生理前になると気分が落ち込む…。
これってPMDD?
「PMDDになりやすい人の特徴」をお医者さんに聞きました。
セルフチェックリストで、症状に心当たりがないか確認してみましょう。
悪化させないためのセルフケアや、病院を受診する目安も解説します。
監修者
経歴
福島県立医科大学卒業
「働く人を支える」薬に依存しない医療を展開する「BESLI CLINIC」を2014年に協同創設、2030年を基準に医療現場から社会を支える医療経営を実践しています。
産業医視点からビジネスマン・ビジネスウーマンを支えております。生薬ベースの漢方内科での経験を活かし、腹診を含めた四診から和漢・井穴刺絡などの東洋医学を扱い、ホルモン、生活習慣をベースに身体から心にアプローチする診療を担当。米国マウントサイナイ大学病院へ留学、ハーバード大学TMSコースを修了。TMSをクリニックへ導入、日本人に合わせたTMSの技術指導、統括を行っています。
PMDDになりやすい人の特徴
- 責任感が強い
- 自分に厳しい
- 几帳面
- 気配り上手
- 頼まれると断れない
- 誠実な性格
- 生理前に過食する
- ストレスが多い
- 喫煙習慣がある
上記のチェック項目に4つ以上当てはまる場合は、PMDDになりやすいと考えられています。
※ただし、上記の特徴を持つ人が必ずPMDDを発症するわけではありません。
PMDDをセルフチェックで診断してみよう
- イライラする・怒りっぽくなる
- 気分の落ち込みが強くなる
- 突然悲しくなったり、涙もろくなったりする
- 情緒不安定(批判に対する感受性が高まる)
- 劣等感が強くなる
- 集中力が低下する
- 強い不安や緊張を感じる
- 食べすぎてしまう
PMDDでは、生理前に上記のような症状が出て、生理後に症状が落ち着きます。
5つ以上当てはまる場合は、要注意と考えられます。
PMDDの症状がひどくなると…
PMDDがひどくなると、
- 強い落ち込みで外出ができない
- 焦燥感が強くなり、近しい人に当たってしまう
など、日常生活に支障をきたしたり、人間関係が壊れたりする恐れが出てきます。
PMDDかも…普段の生活で意識したい6つのポイント
- 1日3食、主菜・副菜・主食が揃った食事をとる
- 「トリプトファン」を多く含む食品を摂取する
- カフェインの摂取を控える
- 飲酒・喫煙を控える
- 7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
- ウォーキングなどの「続けやすい有酸素運動」を行う
PMDDが疑われる場合は、普段から上記のことを意識して生活してみましょう。
これらを習慣化することによって、ある程度症状が和らぐ可能性があります。
ポイント① 1日3食、主菜・副菜・主食が揃った食事をとる
1日3食、主菜・副菜・主食の揃った、栄養バランスのよい食事をとりましょう。
「和定食」のイメージです。
生活リズムを乱さないために、できるだけ決まった時間に食事をとるようにしてください。
欠食して栄養不足になったり、栄養バランスが偏ったりすると、心身の不調が現れやすくなります。
ポイント➁ 「トリプトファン」を多く含む食品を摂取する
アミノ酸の一種である「トリプトファン」を多く含む食品を積極的に摂取しましょう。
トリプトファンは、気分を安定化する「セロトニン」の原料となるので、PMDDの悪化予防につながると考えられています。
トリプトファンを多く含む食品
- 納豆・豆腐・味噌などの大豆製品
- チーズ・ヨーグルト・牛乳などの乳製品
- ごま
- 卵
- 鶏肉
- 魚類
- 米
- バナナ
など
トリプトファンが欠乏すると、甘いものが食べたくなることがあります。
甘いものが食べたくなったときには、意識的に高トリプトファンの食事をとりましょう。
ポイント③ カフェインの摂取を控える
カフェインの過剰摂取は、PMDDを悪化させる原因になると考えられています。
コーヒー・紅茶・エナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物は、できるだけ控えるようにしましょう。
特に夕方から寝る前の時間帯は、カフェインの摂取を控えましょう
睡眠の質を下げてしまう可能性があります。
「午前中に1回」など、飲む時間帯や回数を決めておくとよいでしょう。
ポイント④ 飲酒・喫煙を控える
