大人の「中耳炎による発熱」の対処法を、お医者さんに聞きました。
「発熱はいつまで続くの?」
「熱が上がったり下がったりするのはなぜ?」
といった疑問にもお答えします。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
「大人の中耳炎」を早く治すために
基本的に、「中耳炎で発熱している」場合は、耳鼻いんこう科で治療を受けましょう。
大人の場合、重症化すると症状が数ヶ月続くことがあります。
その上で、早く治すためには
- こまめに鼻をかむ
- 十分な睡眠をとって免疫力を高める
といった点を心がけましょう。
特に鼻水には細菌がいるため、鼻水が溜まった状態では、耳に細菌が侵入しやすくなります。
また、耳に水が入ったり、体が温まったりすると耳の痛みが悪化するリスクがあります。
中耳炎がひどいときは、耳に水が入らないよう気をつけ、入浴はシャワーで済ませるなどしましょう。
仕事は休んだ方がいい?
中耳炎は他の人に感染するわけではないため、体に負担がかからないのであれば、仕事に行っても良いでしょう。しかし、発熱して体がつらいとき場合は、2~3日ほど休んで熱が下がるのを待ちましょう。
一時的な対処として「市販薬」を使うのはOK
症状
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市販薬の例
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「発熱」と「耳の痛み」
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などの解熱鎮痛薬
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「発熱」+「鼻水・咳」
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などの風邪薬
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※風邪薬と解熱鎮痛薬をあわせて飲まないようにしてください。
(風邪薬には解熱鎮痛の成分も入っていることが多いため)。
症状がつらいときは、上記を参考に市販薬を服用してみましょう。
ただし、あくまでも「受診するまでの応急処置」です。できるだけ早めに耳鼻いんこう科で診察を受けてください。
「大人の中耳炎の発熱」早めに病院に行くべき理由
大人の中耳炎は重症化するケースもあるため、自己判断せずに早めに受診することをおすすめします。
中耳炎が疑われる症状がある場合は、まず耳鼻いんこう科へ受診しましょう。
治療せずに放置すると、中耳の部分に「浸出液」という液体が溜まってしまうことがあります。この状態になると、耳の聞こえが悪くなったり、治療に何年もかかったりするリスクがあります。
中耳炎は、大人の場合はなかなか症状が良くならない傾向があるため、早期治療で慢性化させないことが大切です。
症状が消えても油断は禁物!
熱や耳の痛みなどの症状がなくなっても、中耳炎が完全によくなったとは限りません。
慢性化したり再発したりするリスクがあるため、症状が落ち着いた場合も一度診察を受けるようにしましょう。
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中耳炎による発熱は、いつまで続く?
適切な治療を受ければ、2~3日、長くても1週間ほどで熱は治まるでしょう。
熱が上がったり下がったりするのはなぜ?
- 仕事や学業などの疲れで「抵抗力が低下している」
- 鼓膜の奥のほうにまで「膿が溜まっている」
といった原因によって、熱が上がったり下がったりすることがあります。
膿が鼓膜の奥のほうにまで溜まっている場合、「鼓膜を切開する手術」が必要になることもあります。
病院では、どんな治療を受けるの?
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治療例
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発熱・痛みがある
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「鎮静剤」や「抗菌薬」などの処方
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鼻水の症状を伴う
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(鼻水がたまると症状が悪くなるため)大人では「点鼻薬」や「鼻閉改善薬」、「抗ヒスタミン剤」で治療
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鼓膜に膿が溜まっている
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鼓膜を切開して溜まった膿を出す
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完治するまでにどれくらいかかる?
熱や耳の痛みなどの症状自体は、2~3日で治まります。
ただし、重症の場合には1ヶ月~4ヶ月ほどかかると言われています。
重症の場合、鼓膜の奥に膿が残ってしまうことが多く、それがぶり返す原因となるため、完全に膿を取り除く必要があります。
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2022-11-30
耳の中にかさぶたができたけど、どうすればいい?
