「頭が回らず、言葉が出てこないのはなぜ?」
「原因はストレス?」
認知症や適応障害を発症している可能性も。
対処法や何科で受診すべきか医師が解説します。
ストレスがたまっている人や物忘れがひどくなっている人は注意が必要です。
監修者
経歴
平成14年福井医科大学(現福井大学医学部)卒業
岐阜大学高齢科神経内科入局後松波総合病院にて内科研修、
岐阜大学高次救命救急センター出向。
美濃市立美濃病院内科。
東京さくら病院及び同認知症疾患センター勤務の後
令和元年7月かつしかキュアクリニック開業。
「頭が回らない・言葉が出てこない」は病気サイン?
頭が回らない・言葉が出てこないという症状は、
- 心や自律神経が不安定な状態になっている
- 脳に異常が起きている
のいずれかが考えられます。
「私…大丈夫?」疲れて頭が回らないときの対処法
睡眠不足や疲れによって頭が回らず、中々話すことが出てこないときは、一旦様子を見てもいいでしょう。
- 好きなものを食べる
- ゆっくりお湯に浸かる
- 睡眠前に液晶画面(スマートフォン、PC、テレビなど)を見ない
- ゆっくり休む
といった対処を、まずはおすすめします。
様子を見て元に戻るようであれば、心配いりません。
ただし、「なかなか調子が戻らない…」という場合には、医療機関で相談してみましょう。
「脳梗塞」の疑いあり。すぐ病院に行くべき要注意症状
- 会話ができなくなる
- 人の話していることの意味がわからない
- 激しい頭痛
- 体の片のしびれ(手足など)
- めまい、吐き気
- 耳鳴り
- 片手が動かなくて作業が進まない
- 物が二重に見える
上記の症状には脳梗塞が疑われます。
脳梗塞は発症から時間が経てば経つほど、後遺症や命を失うリスクが上がります。
心当たりがある場合は、早急に救急車を呼んでください。
病院は何科に行けばいい?

頭が回らない・言葉が出てこない場合は、脳神経内科を受診しましょう。
まずは脳に異常がないか調べることが大切です。
※脳に異常がなく、精神的ストレスが原因として考えられる方は、心療内科・精神科で治療を行います。
病気が隠れていた場合、悪化すると手術や入院が必要になるケースもあります。
早めの受診を心がけ、治療の負担軽減につなげましょう。
脳神経内科を探す
心療内科を探す
考えられる2つの病気
頭が回らない・言葉が出てこない場合
- 適応障害
- 認知症
などの病気の可能性があります。
病気① 適応障害
ストレスを抱えきれなくなり、行動や感情に様々な障害があらわれる病気です。
頭が回らない状態になり、通常通りの判断ができなくなったり、感情の起伏が激しくなったりします。
適応障害の症状
- 言葉が出てこない
- 何があっても楽しくない
- イライラする、暴力的になる
- 虚しくなる、悪いことばかり考える
- 不安が強くなる
- 緊張が解けない
- 仕事へ行けない
- 暴飲暴食する
適応障害の原因
ストレスが原因で発症します。
具体的なきっかけとしては、地震や台風などの自然災害、慢性的な疲れ、睡眠不足、気温の変化、未来への不安、人間関係などが挙げられます。
どんな人に多い?
- 普段から真面目で、物事に慎重に取り組む人
- ストレスに弱い人
- 神経質、人に物事を相談できない人
どう対処する?
ストレスの原因から離れることが大切です。
仕事が合っていないのであれば、休職も考えましょう。
また、ストレスを与えてくる人とは距離を置いてください。
病院に行く目安
- ストレスが原因となってうまく立ち回れない
- 仕事ができない
- 食やアルコールに依存してしまう
などの症状が数週間〜数ヶ月続いている場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
適応障害が疑われるときは、心療内科・精神科を受診しましょう。
医療機関では、主に認知療法やカウンセリングを行い、ストレスから解放されるようにサポートします。
心療内科を探す
病気② 認知症
脳細胞の破壊や減少で、日常生活を通常通りに送れなくなる進行性の病気です。
頭が回らなくなり、今まで行っていた普通のことも忘れてしまいます。
主な症状
- 言葉が出てこない
- 直前に行っていたことを忘れる
- 人の名前を思い出せない、周りの人のことを忘れる
- 現在の年月日・場所・状況がわからなくなる
- 善悪の区別がつかなくなる
- 徘徊する、幻覚をみる
- 暴言・暴力をふるう
- 眠れなくなる
- うつ病になる
- 排泄障害を起こす
認知症の原因
脳細胞の壊死や減少が原因です。
脳に特殊なタンパク質(アミロイドβ)が溜まってしまい、脳細胞が減って発症すると考えられています。発症には、遺伝や加齢も関係していると言われています。
どんな人に多い?