飲酒や喫煙は、PMMDの頻度を4倍程度引き上げると考えられているため、できるだけ控えるようにしてください。
喫煙の習慣がある人は、禁煙することをおすすめします。
飲酒は多くても、1日1~2杯を目安にして、休肝日を作るようにしましょう。
ポイント⑤ 7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
睡眠が不足すると、心身に不調をきたしやすくなります。
1日7~8時間程度(※)の質のよい睡眠をとりましょう。
※必要な睡眠時間には個人差があります。
「質のよい睡眠」を得るためのポイント
- 昼寝する場合は15時までに30分以内にする
- 夜は11時(遅くとも12時)には寝る
- 夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
- 夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
- 飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
- 就寝の2~3時間前に入浴する
- 就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
ポイント⑥ ウォーキングなどの「続けやすい有酸素運動」を行う
週に3~5日程度、1回30分を目安に、有酸素運動を行いましょう。
ウォーキング・サイクリング・ヨガなど、続けやすい運動を行ってください。
運動で代謝がよくなると、心の不調も改善されやすくなります。
特に夕方に運動するのがおすすめです。
夕方に体温が上がることで、夜の睡眠の質が高まります。
運動する時間を作るのが難しい場合は、
- 一駅手前で降りて歩く
- エレベーターやエスカレーターを使わない
- テレビを見ている間にスクワットする
など、日常生活の中で、無理のない範囲で行えることから始めてみてください。
【体験談】これでPMDDを乗り越えた!
婦人科の病院に相談して、低用量ピルを内服することで乗り越えました。ホルモンバランスが安定すると、気分も落ち着きました。(30代女性)
イライラすることが多かったので、不快に感じる人とは距離を置くようにしました。仕事も無理をしないようにしました。(40代女性)
ネットで調べたところ、低容量ピルが良いという記事を見つけて婦人科へ相談しました。ピルの服用で乗り越えることができました。(40代女性)
PMDDでつらいときは、病院で相談しよう
「生理前のイライラ・不安感・気持ちの落ち込み」がつらいときは、一度病院を受診することをおすすめします。
PMDDが悪化すると、仕事や人間関係に支障をきたすこともあります。
つらいときは我慢せず、医師に相談してみましょう。
病院は何科で受診すればいい?
PMDDは心の病気であるため、「精神科」での受診をおすすめします。
※ホルモンバランスの乱れによって体の不調を伴う場合は、並行して「婦人科」での治療が必要になることもあります。
精神科を探す
婦人科を探す
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2022-07-01
生理前になると、いつも気持ちが落ちこんでつらい…
婦人科と精神科のどっちを受診すべき?
「PMDDの治療に適した診療科」をお医者さんに聞きました。
受診の目安となる症状やPMDDの治療方法についても解説します。
生理前の心の不調に悩んでいる方は要チェックです。
PMDDの治療は、婦人科?精神科?
PMDDは心の病気であるため、「精神科」での受診をおすすめします。
なお、ホルモンバランスの乱れによって体の不調を伴う場合は、並行して婦人科での治療が必要になることもあります。
PMDDとは…
PMDDとは、生理の1週間程前から現れる「心の不調」を指します。
不安感が強くなり、何もできなくなる
気分が落ち込んでしまう
イライラすることが長引き、自分では気分を変えられない
すぐに怒ってしまい生活に支障が出ている
といった症状が出るケースが多いです。
「心の不調が起こる時期」と「月経周期」が重なることが、何度も繰り返されている場合、PMDDの疑いが強くなります。
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初診では、どんなことを聞かれる?
