周囲の音がうるさくてイライラ…。どうしたらいいの?
音に過敏になってしまう原因と対処法について、お医者さんに聞きました。
聴覚過敏は、うつ病や自律神経失調症の可能性も考えられます。
ご自身の症状を確認し、改善につなげましょう。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
なぜ?音に過敏でイライラする…
自律神経の乱れが原因で、聴覚過敏を引き起こしている可能性があります。
ストレスの多い生活や昼夜逆転の生活などで、自律神経は乱れます。
自律神経が乱れると交感神経が優位になり、アドレナリンが過剰に分泌されるため、聴覚過敏を引き起こします。
どう対処すればいい?
次の5つの対処法を実践してみましょう。
- 耳栓・イヤホン・イヤーマフなどを使用し、不快な音が耳に入るのを避けてください
- 好きな音楽を聴きましょう
- 自分なりのストレス発散方法を見つけましょう
- 栄養バランスの良い食事を摂りましょう
- 規則正しい生活を心がけてください
治らない場合は“病気サイン”かも
6つの対処法を行っても改善しない場合、自律神経失調症やうつ病の症状として、聴覚過敏が生じている可能性があります。
また、病気ではないですが、HSP(※)という繊細な気質を持っている人も聴覚過敏を発症しやすいです。
※HSP(Highly Sensitive Person)
生まれつき脳の扁桃体の働きが強く、脳内の神経が高ぶりやすい体質です。
思慮深い・刺激に敏感・人の気持ちに共感しやすい・感覚が敏感などの特徴があります。
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2021-02-19
聴覚過敏はうつ病のサイン…?
聴覚過敏とうつ病の関係について、お医者さんに詳しく聞きました。
「自分で対処する方法はある?」「病院へ行くべき目安は?」
やってはいけないNG行動についてもご紹介します。
「聴覚過敏」と「うつ病」の関係
うつ病になると自律神経のバランスが乱れ
音や声が気になる
音や声をうるさく感じる
耳鳴りがする
といった聴覚過敏の症状が起こることがあります。
その他にも、耳の痛み・頭痛・首の違和感・めまいなどの症状が生じることもあります。
うつ病に聴覚過敏、どう対処する?
応急的な対応としては、
なるべく大きな音のある場所を避ける
音の刺激がない静かな場所で休む
耳栓や防音保護具(イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン)を活用する
といったことがあげられます。
ただし、耳栓や防音保護具を長時間使用すると、音量の認知機能が悪化する可能性があります。緊急避難的に使用してください。
聴覚過敏を「根本的に治したい」
うつ病による聴覚過敏を自分で改善することは難しいです。
根本的に治すには、病院で治療を受ける必要があります。
早めの受診をおすすめする理由
早めに病院で検査を受けることで、聴覚過敏を改善することができます。
うつ病である場合、重症化すると入院治療を行わなくてはならないケースもあります。
聴覚過敏など気になる症状がある時は、速やかに医療機関を受診しましょう。
病院は、何科を受診する?
聴覚過敏を起こしている場合、まずは耳鼻いんこう科を受診しましょう。
聴覚過敏の原因がうつ病だとわかった場合は、精神科や心療内科の併科診療が必要になるケースもあります。
耳鼻いんこう科を探す
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どんな治療を受けるの?
病院治療の基本的な流れは
病状の説明
治療理論の説明
治療目標の設定
適切な音環境の提示
音響療法などの治療
の順番で行います。
具体的な治療方法としては
音響療法(音の感じ方に対する治療)
薬物治療(お薬で治療)
認知行動療法(行動・思考に対する治療)
などがあります。
ご自身の症状に合う治療方法を医師と相談しながら、行っていきましょう。
①音響療法
耳鳴りとは異なるノイズ音を流し、脳に耳鳴りの音を気にならなくさせる治療方法です。
半年から1年半程度で耳鳴りの改善を感じ、最終的に気にならなくなるケースもあります。
補聴器やサウンドジェネレータ(音源治療器)という器具を使い、耳鳴り再訓練療法(TRT療法)を行います。
最初は短時間の使用からスタートし、最終的には1日約6時間を目安に延長します。
耳鳴りや難聴を合併する場合、この方法は導入しやすいです。ただし、音声に対して恐怖感が生じている場合や強い痛みを誘発する場合は難しいです。
②薬物治療
不安を和らげる向精神薬や、憂鬱な気分などを改善する効果がある、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)のデュロキセチンを使用します。
③認知行動療法
ご自身の考え方や行動パターンを振り返り、患者自身が思考の偏りなどに気付いて、正していけるよう支援する方法です。
考え方や習慣を変えるために、医師と手段や目標を考えていきます。音響療法が難しいケースでは、重要な治療方法となります。
