「急に体重が増えた…これは何?」
「ストレスが原因?」
子宮や甲状腺の病気の可能性もあるので、放置は危険です。
何科で受診すればいいのか医師に伺いました。
生理が重い方は注意しましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
なんだか急に太ってきた…これは一体なぜ?
2~3ヶ月のうちに急に太った場合、
- ストレス
- むくみ
- 加齢による代謝能力の低下
といった原因が考えられます。
“急に太る”原因① ストレス
ストレスがたまると、食欲が増し、急な体重増加につながることがあります。
食べることでストレスを発散しがちな人は注意が必要です。
“急に太る”原因② むくみ
塩分摂取が多かったり、体が冷えて血行が悪かったりすると、むくみが生じます。
むくみやすい人の特徴
- 味の濃い料理が好きな人
- インスタント食品や外食の機会が多い人
- 冷え性の人
また、心臓・甲状腺の異常によってむくみが出ることもあります
“急に太る”原因③ 加齢による代謝能力の低下
基礎代謝量は年々下がっていきます。
歳をとれば摂るほど消費エネルギー量が低下し、太りやすくなります。
目安として、40歳以降は太りやすくなる傾向があります。
更年期にはいると…さらに太りやすくなる!
更年期になると、脂肪の燃焼を促す働きがあるエストロゲンの分泌が急激に減ります。これによってさらに“太りやすい体”になります。
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2022-07-08
更年期に入ってから太った !
病院で相談してもいいの…?
「更年期太り」で病院に行く目安をお医者さんに聞きました。
更年期に太りやすくなる仕組みや、診察の流れ、病院での治療法についても解説します。
更年期太りを改善したい方は必読です。
更年期太りで「病院に行ったほうがよい目安」
倦怠感が続いている
動悸・息切れを感じる
体重増加により体が動かしづらくて運動できない
太ってきたことに加えて、上記に心当たりがある方は、一度病院で相談することをおすすめします。
倦怠感や動悸・息切れは、女性ホルモンの急激な減少に伴って現れる症状です。
悪化すると生活に支障をきたす恐れもあります。
また、更年期太りにより体重が急激に増加していくと、「体が重くて運動しづらくなり、さらに太る」という悪循環に陥りやすいです。
この状態は生活習慣病などの病気のリスクを高めます。
▼女性の更年期太りが起こる仕組み
更年期には、脂肪燃焼を促進する働きを持つ「エストロゲン」という女性ホルモンが急激に減少していくため、脂肪がつきやすくなります。
また、エストロゲンが減少すると、食欲を抑制する働きを持つ「レプチン」というホルモンの分泌量も減っていきます。
すると、食べる量の調節がしづらくなり、太りやすくなります。
▼男性の更年期太りが起こる仕組み
男性の場合は、更年期の時期(一般的に40代以降)に男性ホルモンが減少します。
男性ホルモンには筋肉を作る働きがあり、減少すると筋肉量が減って代謝が下がり、脂肪がたまりやすくなります。
さらに、男女ともに加齢に伴って筋肉量が減少していきます。筋肉量が減ると基礎代謝も落ちるので、若い頃に比べて太りやすくなると考えられます。
更年期太りは「何科にいけばいい?」
更年期太りで病院に行く場合、
女性は「婦人科」
男性は「内科」
で相談することをおすすめします。
女性は「婦人科」で相談しよう
女性の更年期による症状一般は、「婦人科」で診療が受けられます。
病院では、更年期を迎え、肥満が進行した旨を説明しましょう。
他にもつらい更年期症状があれば、一緒に相談できます。
医師からすれば、更年期で体重が増えてしまうのはよくある悩みで、生活指導などで対応することもあります。
恥ずかしいことではないので、気軽に相談してくださいね。
男性は「内科」で相談しよう
男性の場合は、「内科」で相談することをおすすめします。
病院では、男性更年期の時期に入ってから体重が増えたことを伝えましょう。
更年期の男性ホルモンの減少により、体重が急激に増えることはよくあることです。
内科の医師は、肥満解消のサポートや、生活習慣病予防に関しての生活改善なども行えます。
気軽に相談してくださいね。
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診察の流れは?
問診
検査
薬の処方(必要な場合)
STEP① 問診
問診で聞かれること
月経の有無(女性の場合)
閉経してどのくらい経ったか(女性の場合)
体重が以前に比べてどれくらい増加したか
治療を受けている病気の有無
服用中の薬
問診により、現在の患者さん自身が自覚している症状や感覚を確認し、病気を探っていきます。
検査の必要性やどのような検査をすべきかについても、問診で見極めます。
STEP② 検査
体重測定
血圧測定
血液検査
体重の推移を見るために、体重測定が行われます。
血圧測定・血液検査は、生活習慣病のリスクの確認や予防のために行います。
STEP③ 薬の処方(必要な場合)
更年期症状がつらい場合は、薬による「ホルモン補充療法」も合わせて行います。
肥満自体の改善のために薬は使用しません。
肥満に対しては、「生活週間の指導」「食生活のサポート」などを行なっていきます。
ホルモン補充を行うと、不安定になっていた女性ホルモンが整うので、気分が悪い・倦怠感などの更年期症状の改善が期待できます。
男性の場合は、男性ホルモン(テストステロン)の補充を行い、症状の改善を図ります。
費用はいくらくらい?