- 人との交流を避ける人
- 傷つきやすい人
- 女性
- 若年性アルツハイマー型認知症を発症している家族がいる人
どう対処する?
進行を緩やかにする治療薬を使う必要があるので、まずは医療機関を受診してください。
通院と並行して、ご自身では脳の活性化や運動を行いましょう。
患者本人は自覚がないことが多いです。
家族は不安にさせず、きつい叱り方をしないで、感情をむやみに高ぶらせない努力が必要になります。
\自分でできる! 脳を活性化させる運動/
- 早歩きで散歩をする
- 今までやったことのない新しいことにチャレンジする
- ラジオ体操を行う
病院に行く目安
- 物忘れが増えた
- 覚えていないことが多いと人に指摘された
- 物忘れが影響して人間関係や仕事などに支障が出た
などの症状があらわれている場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
病院は何科?
認知症が疑われるときは、脳神経内科を受診しましょう。
医療機関では薬物治療(抗認知症薬・抗精神病薬・漢方薬・抗うつ剤など)を中心に治療していきます。
また、脳を活性化するためにリハビリテーションも行います。
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2022-12-27
「うつ病がなかなか治らない…」
「このまま一生治らなかったらどうしよう…」
府中こころ診療所の院長であり、YouTubeで動画配信も行っている精神科の医師、春日雄一郎先生が、うつ病や適応障害の症状が長引く理由を解説します。
うつ病や適応障害が治らず焦りを感じている方は必見です。
※動画による解説は記事末尾から
うつ病・適応障害が治りにくい4つの原因
うつ病・適応障害がなかなか治らない場合
生活習慣の乱れ
環境がよくない
考え方のクセ
躁うつ病(双極性障害)を発症している
などの原因が考えられます。
原因① 生活習慣の乱れ
昼夜逆転した生活
過度な飲酒
ほとんど家から出ない
上記に当てはまる場合は、うつ病が治りにくくなる可能性があります。
「不規則な生活リズム」「お酒の飲みすぎ」「外出せずほとんど体を動かさない」などの習慣が続くと、心身の調子が悪くなり、うつ病・適応障害の改善の遅れを招きます。
【対処法】一定の生活リズムを習慣化しよう
うつ病や適応障害を改善するためには、「どういう行動習慣を積み重ねていくか」ということが重要です。
睡眠や食事の時間を一定にする
お酒を控える
日中は外出して体を動かす
上記を習慣化して、治療にとってプラスになる行動を積み重ねていきましょう。
生活習慣を整えることで、心身の調子が整いやすくなります。
また、その行動の積み重ねが脳への刺激になり、うつ病や適応障害の改善につながると考えられます。
原因② 環境がよくない
職場に相性のよくない上司がいる
家に居場所がない
子育て・介護などでストレスを感じている
上記のように、職場や家庭の環境がよくない人は、うつ病や適応障害が治りにくくなることがあります。
うつ病・適応障害の症状は、日々の行動だけでなく、環境からも大きな影響を受けます。ストレスの多い環境で過ごす時間が積み重なると、症状の改善が遅れる原因となります。
【対処法】「転職・異動」「支援サービスの利用」を検討しよう
環境がよくないと感じる場合、
転職・異動の相談をする
家族と話し合いをする
自治体のサポート窓口を利用する
といった方法で、環境を変えることが選択肢の一つとなります。
環境の変化には良い面も悪い面もあるため、一概に「環境を変えるべき」というわけではありません。
ただし、「どうしても今の環境と相性が悪い」と感じる場合は、選択肢の一つとして考えてみるといいでしょう。
職場の環境が合わないと感じる場合は、「転職を検討する」「上司や人事部に異動の相談をする」などの方法もあります。
家庭内でストレスを感じている場合は、まずは家族と話し合うことが必要なケースもあります。