つらいと感じる症状
いつから症状があるか(何ヶ月前・何歳の頃からなど)
生理が終わるにつれて症状が軽くなるか
血縁者に精神科・心療内科に通院している人がいるか(わかる範囲で)
現在服用している薬・もしくは服用していた薬
治療内容の希望
精神科の初診では、上記の点について尋ねられることが多いです。
PMDDの場合、特に「生理が終わる頃に症状が軽くなるか」が診断のポイントとなります。
心配な方は、受診前に質問への答えを準備しておくと安心です。メモにまとめておくといいでしょう。
「うつ病」や「パニック障害」と診断されるケースも
心の不調が、生理前以外の時期にも現れている場合、「うつ病」や「パニック障害」と診断されるケースもあります。
PMDDの診断があった場合は、女性ホルモン剤などを使って、ホルモンバランスを整えていきます。
うつ病・パニック障害と診断されれば、女性ホルモン剤を使うことはほとんどありません。
PMDDの治療は何をする?
PMDDの症状がある場合は、
薬を使った治療
生活習慣の見直し
カウンセリング(認知行動療法)
TMS治療(※)
などの方法で、症状の改善を図ります。
(※)磁気を用いて脳の血流を調整する治療法
治療① 薬を使った治療
女性ホルモンをコントロールする必要がある方には、「ピル」や「漢方薬」を処方します。
精神的な症状がつらい方には、「抗うつ薬」や「気分安定薬」などが処方されることがあります。
どの薬を使用するかは、医師が診断をして決めていきます。
症状の程度によりますが、薬をあまり使用したくない場合は、別の治療を選択することも可能です。
ただし、医師との話し合いが必要です。
「費用」の目安
1回あたり5,000〜8,000円程度。
※保険適用となるケースが多いです。上記金額は、保険適用した場合~自由診療の目安になります。
「治療期間」の目安
3ヶ月~半年程度の通院が一般的。
※症状の重さによって異なります。
治療② 生活習慣の指導
女性ホルモンの変動によるPMDDの症状は、
起床時間・就寝時間を一定にする
ミネラルが豊富な「バランスの良い食事」をとる
「ウォーキング」や「ストレッチ」を日課にする
など、生活習慣を見直すことで改善されることがあります。
症状が軽い方・薬を使用したくない方は、生活指導が中心になることが多いです。
また、薬の処方と組み合わせて行われる場合もあります。
「費用」の目安
1回あたり3,000〜8,000円程度。
※保険適用かどうかは、指導する内容や医療機関によって異なります。
「治療期間」の目安
3ヶ月~半年程度の通院が一般的。
※症状の重さによって異なります。
治療③ カウンセリング(認知行動療法)
患者さんのお話を聞き、「行動パターン」や「障害にぶつかった際の気持ち」を具体化していく治療方法です。
普段の考え方・行動を少しずつ変えていき、心のストレスを軽くすることを目指します。
薬に頼りたくない
人間関係に悩んでいる
思考パターンがネガティブになりやすい
といった方は、カウンセリングを中心に治療する場合もあります。
「費用」の目安
1回あたり5,000〜20,000円程度。
※自由診療が一般的です。
「治療期間」の目安
3~10回程度の通院が必要。
※カウンセリングを中心に行う場合の目安です。
治療④ TMS治療
TMS治療とは、磁気を用いて脳の特定の部位に働きかける治療です。
脳の血流を調整し、PMDDの不安感・抑うつ状態の改善を図ります。
薬による気持ち悪さや集中力低下が心配
不妊治療を行っている
授乳中
小さな子どもがいて、薬を家に置くのが不安
といった方に適した治療です。
不妊治療で懸念される「抗うつ薬による奇形」などの心配もありません。
また、薬以上に効果があるといわれています。
「費用」の目安
5,000〜20,000円程度
※PMDDの治療の場合は、自由診療となります。
「治療期間」の目安
20~30回程度の通院が必要になる。
※10回程度から効果が出ることが多いです。
精神科に行くのは不安…大丈夫?
