み・かゆみ・ぶつぶつ)はどう対処する?
マスクによる肌荒れは
毎日のスキンケアを丁寧に行う
市販薬を使用する
ワセリンやガーゼで摩擦を防ぐ
肌に優しい素材のマスクを選ぶ
などの方法で対策しましょう。
その① 毎日のスキンケアを丁寧に行う
肌荒れの改善には、肌の調子を整えて、ターンオーバーを正常に近づけることが大切です。
スキンケアは、肌に水分や油分をプラスしてバリア機能を強化してくれます。
STEP1 まずはしっかりクレンジング
ミルクタイプのクレンジング剤をたっぷり使い、肌の上を滑るようになじませます。
量が少ないと指が直接触れて、肌トラブルの原因になります。
クレンジングは、ファンデーションなどのメイク汚れを取り除いて、肌トラブルを軽減してくれます。
オイルやクリームなど種類がありますが、オイルクレンジングは必要な皮脂も落としてしまうので、あまりおすすめできません。
STEP2 優しく洗顔する
洗顔料をホイップクリームのように泡立てて、肌に押し当てるように洗いましょう。
泡をたっぷり使うことで摩擦が減り、洗顔時の刺激が少なくなります。
余分な皮脂や角質を除去するうえで、毎日の洗顔は欠かせません。
優しく洗顔して、ターンオーバーをスムーズにさせましょう。
STEP3 化粧水・乳液で保湿する
セラミドやヒアルロン酸など保湿力成分が高い化粧水と乳液で、しっかりと保湿してください。
化粧水がしっかりと浸透してから、乳液やクリームを使うと効果的です。
ただし、過度な保湿には注意しましょう。
自身の皮脂分泌を怠けさせてしまうと、肌荒れの原因になります。
その② 市販薬を使用する
保湿剤(セラミド、ヒアルロン酸など)
ニキビ薬(イオウ、イソプロピルメチルフェノールなど)
などの市販薬であれば、使用してもかいません。
保湿剤、ニキビ薬を使用すると、バリア機能が高まったり、殺菌、炎症抑制になります。
薬剤師にご相談の上、購入しましょう。
その③ ワセリンやガーゼで摩擦を防ぐ
ワセリンを塗ることで油分の保護膜を作ってくれます。
さらにその上をガーゼでカバーすると、摩擦による肌荒れを防ぎやすくなります。
ワセリンは、スキンケアの後に塗りましょう。
ガーゼを挟む際は、マスクの繊維が直接肌に触れないようにしてください。
その④ 肌に優しい素材のマスクを選ぶ
直接肌に触れる部分には、ガーゼやシルクなど肌に優しい素材を使い、二重にマスクをしましょう。
ウレタンマスクは肌に優しいですが、感染症予防の観点からはおすすめできません。
清潔なマスクを着用しましょう!
マスクを洗わずに何日も使うのは、不衛生なので控えてください。
また、使い捨てマスクは毎日新しいものを使用しましょう。
不潔なマスクを使用していると、細菌が肌に付着して細菌感染を起こす恐れがあります。
こんな時は皮膚科で相談を
かゆみ、赤みが強くなっている
痛みがある
湿疹が増えている
出血している
といった場合は、皮膚科で相談しましょう。
放置して悪化すると、かゆみや湿疹がどんどんと広がったり、跡が残ったり、色素沈着が起こったりすることがあります。また、ウイルス感染の湿疹など、マスクによる肌荒れではない可能性もあります。
原因を特定するためにも、皮膚科の受診をおすすめします。
皮膚科ではどんな治療を受けるの?
炎症を抑える軟膏や保湿剤などを使用して治療を行います。
ご自身にあった治療薬を処方してくれるので、市販薬より早い快方が見込めます。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
公益社団法人日本皮膚科学会 乾燥
寒い時は鼻水が出やすい
特に寒い環境ではマスクの中と外の温度差が大きくなったり、冷たい空気が鼻の粘膜を刺激したりすることで、さらに鼻水が増えることがあります。
寒い環境下では、体は冷たい空気を温めるために鼻腔内の血流を増加させます。その過程で鼻腔内の分泌が促進されて、鼻水が出やすくなることがあります。
また、鼻の神経が冷たい空気に敏感に反応する「寒冷性鼻炎」が起こることも。
寒冷性鼻炎とは、冷たい空気によって鼻の粘膜が刺激され、乾燥や刺激から守ろうと鼻水を分泌して鼻腔内を潤す防御反応のことです。
マスクをしていると外気との急激な温度差があるため、寒冷性鼻炎の反応が促進されることがあります。
「不織布マスク」はさらに鼻水が出やすくなる!?
不織布マスクは布マスクなどと比べ通気性が限られているため、マスク内の湿度が上昇しやすいです。そのため、鼻水が分泌されやすくなることがあります。
不織布マスクをした時、マスクの内がこもり、マスクの内側に水滴がついていた経験はありませんか?これは不織布マスクの通気性が悪いため。
逆に言えば密閉性は高いのですが、その分冷たい外気との温度差が高くなり、鼻水が出やすくなると考えられます。
マスク自体がアレルギーの原因になっている可能性も
なかには、マスクに使われている素材に含まれる微細な繊維や化学物質によって、アレルギー反応を起こしている場合もあります。
特定のマスクをした時にだけ鼻水が出る、寒くない室内でも鼻水が出るという場合には、一度病院でアレルギー検査を受けてみるのもおすすめです。
例えばポリエステル製のマスクや、特定の防腐剤が含まれているマスクなどはアレルギーを引き起こすケースが多いです。このようなマスクを使用した時にだけ鼻水が増加したりする場合はアレルギーの可能性も考えられます。
まずは布製のマスクなど、違う素材のマスクを試してみましょう。着用前に素材や成分を確認して自分に合うマスクを見つけることも大切です。
【対処法】マスクの中で鼻水が出なくなるようにするには?