かさぶたが治らなくて気になる…。
かさぶたができる原因をお医者さんに聞いてみました。
「かさぶたを剥いでしまったけど、大丈夫?」「痛みや血がある時は病院に行った方がいい?」といった疑問にもお答えします。
なぜ?耳の中に「かさぶた」ができる原因
耳の中は、皮膚が薄いため、傷がつきやすいです。
そのため、
強く耳掃除をして傷つけた
パーマ液などの薬品の刺激
お風呂や水泳などで耳に水が入る
といった原因で、皮膚が傷ついて出血し、かさぶたができてしまいます。
また、耳かきや補聴器、イヤホンなどで、耳垢を耳の奥に押し込んでしまうことが原因になるケースもあります。
耳の奥に溜まった耳垢は、お風呂などで耳に入った水を保持しやすく、耳の中の皮膚がふやけます。その結果、傷つきやすくなって出血のリスクが高まります。
耳の中にかさぶたができやすい人
毎日耳かきをする
水泳などを習慣的にしており、耳に水が入る頻度が高い
イヤホンや補聴器を日常的に使用している
本来、耳の中には自浄作用があり、耳垢は自然に耳の外側へ排出されます。
しかし、毎日耳かきをしていると、この自浄作用を妨害して、外耳道を傷つける可能性が高まります。
また、イヤホンや補聴器を長期間使用していると耳の中が蒸れやすくなるので、注意が必要です。
耳の中のかさぶたは自然治癒する?
耳のかさぶたは、軽度であれば治療しなくても2〜3日ほどで自然に治ります。
ただし…
耳からニオイのある液が垂れてくる
かゆみが治らない
音が聞こえにくい
耳から血が出る
上記のような症状がある場合は、「耳の病気」になっている可能性があります。
耳の病気は早めに治療することが重要です。早急に病院に行きましょう。
耳鼻いんこう科を受診してください。
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かさぶたを剥がすのはNG!
かさぶたを剥がすと傷口が大きくなり、回復が遅くなってしまうため、かさぶたは剥がさないようにしましょう。
かさぶたには、傷口を乾燥や刺激から保護する役割があります。
傷口が治癒する過程でかゆみが出ることがあります。ただし、搔いてしまってはよくありません。
かさぶたを剥ぐ行為を繰り返していると、外耳道真菌症や外耳炎へと症状が進行する可能性もあります。
市販薬は使ってもいい?
基本的には、耳の中にできたかさぶたに薬を塗る必要はありません。
しかし、かゆみが強く出る場合は、耳の中を掻きむしってしまい、症状が悪化することがあります。
その場合は、市販薬で対処してもよいでしょう。
耳の中に使用する薬は、
点耳タイプの薬
皮膚に塗るタイプの薬
の2種類があります。
市販薬① 点耳タイプの薬
点耳タイプは、耳の中に薬液を入れるので耳の奥の痒みにも対応できます。
現在、市販薬では「パピナリン」が、かゆみ止めの点耳薬として日本で唯一承認されています。
綿棒が8本、スポイトが1本付属しており、症状によって使い分けることが可能です。
鎮痛成分と殺菌成分が配合されており、かゆみだけでなく痛みや耳漏などの症状も緩和します。
市販薬② 皮膚に塗るタイプの薬
塗るタイプの市販薬の「メンソレータムメディックE」は、綿棒を使って耳の中の皮膚に塗ることが可能です。
かゆみ止めと殺菌成分に加え、炎症を抑えるステロイドも配合されています。そのため、炎症を起こしている場合にも対応できます。
かゆみを抑える市販薬を選びたいときは…
かゆみを抑えるためには、抗ヒスタミン成分とステロイドの成分が入ったものを選ぶとよいでしょう。
市販薬の例
ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン成分配合)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(ステロイド外用剤)
抗ヒスタミン成分は、ステロイドと比べると炎症を抑える効果が少ないです。
そのため、赤くなっていたり、かゆみが強かったりする場合は、ステロイドが配合されているものを選んだ方がいいでしょう。
※市販薬は、薬剤師に相談してから使用するようにしましょう。
「臭い」「出血と激しい痛み」を伴う場合はすぐ病院へ!