更年期太りで病院を受診した場合の費用は、5,000円程度になることが多いです。
更年期によって引き起こされる症状の治療には、保険が適用されます。
※治療内容によって保険が適用されないこともあるので、事前に医療機関に問い合わせておくことをおすすめします。
あの「エクオール」は処方される?
女性の場合、更年期症状の治療として、女性ホルモンに似た働きをする「エクオール」が処方されることがあります。
エクオールとは?
エクオールとは、大豆・大豆製品に含まれている成分が腸で代謝されることによって生成される物質です。
エクオールの量が多い人は、
更年期症状が出るリスクが低い
肌の乾燥・しわ・たるみが少ない
といった傾向があることがわかっています。
ただし、人によっては、体内でエクオールを作れないこともあります。
そこで、エクオールを直接体に取り込めるサプリメントが開発され、人気を呼んでいます。
エクオールは市販品の購入も可能
エクオールは、必ず処方箋が必要なものではありません。
市販されているものをどなたでも購入できます。
また、薬ではないので、基本的に他の治療との併用が可能です。
ご自身で市販品を購入して服用する場合は、事前に医師に相談しましょう。
病院に行く前にやるとよいこと
更年期太りは、生活習慣を見直すことで改善が期待できます。
まずは、現在食べている量を確認するために、「食事メモ」をつけてみるのがおすすめです。
大雑把でよいので、一日の食事を書き出して、自分がどれだけ食べているか、また自分がどのくらいカロリーを摂取しているのか確認してみましょう。
間食している場合は、その内容も記録してください。
更年期は、女性ホルモン・男性ホルモンや筋肉量の減少により、若い頃と同程度の食事量であっても太りやすくなっています。
現在食べている量を把握しておくと、病院で生活指導を受ける際の参考にもなります。
ただし、受診前に無理に自分であれこれとやる必要はありません。
あまり身構えず、まずは病院に行き、医師に体調や太ってしまう原因を確認してもらうとよいでしょう。
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▼参考
更年期ラボ 病院・クリニックでケア
体重を戻したい「自分でできる対処法」
ストレスが原因で急に太った場合
溜まったストレスを食べること以外で解消することが大切です。
自分に合った解消法を見つけ、ストレスをため込まないようにしましょう。
おすすめの「ストレス解消法」
- 好きな音楽を聞く
- ゆっくりお風呂につかる
- 信頼できる友人と話す
- 20~30分程度のウォーキングなど、軽い運動をする
むくみが原因で急に太った場合
「体を温める」「塩分摂取を控える」といったことを心掛けましょう。
体を温める方法
- 首・手首・足首を服などで温める
- お風呂につかる
- あたたかい飲み物を飲む
体を温めることで、冷えによる血行不良が改善され、むくみの解消につながります。
塩分摂取を控える方法
- 自炊中心の食生活にする
- 出汁や減塩調味料を使い、減塩する
- 香味野菜・スパイス・酸味で、減塩の物足りなさを補う
- 水産・畜産加工品(※)や漬物は控える
- たれや醤油はかけるのではなく、少量つける
- 麺類の汁を残す
塩分の摂取量を減らすことで、体の中に水分を溜め込みにくくなり、むくみの解消につながります。
※水産・畜産加工品…
サーモン、しらす、干物、いくら、ベーコン、ハム など
加齢による代謝能力低下が原因で急に太った場合
運動をして、筋力をつけましょう。
基礎代謝を高めると良いでしょう。
注意!どんどん太るのは“病気サイン”のケースも
どんどん太るのは、
- 子宮筋腫
- 卵巣腫瘍
- 甲状腺機能低下症
といった病気も原因として考えられます。
病気① 子宮筋腫
子宮筋層に良性の腫瘍ができる病気です。
腫瘍が大きくなったり、腹水がたまったりすることで体重が増加します。
今のところはっきりとした原因はわかっていません。
腫瘍の発育には女性ホルモンが関係していると考えられています。
主な症状
- 下腹が出る
- お腹を触った時に固いこぶに触れる
- 生理の出血量が多い
- 生理痛が重い
- 生理の時期以外に出血がある
- 生理の期間が長い(8日以上)
- 貧血を起こしている
- 便秘である
- 腰が痛い
- トイレが近い
どんな人に多い?