温度差や湿度が原因の鼻水への対処法は、
- ティッシュやガーゼなどを挟む
- 時々マスクの中を換気する
- 鼻周りに保湿クリームを塗る
- 通気性のいいマスクを選ぶ
などがいいでしょう。
ティッシュやガーゼなどを挟む
マスクの内側に薄いティッシュやガーゼを挟むことでマスク内の湿気を吸収し、蒸れを軽減できます。これにより鼻水の原因となるマスク内の過剰な湿気を減らすことができます。
時々マスクの中を換気する
長時間マスクを着けているとどうしても湿気がこもるため、時々マスクを口から浮かせて換気するのもおすすめです。湿度を下げることで鼻腔内の刺激を抑えられ、鼻水を防ぐことに繋がります。
鼻周りに保湿クリームを塗る
特に冬場はマスクの摩擦や湿気などで鼻周りが乾燥します。鼻腔内が乾燥することでも防御反応として鼻水が出やすくなるため、しっかり鼻周りを保湿することも大切です。
保湿クリームを鼻の下に軽く塗ると粘膜を保護できるため、乾燥による刺激を防ぐことに繋がりますよ。
通気性のいいマスクを選ぶ
マスクの中でも、なるべく通気性のいいマスクを選ぶようにしましょう。きつすぎず、適度に口周りにゆとりがあるものなどが望ましいです。マスク内の湿気を減らすことで、鼻水の予防に役立ちます。
この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。
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2024-10-18
よく漫画やドラマなどで
寒い中で何時間も誰かを待っていて「くちゅん」と風邪をひいてしまう…
お風呂上りに服を着ずに薄着で寝落ちしてしまって、翌朝熱が出ている…
というシーンを見たことはありませんか?
風邪をウイルス感染のため、人混みなどで感染することはなんとなくイメージが着きますが、実際「寒さ」で風邪をひくことはあるのでしょうか?
「寒さ」で風邪をひくことってあるの?
風邪とは主にウイルスによって引き起こされる感染症です。そのため、「寒さ」が風邪の直接の原因になることはありません。
風邪の直接的な原因はウイルス感染。ウイルスが鼻やのどの粘膜に付着し、体内に侵入することで感染を引き起こします。
鼻にの粘膜から侵入すると鼻かぜに、のどの粘膜から侵入するとのど風邪になります。
冬の寒い時期に風邪をひきやすいのはなぜ?
冬に風邪をひきやすいのは「寒いから」ではなく、
空気が乾燥している
免疫力が低下しやすい
日照時間が短くなる
などが原因です。
①空気が乾燥している
空気が乾燥していて湿度が低いと、鼻やのどの粘膜が乾燥しやすくなります。するとウイルスや細菌を防御する機能が低下してしまい、ウイルスが体内に侵入しやすくなります。
通常、鼻やのどの粘膜にある粘液がウイルスや細菌をとらえて体内に入るのを防ぎます。ですが、乾燥しているとその粘膜が乾燥してしまうため、防御機能が低下してしまうのです。
さらに、乾燥していると風邪を引き起こすウイルスが長時間生存しやすくなったり、空中に漂いやすくなるため、ウイルスに感染しやすくなるのも冬に風邪をひきやすくなる原因です。
②免疫力が低下しやすい
寒くて体温が下がると血流が減少し、免疫細胞の働きが鈍くなるため、ウイルスに感染しやすくなります。
寒さにさらされると、体が体温を維持しようと血液を体の中心部に集めるため、鼻やのどの抹消部分の血流が減少します。血流が悪くなることで免疫力が低下してしまい、ウイルスに感染しやすくなるのです。
また、寒さや乾燥が続くことで体が常に負担を感じ、疲労が溜まることで免疫力が弱まることがあります。
③日照時間が短くなる
冬は日照時間が短くなるため、ビタミンDの生成が減少します。ビタミンDは免疫機能の調整に重要な役割を果たしているため、不足することで免疫力が下がり、風邪をひきやすくなります。
ビタミンDは太陽光を浴びることで生成されます。
太陽が出ている時間が短くなる冬の時期はビタミンD不足になりがちのため、サプリメントなどを上手く活用して不足しないように気を付けることが大切です。
なぜ風邪をひかないためにマスクや手洗い・うがいは大切なの?
風邪のウイルスは「飛沫感染」や「接触感染」によって粘膜に付着します。そのため、マスクをして空気中のウイルスを吸い込まないようにしたり、手洗いうがいをして手についたウイルスを落とすことが風邪の予防にとても大切です。
風邪をひいた人がくしゃみや咳をした時に飛ぶウイルスが含まれた飛沫を吸い込み、鼻やのどに到達するのが「飛沫感染」、風邪をひいた人がウイルスのついた手で触れた部分を介してウイルスを体内に入れてしまうことが「接触感染」です。
特に満員電車やショッピングモールなど人混みの中では飛沫感染を起こしやすくなります。
また、電車のつり革などから手にウイルスが付着し、そのまま顔を触ってしまうことでウイルスが体内に侵入することも考えられるので、外に行くときはマスクをしっかりして、家に帰ってきたらすぐに手洗い・うがいをすることが風邪予防にはとても大切ですよ。