精神科で治療を受けることで、「気持ちが楽になった」と感じる方も多くいます。
最初は不安かもしれませんが、気軽に相談してみることをおすすめします。
月経に伴う症状は個人差が大きいものです。
例えば、月経痛も全く痛みを感じない人もいれば、動けないほど重い痛みに悩まされる人もいますよね。
特に精神的な症状がぐっと重く出てしまうのが、今回ご紹介してきた「PMDD」です。
PMDDの症状が重い方は、生理前の「不安感」や「イライラ」で、人間関係・仕事に支障が出やすくなります。
PMDDは、「薬の服用」や「生活習慣の見直し」で改善を図れる病気です。
困ったときは我慢せず、精神科で治療を受けてみましょう。
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▼参考
大塚製薬 PMSとPMDDの違い
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2022-08-26
PMDDで障害者手帳はもらえるの?
診断書は必要?
PMDDで「障害者手帳」がもらえるかどうか、お医者さんに聞きました。
受け取れる障害者手帳の種類や、必要な条件ついても解説します。
PMDDで「障害者手帳」はもらえるの?
PMDDの症状がある方で、
朝起き上がることができない
イライラが止まらず場所を問わず泣いてしまう、
心の不調のせいで仕事・家事が手に付かない
などの影響が出ている場合は、「障害者手帳」を取得できることがあります。
PMDDになると、通常の「生理前の不安定な気分」を逸脱するほどの重い症状により、日常生活を送れなくなってしまう人もいます。
このような症状がある場合は、精神疾患の一つとして考えられ、障害者手帳の発行を行います。
ただし、PMDDの症状が軽い場合は、障害者手帳が発行されないケースもあります。
診断書は必要?
「障害者手帳」を取得するには、基本的に、各都道府県指定の医師による診断書が必要です。PMDDの診断書は、「精神科」で発行されます。
必要な書類の詳細は、お住まいの自治体の役所に問い合わせましょう。
手帳はいつもらえる?
障害者手帳を取得するには、最低でも初診より6ヶ月間の診療が必要です。
初診の段階では発行することはできません。
もらえる障害者手帳の種類は?
PMDDの場合は、「精神障害者保健福祉手帳」が交付されます。
障害の程度に応じて1級から3級まであります。
2年ごとの更新が必要です。
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、以下のようなサービスを受けられるようになります。
※障害の等級により、受けられるサービスは変わってきます。
▼全国一律で受けられるサービス
所得税・住民税の控除
相続税の控除
NHK受信料の減免
自動車税・自動車取得税の軽減
など
▼地域・事業者によって受けられる場合があるサービス
鉄道・バス・タクシー等の運賃割引
携帯電話料金の割引
上下水道料金の割引
心身障害者医療費助成
公共施設の入場料等の割引
など
また、一定の規模以上の会社には、「障害者の雇用枠」があります。
精神障害者保健福祉手帳を持っていると、その枠を使って仕事に就けるようになります。
精神障害者保健福祉手帳を持つことのデメリットは?
基本的にはデメリットはありません。
強いて言うなら、2年に1回更新しなければいけないという点を、デメリットに感じる人はいるかもしれません。
手帳をもらうのに費用はかかる?
精神障害者保健福祉手帳の申請自体には費用がかかりません
しかし、診断を受けるための「通院費用」や「診断書の費用」、「証明書に使われる写真」などは、患者さんの負担となります。
PMDDなどによる精神的病気と診断された場合、治療は基本的に保険適用です。
▼かかる費用の目安
診断書の発行
5,000円〜20,000円程度
診療費
1回につき3,000円〜5,000円程度
診断書の費用・診療費は、医療機関によって異なります。
事前に確認しておきましょう。
診療費は、薬の処方によっても変わってきます。
通院回数は、月2回程度の人が多いです。
精神障害者保健福祉手帳を取得するには、初診日から6ヶ月以上経過する必要があるため、通院費用もその分だけかかることになります。
つらい症状がある方は、まずは病院で相談してみよう
PMDDは、悪化すると患者さんの命に危険が及ぶ恐れがある、決してあなどれない病気です。
障碍者手帳が必要な状態なのか医師に判断をあおぐためにも、まずは相談してみることをおすすめします。
ご家族やパートナーの方も、身近な女性が「最近様子が変わった」などの変化があれば、見過ごさないようにしてください。
精神科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
大塚製薬 PMSラボ
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。