30歳以上の女性に多い病気です。
30歳以上の女性のうち、20~30%にみられる病気です。
病院は何科?
子宮筋腫の症状があらわれているときは、婦人科を受診しましょう。
良性の腫瘍なので、命にかかわることはありません。
月経痛が重くなったり、経血が多くなることもあります。
大きくなることがあり、その場合他の臓器を圧迫し、便秘や頻尿、腰痛を引き起こすこともあります。
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病気② 卵巣腫瘍
卵巣の腫瘍が大きくなると、同時に重くなるので体重も増加します。
また、腹水がたまることで、お腹出て太ったように見えます。
症状の経過は、良性か悪性かで変わります。
良性でも腫瘍が破裂したり、茎捻転が起こることもあります。
悪性の場合はステージがあがり、命の危険があります。
主な症状
- お腹が張って苦しい
- 下腹部が痛い
- トイレが近い
- 食欲がない
- お腹を触った時に固いこぶに触れる
どんな人に多い?
50歳代前半~60歳代前半の女性に多い病気です。
特に
- 妊娠・出産経験がない人
- 初経が早い人
- 閉経が遅い人
は排卵回数が多いため、発症しやすいです。
悪性腫瘍は排卵回数が多いと発症リスクが上昇すると考えられています。
病院は何科?
卵巣腫瘍の症状があらわれているときは、婦人科を受診しましょう。
婦人科を探す
病気③ 甲状腺機能低下症
甲状腺機能が低下して代謝が落ちると、むくみが出て体重が増えます。
主な症状
- むくみ
- 声が低くなる
- 皮膚が乾燥する
- 汗・髪の毛が減る
- 寒さに弱くなる
- 便秘になる、お腹が張る
- 忘れっぽくなる
- 肩が凝る
- すぐに眠くなる
- 喋り方がゆっくりになる
- 月経期間が長くなる
- 月経の出血が多くなる
どんな人に多い?
甲状腺機能低下症は、高齢の女性に多いです。
病院は何科?
甲状腺機能低下症の症状があらわれているときは、内分泌内科を受診しましょう。
この病気を放置すると、動脈硬化などを引き起こすことがあります。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2021-01-07
急にお腹が出てきた気がする。これは子宮筋腫のサイン?
子宮筋腫の症状について、お医者さんに聞きました。
お腹の張り以外にも、貧血や便秘の症状がある方は要注意です。
自分の症状のあらわれ方をチェックしてみましょう。
子宮筋腫になると太る?
筋腫は大きくなると同時に重くもなるので、体重が増加する場合があります。
下腹部が出て、太ったように見えることもあります。
他にも、こんな症状があったら要注意
体重の増加とともに、以下の症状がある場合は、子宮筋腫を発症している可能性があります。
過多月経
不正出血
強い月経痛
貧血
頻尿
膀胱の圧迫感
下腹部の張り感
排尿困難
便秘
腰痛 など
子宮筋腫を放置するとどうなる?
放置すると筋腫が大きくなり、ひどい月経痛、貧血、不妊、流産などで日常生活に支障をきたします。
子宮筋腫以外の病気や腫瘍が隠れている可能性もあるので、定期的に検査を受けましょう。
「子宮筋腫かも…」と思ったら早めに病院へ
子宮筋腫の疑いがあるときは、速やかに婦人科を受診しましょう。
初期段階であれば、手術ではなく薬での治療が可能になります。
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婦人科を受診するときは…
初めに問診を受けて、現在の症状を確認します。
その後、必要に応じて内診、超音波検査、MRI検査を行い、診察していきます。
お医者さんに伝えるポイント
月経の状況
自覚症状の有無
貧血の有無
妊娠の状況
服用中の薬
婦人科に行くときの服装は?
スカートなど、脱ぎ履きしやすい服装がおすすめです。
顔色・唇の色・爪の色を確認するので、なるべく薄化粧を心掛けましょう。
生理中でも診てもらえる?
生理中でも受診できます。
ただし、検査によっては避けた方が良い場合もあるので、病院に確認しましょう。
子宮筋腫はどうやって治すの?
子宮筋腫では次の治療法が一般的です。
薬物療法
手術療法
経過観察 など
症状に応じた治療を行います。医師と相談をしながら治療方針を決めていきましょう。
薬物療法
薬を用いて子宮筋腫を小さくし、出血や痛みを軽くします。
筋腫が小さくなっても、治療を止めてしまうと元の大きさに戻ってしまう場合があります。
手術療法
子宮全体を摘出する方法と、筋腫だけを摘出する方法があります。
妊娠を希望する方は筋腫だけを摘出しますが、小さな筋腫が取り残されることがあり、数年後に再発するケースがあります。
経過観察
症状があまりない場合は、定期的に病院を受診し、経過観察をします。
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▼参考
・日本産婦人科学会
・公益財団法人 日本婦人科腫瘍学会