子育てや介護などでお悩みの場合は、自治体のサポート窓口を活用してみるのもいいでしょう。
子育てや介護に関するお悩みは、お住まいの自治体の子育て支援センターや、地域包括支援センター※などの機関で相談可能です。
※地域包括支援センターとは
主に自治体が設置する高齢者の健康や生活をサポートする施設。
▼参考
地域包括ケアシステム(厚生労働省)
原因③ 考え方や性格のクセ(完璧主義・人と比べる)
自分を責めてしまう
完璧主義
他人と自分を比べる
上記のような考え方・性格のクセがある人は、うつ病や適応障害の治療が遅れる可能性があります。
「考える」ということも一種の行動です。自責や他人との比較など、自分にダメージを与える思考を繰り返すことも、病気の改善を妨げる行動を積み重ねる行動になります。
【対処法】「前向きになれる考え方」を練習しよう
自分にダメージを与える考え方のクセがある人は、「自分も他人も責めない」「前向きになれることを考える」といったことを意識するといいでしょう。
ただし、考え方が根強いクセになっている場合、すぐには変えにくいこともありますよね。
その場合は、
出てきた考えを真に受けすぎず、なるべく受け流す
否定のクセを薄めて、成功体験を徐々に積み重ねる
この2つを心がけてみてください。これらの思考を積み重ねていくことが、結果として、否定的な考えが出てくる頻度を減らすことに繋がります。
原因④ 躁うつ病(双極性障害)を発症している
抗うつ薬などによる治療を続けていて、生活習慣・環境・考え方などの見直しを行っているにもかかわらず、症状の改善が見られない場合は、躁うつ病(双極性障害)を発症している可能性があります。
躁うつ病ってどんな状態?
躁うつ病とは、気分が高揚して活動的になる「躁状態」と、気分が沈んで意欲がなくなる「うつ状態」を交互に繰り返す状態です。
人によっては、躁状態の症状が軽くて期間が短く、うつ状態が長く続く「双極性障害Ⅱ型」のケースもあり、この場合は一般的なうつ病との区別がつきにくいです。
うつ病と躁うつ病は使う薬が違うので、この見極めができていないと、病気が長引く恐れがあります。
躁うつ病かを判断する4つのヒント
過去を振り返って、躁気味な時期があった
家族に躁うつ病の人がいる
周期的にうつ病を繰り返している
抗うつ薬を使うと躁状態になる傾向がある
躁うつ病かどうかを判断するヒントとして、上記の4つが挙げられます。
「ある時期だけ妙に活動的だった」「ある時期だけ妙にお金を使っていた」など、過去に躁気味な期間があった場合は、躁うつ病である可能性が出てきます。
自分ではわからなくても、『ちょっといつもと違う』『いつもより妙に元気だね』などと、周りの人から言われる時期があったかどうか、ということも参考になります。
また、家族に躁うつ病の人がいると、発症の可能性が少し高くなると言われています。
その他、周期的にうつ病の症状を繰り返す場合や、抗うつ薬を使ったときに躁状態になる傾向がある場合も、躁うつ病を発症している恐れがあると考えられます。
躁うつ病を疑う場合は主治医に相談を
躁うつ病の発症を疑う場合は、早めに主治医に相談しましょう。
うつ病と躁うつ病では、治療に使う薬が違います。そのため、うつ病か躁うつ病かを的確に判断することは、症状を早く改善するために、非常に重要であると考えられています。
▼動画による解説はこちら
※本記事は、チャンネル運営者の許可を得て作成しています。
≪チャンネル紹介≫
こころ診療所チャンネル【精神科医が心療内科・精神科を解説】
府中こころ診療所の院長であり、YouTubeで動画配信も行っている精神科の医師、春日雄一郎先生が、うつ病・適応障害・パニック障害など、こころの不調やその対策について、わかりやすく解説。
こころの不調を抱える方が、少しでも症状を改善するヒントとなるような情報の提供を目指しています。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。