「排卵日を境に体重が増えた…」
「食べ過ぎていないのに、体重が変化するのはなぜ?」
女性ホルモンと体重の関係を医師に伺いました。
解消方法も解説します。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
排卵日を境に体重が増える…なぜ?
排卵日頃を境に、女性ホルモンの「プロゲステロン」が増加するため、体重が増えることがあります。
体重というのは、元々1日の中でも1キロ程度は増えたり減ったりします。これは、人の体の多くが水分でできているせいです。水分を多くとった日は、その分体重も増えます。
ではなぜ「排卵日あたりに体重が増えるのか」それは、女性ホルモンの変化によるものが大きいのです。
「プロゲステロン」が増えると「体重」が増えるの?
プロゲステロンは体に水分をため込みやすくする働きを持っているので、むくみやすくなり体重が増加します。
また、プロゲステロンは腸の働きを弱める作用もあるので、便秘になりやすくなる人もいます。
一方で、生理が始まると女性ホルモンの「エストロゲン」が増えます。
この女性ホルモンは水分を排出する作用があるので、生理がはじまるとむくみが解消され、肌ツヤが良くなります。
女性の体は、ホルモンバランスで調節されている部分が大きいです。
そのため排卵日や生理前後で体重に変化がある女性が多いのです。
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2022-03-31
「なぜか、排卵日が来るとお腹がぽっこりする…。」
「これって何?」
排卵日が来るとお腹がぽっこりする原因を、お医者さんに聞いてみました。
おすすめの食事・運動方法も解説しますので、お腹のぽっこりを解消させたい方は必読です。
なぜ?排卵日がくると「お腹ぽっこり」
排卵日を境に「お腹がぽっこり」とするのは、むくみが原因のケースが多いです。
これは「プロゲステロン」という女性ホルモンの作用によって、水分などが体に溜め込まれている状態です。
特に痛みを感じないのであれば、むくみの可能性が高いので心配いらないと考えられます。
ただし「子宮内膜症」「子宮筋腫」が疑われるケースも
ただし、
お腹が痛い
触ったり押したりすると痛む
といった症状がある場合は、子宮内膜症・子宮筋腫といった病気も疑われます。
特に「生理痛が重い」「生理の出血量が増えた」という方は要注意です。
上記の症状に心当たりがある方には、一度婦人科で相談することをおすすめします。
▼子宮内膜症
「子宮内膜症」とは、生理がある女性に発症する病気です。子宮の内側に存在するはずの子宮内膜などが、子宮の内側以外の場所にできてしまう病気のことです。
「子宮内膜症」は治療をしないとどんどん悪化します。不妊の原因にもなります。
まれに、卵巣に子宮内膜症が生じた場合、がん化することがあります。
▼子宮筋腫
子宮筋腫とは子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍です。
子宮筋腫が大きくなると、周囲の臓器を圧迫することにより頻尿や便秘、腰痛などの症状が出てくることもあります。また、子宮筋腫が大きくなると妊娠しにくくなります。
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排卵日ころのお腹の張りを解消するには?
排卵日の時期の「お腹の張り」は、むくみを改善させることでよくなることが多いです。
そのため、
カリウムを多くとる
こんにゃくを1日250g程度食べる
カフェイン入りの飲み物を飲む
運動で体を動かす
といった対処をおすすめします。
解消法① カリウムを積極的に食べよう!
おすすめの食べ物
カリウムの量
ゴボウ(ゆで)
210mg
エリンギ
340mg
さつまいも
480mg
バナナ
360mg
メロン
350mg
キウイ
300mg
※可食部100g当たりの値を表記しております。
カリウムには、ナトリウムを排出する作用があるため、塩分をとりすぎる傾向がある人におすすめです。
老廃物や水分の排出を促す効果もあり、むくみによる「ぽっこりお腹」の改善が期待できます。
カリウムの摂りすぎには注意!