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▼参考
聴覚過敏の診断と治療
日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン作成委員会 日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016
病院に行く目安
次の症状に当てはまる場合、自律神経失調症やうつ病を発症している可能性が高いです。できるだけ早く病院に行って相談しましょう。
- めまい、耳鳴りが頻繁にある
- 立ちくらみが頻繁にある
- 息苦しいことがある
- 胸が締めつけられる感じがする
- 心臓が急に早くなったり、脈拍が飛んだりする
- 夏でも手足が冷たい
- 手足がだるい時がある
- 顔だけ、もしくは手足だけ汗をかく
- 食欲不振や胸やけなど、胃の調子が悪いことが多い
- 下痢や便秘が頻繁にある、もしくは繰り返す
- 肩こりや腰痛がある
- 気候の変化に弱い
- まぶしく感じることがある
- たくさん寝ても、寝足りない
- 眠れなかったり、眠りすぎたりする
- 怖い夢を見る、もしくは金縛りにあう
- 朝起きた時に疲労感がある
- 咳が頻繁に出る
- 喉に違和感がある、呂律が回らない
- 気分が落ち込む
- 胸がザワザワする
- 今まで興味があったことや楽しいと感じたことが、そうでなくなった
- 自分を責めたり、価値がない人間だと思ったりする
- 自分の体を傷つけたり、死にたいと思ったりする
- 食欲や体重が減った、もしくは増えた
(体重減少の目安は、1ヵ月のうちに5% 以上)
- 行動が遅くなったり、焦りを感じたりする
- 疲れやすい
- 集中力が下がった
特に多く当てはまった場合は、一度受診するのが安心です。
受診するのは何科?
音に敏感になっている場合、まずは耳鼻いんこう科を受診しましょう。
自律神経失調症やうつ病の症状がある時は、精神科や心療内科を受診してもよいでしょう。
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重症化すると「入院治療」になることも
うつ病や自律神経失調症の場合、悪化すると日常生活に支障をきたす可能性があります。
特にうつ病は注意が必要で、重症化すれば入院治療を行わなくてはならないケースもあるからです。
聴覚過敏やうつ病などの症状に心当たりがある方は、一人で抱え込まずに医療機関を受診しましょう。
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2020-11-19
「私って…精神科いくべき?」
どんな症状が出ていたら精神科に行くべきなのか、お医者さんに聞きました。
初診の流れや、一般的な費用についても解説します。
精神科に行く基準は?
精神科に行くべきか悩んでいます…。
自分自身の精神状態が「いつもと違う」と感じていて、違和感があると自覚しているなら、一度精神科で相談してみましょう。
精神科に行くべき症状例
受診を躊躇してしまう場合は、次の症状を目安にしてみてください。
寝つきが悪くなった
1時間以上眠れない状態が1週間以上続いている
夜中に何度も目が覚める。目が覚めると中々眠れない
予定よりも2時間以上早く、目が覚めてしまう
一時的または常に、悲しいという思いが強い
食欲が落ちて、丸一日食べられない
ストレスで過食に走ることがある
食欲が止まらない
最近2週間で体重が4キロ以上増減した
集中力がなく、決断を下せない
自分の欠陥点ばかり考えてしまう
一日の何回も死にたいと考えてしまう
今まで、好きだったものに興味が持てない
疲れている気がして、ルーティンワークをこなせない
落ち着く場所がない
動きが遅くなったように感じる など
“しんどい”だけで病院に行ってもいいの?
まだ我慢できるかも…と思っています。
自分がつらいというだけで、受診してもいいのでしょうか?
もちろん大丈夫です。
体は、自分自身のものです。あなたがつらい時に利用してください。
どんな診察を受けるの?
精神科の初診は
問診表の記入(病歴や服用薬など)
問診(医師に状況を伝え、診断してもらう)
治療方針の相談(生活指導も含む)
薬の処方箋を受け取って終了(お薬は必要に応じて)
といった流れが一般的です。
精神科は事前予約が必要なケースが多いので、ネットや電話で予約しておくようにしましょう。
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持ち物は?
他の病院を受診するときと同様に、保険証を忘れないようにしましょう。
お薬手帳や他の病院からの紹介状がある場合、持っていくようにしてください。
ハンカチやタオルなど、持っていると落ち着くものがあれば持参しても構いません。
所要時間は?
初診の場合は、今までの状況などを伺うので、30分〜1時間程度かかるのが一般的です。
時間に余裕を持っていくとよいでしょう。
初診の費用は?
