「原因不明の体重減少は、病気のせい?」
体重減少がある場合の“病気と判断する目安”を、お医者さんが解説します。
糖尿病・がんなど命に関わる病気も考えられるため、放置はキケンです。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
体重減少で病気と判断する目は?
ダイエットなどを特にしていないのに、元の体重から6か月で5%以上減っている場合は、病気の疑いがあります。
また、体重減少に加えて
- 体のだるさ
- 食欲減退
- 胃痛
- 腹痛
- 下痢
- 気分が滅入る
といった症状を伴う場合は、さらに病気の疑いが強くなります。
原因不明の体重減少がある方は、早めに医療機関を受診して検査を受けましょう。
病院は何科?
体重の減少で病気を疑う場合は、まず内科・消化器内科を受診してください。
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考えられる3つの病気
体重が減ってしまう病気には、
- 糖尿病
- バセドウ病
- 悪性腫瘍(がん)
などが挙げられます。それぞれ詳しく解説していきます。
病気① 糖尿病
糖尿病が進行すると、体重減少が起こる場合があります。
これは、食事からの得る糖質をエネルギーとして使えなくなり、蓄えてある脂肪や筋肉中のタンパク質が消費されてしまうためです。
糖尿病の「主な症状」
- 倦怠感
- 風邪を引きやすい
- 体の感覚の鈍麻、違和感
- 喉が渇く
- 頻尿
- 目のかすみ
- 勃起不全
糖尿病の「原因」
上記の原因は、血糖を調整する“インスリン”の作用に悪影響を与えます。
インスリンの働きが鈍くなると、血中の糖が常に高い状態となり、糖尿病と診断されます。
どんな人に多い?
暴飲暴食を繰り返すなど、乱れた生活を送っている人に発症しやすい病気です。
中高年以降の人に多いですが、若い人でも発症します。
自分でできる対処法はある?
生活習慣を見直すことで、糖尿病の悪化防止が期待できます。
ただし、自己判断だけでは危険ですので、一度内科を受診してください。
生活習慣の見直しには、食事制限、食事方法の改善、適度な運動などがあります。
医師の管理のもとでセルフケアを行い、必要に応じて薬などを併用することで、糖尿病の進行を食い止めやすくなります。
糖尿病が悪化すると、腎不全・心筋梗塞・脳卒中といった重い合併症を引き起こします。
早めに医療機関を受診して、悪化を防ぎましょう。
病気② バセドウ病
バセドウ病の症状の一つに、体重減少があります。
バセドウ病とは、代謝機能に関わる“甲状腺ホルモン”が過剰に分泌される病気です。
体の代謝が高まりすぎることで、食べても食べても痩せていってしまいます。
バセドウ病の「主な症状」
- イライラする
- 動悸、息切れ
- 発汗
- 倦怠感、疲れやすくなる
- 手足の震え
- 食欲が異常にある
- かゆみが出る
- 微熱
- 眼球が前に出てくる
- 排便回数が増える
- 喉(甲状腺)の腫れ
バセドウ病の「原因」
体の免疫機能に異常が起こることで発症します。
なぜ異常が起こるのかは、はっきりと解明されていません。
どんな人に多い?
遺伝的要素もあると考えられていますが、詳しくは分かっていません。
男性よりも圧倒的に女性に多い病気です。20〜50代に発症しやすい傾向があります。
自分でできる対処法はある?
ご自身でできる対処法はありません。
治療が必要であるため、内科を受診してください。
バセドウ病の場合、主に内服薬での治療が行われます。
症状によっては、甲状腺を取り除く手術が必要なケースもあります。
病気③ 悪性腫瘍(がん)
悪性腫瘍が発生すると、食欲不振やサイトカインによる代謝機能の異常によって、体重減少が起こる場合があります。
代表的な悪性腫瘍には、
などが挙げられます。
悪性腫瘍の「主な症状」
- 全身の倦怠感
- 慢性的な微熱
- 体の痛み(腹、胸、腰など)
※悪性腫瘍の種類によって、現れる症状は異なります。
※悪性腫瘍の中には、明確な自覚症状がないものもあります。
悪性腫瘍の「原因」
悪性腫瘍は、がん細胞が増殖することで発生します。
発生する部位によって「原因」は異なる
※下記は、発生に関わっていると考えられているものです。
<肺がんの原因>
<胃がんの原因>
<子宮がん>
自分でできる対処法はある?
ご自身でできる対処法はありません。
命に関わるため、早急に医療機関を受診してください。
悪性腫瘍を疑う場合は、まずは内科で相談しましょう。
病気が隠れている場合、放置すると悪化して、さらに重い症状が出る恐れもあります。
命に関わる病気も考えられるため、「原因不明の体重減少がある…」という方は早めに医療機関を受診しましょう。
医療機関に行く場合は、まず内科・消化器内科を受診すると良いでしょう。
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2020-12-04
血液検査に異常はないのに、体重が減少…。
一体なぜ?
体重減少の原因と考えられる病気を、お医者さんに聞きました。
病院に行く目安も解説するので、心当たりのある方は要チェックです。
痩せたけど血液検査は異常なし…これは大丈夫?