カリウムはとりすぎると体調不良を起こすので、食べ合わせでカリウムを食べ過ぎないようにしましょう。
成人女性は1日1600mgを目安にカリウムを摂取しましょう。
※元から塩分を取り過ぎないようにしていればカリウムを大量に必要としません。
解消法② こんにゃくを1日250g程度食べよう
こんにゃくは、胃腸の老廃物や有害物質などを排出する働きがあります。
摂取量は1日250g程度がよいとされているので、それを目安として摂取するようにしましょう。
ただし、目安量を超えて大量にこんにゃくを食べないようにしてください。
不溶性食物繊維の大量摂取になり、腸に詰まってしまう恐れがあります。
解消法③ カフェイン入りの飲み物を飲もう
コーヒー
緑茶
などカフェイン入りの飲み物を飲むと、利尿作用で水分の排出が促されてむくみ改善につながります。
ただし、カフェインをとりすぎると吐き気・胃痛・頭痛などを起こすことがあるので、飲み過ぎないようにしてください。
特にエナジードリンクやコーヒーには注意しましょう。コーヒーであれば、1日に3杯程度が目安となります。
解消法④ 運動で体を動かそう
ウォーキング
ジョギング
など、少し息が切れる程度(動きながら話せるくらい)の運動をおすすめします。
運動すると体の代謝が上がって水分排出が促されるため、お腹のぽっこり緩和につながることもあります。
適度に毎日体を動かしていると、代謝がアップしていきます。
血流もよくなるため、腸の動きも活発化して便の排出もスムーズになります。
ただし、体調が優れないときに無理して運動する必要はありません。
生理痛がつらい場合は、ストレッチ・入浴・厚着などで体を温めるとよいでしょう。
これはNG!「お腹ぽっこり」を悪化させてしまう行動
塩分・水分を過剰摂取すると、むくみによってお腹がぽっこりしやすくなります。
特に、
塩・醤油・ドレッシングをかけ過ぎる
スナック菓子を食べる
といった行動は避けるようにしましょう。
▼参考
日本産科婦人科学会 子宮内膜症
体重…ちゃんともとに戻る?
体重増加の原因がホルモンバランスの変化の場合は、生理が始まったら元の体重に戻っていきます。
体重が増えたまま戻らない場合は、ホルモンバランスのせいではなく食べ過ぎ・運動不足が原因だと考えられます。
体重を増やしたくない!キープするには?
排卵日以降に体重が増える方は
- 20~30分の運動する
- 湯船につかる
- 食物繊維・カリウムやカフェインを摂る
- 塩分・糖分を控える
ということを心掛けましょう。
その① 20~30分の運動する
ウォーキングやジョギングなど適度に運動を、20~30分ほど行いましょう。
その② 湯船につかる
シャワーではなく、38~40度ぐらいのお湯に15分ほど浸かりましょう。
入浴を積極的に行い、体を温めて代謝を促しましょう。
その③ 食物繊維・カリウム・カフェインを摂る
食物繊維は体の水分を集めて、便を柔らかくして排出しやすくします。
カリウムやカフェインは水分を排出する効果があるので、積極的に摂りましょう。
排卵日前後にむくみやすくなる・便秘になるという人は、普段から食物繊維の多い食事を意識して、排卵日から生理までの期間に重い便秘にならないようにしましょう。
ただし、カフェインの摂りすぎは、不眠・めまい・不安感など不調が出ることがあります。
健康な成人の場合、コーヒーは1日マグカップで3杯までにしましょう。
食物繊維を多く含む食材 |
オクラ・かぼちゃ・小松菜・きのこ・人参・ごぼう・大根・海藻・果物・玄米・雑穀米 |
カリウムを多く含む食材 |
バナナ・メロン・もも・里芋・さつまいも・じゃがいも・ほうれん草・小松菜・ひじき・わかめ・枝豆 |
その④ 塩分・糖分を控える
塩分や糖分を多く含む食事や間食は、体に余分な水分を溜め込みやすくします。
塩分や糖分を控えて、水分代謝をスムーズにしましょう。
具体的な対処として、
- 味噌汁やスープは具だくさんにしてスープを少なくして食べる
- 白米を控え、玄米や雑穀米を食べる
- 減塩タイプの調味料に変える
- スナック菓子・ジュースを控える
といった方法をおすすめします。
\どうしても食欲が止まらない…!そんなときは/
ナッツ(食塩不使用)やドライフルーツなど歯ごたえのあるものを、少量間食に取り入れましょう。
ゆっくり、しっかり噛みながら食べると満腹感を得やすいです。
自分のサイクルを知って、無理のない体重管理を
女性の場合、女性ホルモンの変化が体を動かしています。
排卵日に体重が増加するのは自然なことなので、あまり気にしすぎないようにしましょう。
排卵日から生理までの期間は、体重の増加に加え、PMSなどの不調が起きやすい時期です。
がむしゃらにダイエットをしても痩せにくいので、ダイエットは休息し、心身の調子を整えましょう。
体のサイクルを覚えると、ダイエットも効率的に行えるようになりますよ。
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2022-12-23
PMSってどんな症状が出るの?