耳が「臭い」場合は…
耳の中のかさぶたができて臭い場合や、臭い液が出ている場合は、患部が膿んでいる可能性があります。
ニオイのあるかさぶたを放置すると、痛みが強くなってしまう恐れや、「耳だれ」や「難聴」にまで症状が進行することもあります。
治療が難しくなる可能性もあるため、早めに耳鼻いんこう科で受診しましょう。
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「出血と激しい痛み」がある場合は…
少量の出血があり、激しい痛みがある場合は、鼓膜が破れている可能性があります。
鼓膜が破れても多くの場合、自然治癒しますが、手術しなければならないケースもあります。
また、「ニオイを伴う出血」や「耳だれが混ざった血液」が出る場合は、外耳道炎や中耳炎など耳の病気を発症している可能性があります。
上記の症状が出ている場合には、耳鼻いんこう科で受診をしましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
耳掃除と外耳炎,新潟市医師会
外耳道湿疹,徳島県医師会
マラセチア属真菌による二次感染例を発見,帝京大学
パピナリン,原沢製薬工業株式会社
メンソレータムメディクイックE,ロート製薬株式会社
この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。
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2022-05-31
中耳炎になったときの「寝る向き」について、お医者さんに聞いてみました。
「耳が痛くて眠れないときの対処法は?」
「耳鼻いんこう科に行くタイミングは?」
といった疑問にもわかりやすくお答えします。
中耳炎になったら、寝る向きはどうすればいい?
症状
寝る向き
耳から浸出液が出ている
浸出液が出ている耳を下に向けて寝ましょう。
浸出液を排出すると耳の中で液が固まるのを防ぐことができます。
また、浸出液を出してしまった方が、中耳炎がより早く治まります
耳が痛い・耳が腫れている
中耳炎になっている方を上に向ける方が、患部を圧迫しないので楽になることが多いです。
滲出液がでている場合は、耳に滲出液を溜めないように、中耳炎になっている方を下にしましょう。
滲出液がでておらず耳が痛い場合は、中耳炎になっている方を上にすると痛みが和らぐことがあります。
※浸出液とは:中耳炎になると出てくる「透明・やや黄色い液体」のことです。さらさらのタイプ・粘っこいタイプがあります。
耳が痛くて眠れないときの対処法
痛みで眠れないときは、鎮痛剤を使用すると痛みがだいぶ楽になります。
ただし、あくまでも「一時的な対処」として使用してください。
中耳炎を放置すると難聴を引き起こす場合もあります。
悪化のリスクを防ぐためには、耳鼻いんこう科での適切な処置が必要です。
病院に行くタイミングは?
中耳炎には抗生剤を使った治療が必要です。
そのため、基本的に中耳炎を発症したら、耳鼻いんこう科で治療を受ける必要があります。
特に「症状が出てからまだ一度も医療機関に行っていない」という場合は、早めに受診しましょう。
早めに治療を受ければ、お薬の服用のみで症状が快方に向かいます。
しかし症状が進行していると、鼓膜の切開などの処置が必要になるケースもあります。
中耳炎が慢性化したり、悪化して難聴になったりするリスクを避けるためにも、放置しないようにしてください。
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どんな治療を受けるの?
「鎮痛剤」「抗生剤」を処方し、痛みを楽にする治療を行います。
浸出液や膿が多い場合は、吸い取ったり切開をしたりして、排出する治療も行います。通常、膿を出すと痛みは引いていきます。
早く治すために心がけること
中耳炎を早く治したい方は、医師の指示通りに通院してください。
また、風邪で鼻水がひどいときは「こまめに鼻をかむ」ことで中耳炎の悪化を予防することができます。
中耳炎は、細菌・ウイルスが耳に回ることで発症するので、鼻水をすする行為は避けてください。
仕事は休んだ方がいい?
人にうつる病気ではないので、必ずしも休みを取る必要はありません。
ただし、体調が思わしくないときは安静にしましょう。
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