5%未満の体重減少であれば、あまり心配しなくてもいいでしょう。
無意識のうちに食事内容が変化している、運動量が増えているといった可能性もあります。
ただし、
半年で体重の5%(または5kg)以上の減少がある
体重の変化以外にも、何かしらの不調がある
という場合は、要注意です。
考えられる2つの原因
血液検査で異常がないのに極端に体重が減少している場合、
うつ病
悪性腫瘍(がん)
の可能性が考えられます。
以下の項目でそれぞれ詳しく解説します。
症状に心当たりがある方は、病院に相談しましょう。
原因① うつ病
うつ病になると、食欲がなくなり、体重が減少することがあります。
うつ病になりやすい人
10~30代の若者や、女性に多い病気です。
親や兄弟にうつ病患者がいる場合、発症リスクが高まります。
また、幼少期の虐待体験や不遇な養育環境に起因する場合もあります。
主な症状
気分が落ち込む
趣味や娯楽に興味を持てない
食欲がない
疲れやすい
集中力が下がる
体重が減る(目安は、1ヵ月で5% 以上)
眠れない、もしくは眠りすぎる
行動が遅くなり、焦りを感じる
自分は価値がない人間だと思う
自分の体を傷つける
死にたいと思う
上記の症状が5つ以上該当し、症状が2週間以上続く場合にはうつ病の疑いがあります。
うつ病と診断されるには、症状の①と②のどちらか1つが該当している必要があります。
受診するのは何科?
うつ病の疑いがあるときは、心療内科や精神科を受診しましょう。
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病気② 悪性腫瘍(がん)
がん細胞がエネルギー吸収を阻害すると、体重が減少します。
がんは、一般的な血液検査で発見されにくい病気です。
悪性腫瘍(がん)になりやすい人
あらゆる年代に発症リスクがあります。
ただし、喫煙や過度の飲酒、肥満は発症リスクを高めると言われています。
主な症状
だるさ、倦怠感
慢性的な微熱
腹部や胸、背中の痛み
便通異常
不正出血 など
受診するのは何科?
内科に相談しましょう。
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この症状は早急に病院へ
体重減少に加えて下記の症状がある場合、早急な受診が必要です。
発熱が続く
寝汗
骨の痛み
息切れ、せき、喀血
強いのどの渇き
尿量の増加
50歳以上はこの症状に注意
50歳以上の方は、
頭痛
食べ物を噛むときのあごの痛み
目がかすむ
ものが二重に見える
視野に欠けている部分がある
といった症状にも注意してください。
体重減少に加え、上記いずれかの症状に当てはまる場合は、病院に行きましょう。
原因不明の体重減少は早めに病院で相談を
原因不明の体重減少は、重い病気の可能性も考えられます。
病気の悪化を防ぐためには、早めに詳しい検査を受けることが大切です。
▼参考
厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス うつ病
MSDマニュアル家庭版 うつ病
MSDマニュアルプロフェッショナル版 意図しない体重減少
MSDマニュアル家庭版 嗅覚と味覚の障害の概要
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2019-12-27
ストレスが原因で背中痛が生じるケースがあります。
ときには「息苦しい」「胃が痛い」といった症状がでることも…。
対処法を、お医者さんに聞きました!
「背中が痛い!」原因はストレスのケースも
自律神経の影響で、ストレスが原因で背中痛が出る人もいます。
ストレスは、体のあらゆる器官の働きを調節している「自律神経」の働きにも影響を及ぼします。
痛みに加え「息苦しい」ことも
ストレスが多くなり、うまく自律神経の調節ができなくなると、
体や手足が冷たくなり血流が悪化する
動悸・息が苦しくなる
という症状が現れる人もいます。
痛みに加え「胃痛」がある場合は…
「胃痛」や「胃酸の上昇」などを伴って背中の痛みがある場合、逆流性食道炎等の可能性もあります。
逆流性食道炎は、胃液が何度も食道側に逆流して食道に炎症をきたす病気です。背中痛を同時に訴える患者さんも多くいます。
ストレスによる背中の痛みにはマッサージも
背中のマッサージは、体全体の血流を良くしてくれます。
体の血流が良くなるとストレスや痛みの緩和にも有効です。
市販薬は「使ってもいいが…長期はNG」
市販の鎮痛剤で一時的に背中の痛みがおさまる場合もあります。
ただし、長期的な使用は控えましょう。
1週間ほど痛みが続く場合は、痛みの原因を確認する必要があるので病院を受診しましょう。
原因不明のまま、痛み止めだけで対処していると、何か大きな病気を見過ごしてしまう可能性もあります。
また、痛み止めを連用していると、胃潰瘍や腎障害、肝障害などの副作用を引き起こすケースもあります。
「病気」の可能性も
「背中を使う運動をしたりしたわけではないのに背中が痛い、違和感がある」場合や、「安静にしているのに痛みがある」という場合は、何か病気が隠れているかもしれません。
特に、痛みが強くなったり、他の頭痛、腹痛、胸痛などの症状が併せてあるようなら、早めに病院を受診してください。
背中の「右側が痛い」病気
「背中の右上方が痛い」場合は、肺炎、胸膜炎、肺結核、気胸など肺の病気、「背中の右下部が痛い」は、膵炎、肝炎、十二指腸潰瘍、腎盂炎、腎結石などの可能性があります。
痛みの特徴の違い
肝炎:体全体の倦怠感と背中の痛み
十二指腸潰瘍:差し込んでくるような痛み
腎臓に異常がある:発熱と背中痛
背中の「左側が痛い」病気
「背中の左上方が痛い」場合は、狭心症や心筋梗塞、解離性大動脈瘤といった心臓に関わる病気、「背中の左下方が痛い」場合は、膵炎、膵臓がんなどの可能性があります。
痛みの特徴の違い
狭心症:押さえつけられるような圧迫感
解離性動脈瘤:体が引き裂かれるような強い痛み
膵臓の異常:少しの痛みから徐々に痛みが増し、今まで感じたことのないような激痛に変化する
何科を受診すればいい?
体を動かすときに痛みがある場合や体をひねると痛みがある場合等は、筋肉や骨などに異常がある場合が多いです。
整形外科を受診して血流の状態や筋肉の張りやコリを診察してもらいましょう。
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※その他は内科や循環器科、呼吸器科などに相談してみてください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。