つらいときはどうすればいい?
PMSの主な症状やセルフケア方法など、分かりやすく解説します。
病院へ行く目安も紹介するので、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
PMSとは
PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)とは、月経の3~10日前から始まり、月経が始まると解消する心や体の不調のことです。
PMSが生じる原因は明らかにされていませんが、排卵後に起きる女性ホルモンの分泌量の変化や、ストレスなどが影響しているといわれています。
PMSは誰でもなるの?
日本では、月経のある女性のうち約7~8割が月経前に何らかの症状を抱えています。
また、100人中5人程度の人が「生活に支障が生じるほどつらいPMS」であるといわれています。
思春期の女性でPMSを示す割合が多い、という報告もあります。
PMSになりやすい人は?
真面目
几帳面
我慢しがち
上記に当てはまる人は、PMSになりやすいといわれています。
PMSの主な症状
頭痛
腹痛(下腹部痛)
腰痛
めまい・のぼせ
吐き気
乳房の張り感、痛み
食欲低下
倦怠感
イライラする
など
生理が始まると、「症状が軽くなる」「無くなる」という特徴があります
「PMS」と「PMDD」の違いは?
生理周期に伴う心と体の不調をまとめて、PMS(月経前症候群)と呼びます。
その中でも心の不調が強く出る場合は、PMDD(月経前不快気分障害)と診断されます。
PMSの対処法
1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
お腹を温める
ストレッチや軽い運動をする
PMSの症状には、上記の方法で対処するとよいでしょう。
対処法① 1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
PMSの症状は、ホルモンバランスの乱れにより悪化しやすくなります。
主食・主菜・副菜の揃った食事をとることで、栄養をバランスよく摂取でき、ホルモンバランスが整いやすくなります。
和定食のイメージで食事をとると、栄養バランスが整いやすいです。
食事を抜くと、体のリズムが乱れやすくなり、エネルギー不足になる可能性があるので、きちんと3食とるようにしましょう。
対処法② 1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
ホルモンバランスを整えるためには、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
毎日6~8時間程度、質のよい睡眠をとることを心がけましょう。
ただし、理想の睡眠時間には個人差があります。朝目覚めたときに疲れがとれていて、日中に眠気を感じない状態になるように心がけましょう。
「深い眠り」を得るためのポイント
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
昼寝は15時までに30分以内にする
夜は11時(遅くとも12時)には寝る
夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
就寝の2~3時間前に入浴する
就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
対処法③ お腹を温める
お腹を温めると腹痛の緩和につながります。お腹にカイロをあてて患部を温めるとよいでしょう。
温かい飲み物を飲んで、体の中から温めることもおすすめです。
対処法④ ストレッチや軽い運動をする
PMSによる頭痛には、肩や首回りの筋肉をほぐし、血流をよくすることがおすすめです。
ストレッチや軽い運動で、体をほぐしましょう。
ただし、体を動かしていて、ズキンズキンと血流に合わせて頭痛が起きたら、体を動かすのをやめて楽な姿勢で休みましょう。
病院に行く目安
体や精神面の不調によって「つらい」と感じているときは、医療機関の受診をおすすめします。
特に、
PMSのつらい症状が毎月起こる
日常生活や対人関係に支障が出ている
痛みや倦怠感が重く、仕事や学校を休むことがある
といった場合は、早めの受診をおすすめします。
PMSが悪化すると、脳機能のバランスを崩し、うつ病を発症するケースもあります。
心当たりのある方は、放置しないようにしましょう。
PMSの治療法
PMSで受診した場合、病院では飲み薬・低用量ピル・漢方薬などを用いて治療をします。
低用量ピルを使うと、生理前と後のホルモンの量の差を軽減できるため、PMSの症状がかなり楽になります。
ただし、妊娠を望んでいる場合には、低用量ピルが使用できないため、生活指導を中心とした治療になります。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。