保険適用で3000円程度が相場です。薬代は別途必要になります。
※実際の費用は、病院や症状によって異なります。
うまく話せるか不安…
うまくご自身のことが伝えられるかどうか不安な方は、事前にメモなどにまとめておくと、スムーズに話せるのでおすすめです。
どんな症状で困っているのか
いつ頃から症状が出ているのか
どんなときに症状が強くなるのか
を整理して、医師に話せるようにしておくとよいでしょう。
あまり身構えずに受診しましょう
心の健康診断のつもりで受診してください。
つらい症状でお困りの方は、悪化する前に、ぜひ一度精神科で相談してみましょう。
精神科と聞くと、どうしても身構えてしまう方も多いかと思いますが、実際は他の病院と大きく違う点はありません。
心のつらいことを、医師が相談に乗ってくれる場と考えてください。
精神的面だけではなく、体の異常やそれが精神的な事からくるものなのかなどを確認できます。
▼参考
厚生労働省みんなのメンタルヘルス うつ病 原因発症
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2020-12-28
なんだか体調が悪い…。ストレスのせいかも…。
ストレスが限界に達すると、どのような症状があらわれるのでしょうか。
お医者さんの目線から、「心の症状」と「体の症状」、それぞれ解説してもらいました。
ストレスが限界に達した時に出る症状
ストレスが限界に達すると、脳や自律神経の働きに影響が出て「心の症状」と「体の症状」があらわれます。
ストレスの限界サイン「心の症状」
気分が落ち込む
イライラして、怒りっぽくなる
やる気が出ず、集中できない
何に対しても興味が持てない
ストレスの限界サイン「体の症状」
肩こり
頭痛
腹痛、胃痛
胸が苦しい
息苦しい
だるくて体が動かない
食欲不振、または食欲過剰
下痢、便秘
寒気や冷え
涙が止まらなくなる
不眠、または過眠
過度なストレスを受け続けると脳が正常に働かなくなり、気分が落ち込みやすくなります。
さらに、ストレスは内臓など体全体の調子を整える「自律神経」の乱れを引き起こすため、体の不調の原因にもなります。
ストレスが溜まりすぎると起こる「行動の変化」
浪費が激しくなる
ギャンブルが止まらなくなる
アルコール量が増える
喫煙量が増える
ストレスによって心の調子が不安定になると、お酒を飲む量が増えたり、大胆な行動をとったりする方もいます。
「自分らしくない行動が増えた」という場合も、心の状態に注意したほうがよいでしょう。
ストレス限界サインを感じたら、こう対処しよう
質の良い睡眠をとる
好きな物を食べる
気が合う人と会う
などの方法で、ストレスを発散しましょう。
ストレス対処法① 質の良い睡眠をとる
ストレスの解消には、十分な睡眠が大切です。
質の良い睡眠をとれるよう、就寝前には
ゆっくり入浴する
リラックスを設ける
スマホよりも本を読む
の3つの点を心がけましょう。
湯船にゆっくり入浴する
湯船につかって、ゆっくりと温まりましょう。
時間や体力がないときは、熱めのシャワーを首元に数分当ててください。
入浴が終わったら、冷えないように着替え、水分補給をしましょう。
リラックスタイムを設ける
ゆっくりできる場所に腰を掛けて、気持ちを休めましょう。
好きな音楽やテレビを楽しむのもおすすめです。
スマホよりも雑誌や本を読む
就寝直前はスマホではなく、読書が適しています。
インターネットは情報がどんどん入ってくるため、過度な刺激になってしまいます。
眠気を感じたら、電気を消して早めに入眠しましょう。
ストレス対処法② 好きなものを食べる
好きなものを食べると、ストレスが和らぎます。
※ただし、暴飲暴食は控えてください。
食欲がないときは無理せず、食べられるものを食べましょう。
軽く運動すると、食欲が湧きやすくなります。
反対に、カフェインの強いものはしばらく控えてください。
過度のアルコール摂取も、睡眠の質を低下させる原因となるため、注意しましょう。
ストレス対処法③ 気が合う友人と過ごす
悩みを誰かに相談することも、ストレス解消につながります。
こんなときは病院へ!
なかなか寝つけない
就寝中に何度も目が覚める
いつもより寝すぎてしまう
朝だるくて起きられない
といった場合は、早めに病院で相談しましょう。
何科を受診すればいいの?
心療内科・精神科を受診してみましょう。
初診の際は、下記のことを医師に伝えられるように、まとめておくといいですよ。
今までできていたのに、できなくなったこと
特につらいと感じていること
仕事の内容・職場の人間関係
おかしいと感じる体の症状
メモに書いて持っていくのもおすすめです。
心療内科を探す
心が壊れてしまう前に相談しよう
過度のストレスは、うつ病や自律神経失調症を引き起こす恐れがあります。
頑張りすぎは禁物です。
心療内科や精神科に行くとなると、身構えてしまう方も多いかもしれません。
ですが、メンタルの不調で病院にかかることは、内科で風邪を相談することと大きな違いはありません。
一人で抱え込まずに、病院で相談してみましょう。
▼参考
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス うつ病