「左肋骨の下が痛い…これは婦人科の病気?」
“痛みの原因”をお医者さんが解説します。
生理周期に伴う症状は、子宮内膜症や子宮筋腫を疑う必要があります。
また、尿路感染症や大腸がんといった病気にも注意しましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
左肋骨の下が痛い…婦人科の病気サインって本当?
卵巣・子宮の病気によって左肋骨の下が痛むことも、稀にあります。
ただし、通常は婦人科の病気以外で起きているケースが多いです。
婦人科以外の「左肋骨の下が痛い」原因として多いのは、肋間神経痛、骨折、気胸などです。
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胸や背中に激痛が走ることがある…。
肋間神経痛と言われたけど、どんな症状なのかよくわからない…。
そんな方のために、肋間神経痛について分かりやすくまとめました。
「治療法」や「予防につながる生活習慣」も紹介するので、肋間神経痛を改善したい人は必読です。
肋間神経痛とは
肋間神経痛とは、肋骨の間を走る「肋間神経」が、打撲などの外傷や帯状疱疹によって損傷したり、何らかの要因で圧迫されたりすることで、痛みが起こる状態です。
どんな症状?肋間神経痛セルフチェック
押すと痛みが悪化する
強い痛み(激痛)
せき、くしゃみ、深呼吸、少しの体勢変化などで痛みが悪化する
片側のみに痛むことが多い
肋骨に沿うように痛む
肋間神経痛の「原因」
骨折
腫瘍
椎間板ヘルニア
変形性脊椎症
帯状疱疹
などによって神経が傷ついたり、圧迫されたりすると発症します。
肋骨を骨折した人の場合、神経損傷によって発症するケースもあります。
肋間神経痛に「なりやすい人」
激しいせきが長期間続いた
脊髄神経が圧迫された(骨折・打撲・腫瘍・椎間板ヘルニア等)
肋骨神経が圧迫された(背骨が曲がる等)
帯状疱疹ウイルスに感染している(後遺症)
内臓の病気を患っている
上記がきっかけで、肋間神経痛を発症することがあります。
肋間神経痛になったら「してはいけないこと」
体を冷やす
重いものを持つ
「猫背」や「背中をそらす姿勢」
などは避けてください。
肋間神経痛は、体を冷やしたり、重いものを持って脊椎に負担をかけたりすると、痛みが強くなることが多いです。
また、体の歪みがあると痛みを発症しやすいので、正しい姿勢での生活を送りましょう。
肋間神経痛の「治し方」
「消炎鎮痛剤」や「湿布」の処方が、一般的な治療法です。
これらの治療と並行して、運動療法やリハビリが行われることもあります。
続発性の場合には、服薬治療、患部固定、手術等、それぞれの症状に適した治療が行われます。
予防方法は?
15分に一回程度体を動かす
ウォーキングなどの適度な運動を継続する
日頃からストレスを抱え込み過ぎない
肋骨神痛を予防するには、上記のような対策を日頃から意識してみましょう。
病院に行く目安
痛みが2~3日続いている
痛みが強い
といった場合には、隠れた病気の可能性があります。
腫瘍や帯状疱疹が原因の場合、治療しなければ痛みは治りません。
また、膵炎や心筋梗塞など、命に関わる病気も疑われるため、放置は危険です。
痛みが続くときは医療機関を受診し、原因を調べてもらいましょう。
病院は何科に行けばいい?
肋間神経痛がずっと痛いときは、まず整形外科で相談してみましょう。
ただし、帯状疱疹が疑われるときは、皮膚科を受診してください。
また、膵炎など内臓の病気が疑われるときは、内科を受診しましょう。
肋間神経痛を放っておくとどうなるの?
痛みをそのままにしていると、脳にその記憶が刻まれてしまい、痛みに過敏になってしまうことがあります。
これにより、余計に強く痛みを感じてしまう人もいます。
長引く痛みは放置せず、早めに受診して治療を受けましょう。
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ズキズキ痛むのは「婦人科の病気の可能性あり」
卵巣や子宮に腫れ・炎症がある場合、じんじん、ズキズキとした痛みを感じます。
「子宮内膜症」の場合は、生理のたびに痛みが増し、徐々に我慢できないほどの痛みになっていくこともあります。
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子宮内膜症ってどんな病気?
よくある初期症状は?
子宮内膜症についてわかりやすく解説します。
病院へ行く目安も紹介するので、心当たりのある症状がないかチェックしましょう。
子宮内膜症ってどんな病気?
子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う膜(子宮内膜)が、子宮以外の部分で増えてしまう病気です。
通常であれば、子宮内膜は生理のたびに体の外へ排出されます。
しかし、子宮内膜症になっていると、これらが卵管を通ってお腹の中にばらまかれてしまい「出血」「炎症」「他の組織への癒着」などが起こります。
子宮内膜症の症状チェック
腹痛
腰痛
重い生理痛のような痛み
生理の出血量が多い
不正出血
性交痛
不妊
次第に出血量が多くなる傾向があり、ナプキンの交換が何度も必要になるケースもあります。
特に起こりやすい初期症状は?
子宮内膜症の初期症状として、生理痛(下腹部痛)がみられます。
初期は、生理痛以外に特に症状はみられません。ただし、徐々に生理痛が強くなることが多いです。
症状が進行すると、痛みは月経時だけではなく、月経前後や月経時以外にも起こる場合があります。
子宮内膜症にかかりやすい人の特徴
20~40歳代の女性(月経がある女性)
初潮が早かった人
母親や姉妹が子宮内膜症になった経験がある(遺伝的要因)
妊娠・出産の経験がない(もしくは少ない)
帝王切開を経験したことがある
子宮内膜症になる原因は?
子宮内膜症の原因は、はっきりと分かっていません。
ただし、生理の血がお腹で逆流する現象が影響していると考えられています。
病院には行くべき?
子宮内膜症は、早めの治療が必要です。
症状に心当たりがある場合は、「婦人科」または「産婦人科」を受診しましょう。
治療を行うことで、子宮の機能が改善し、生理時の痛みや出血の正常化を目指せます。
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放置するとどうなる?
放置していると、臓器と子宮内膜が癒着を起こします。
また、生理のたびに大量に出血をするようになり、痛みや出血で通常の生活を送れなくなる人もいます。
進行すると、生理時以外も腹痛を感じるようになります。
妊娠が望めなくなったり、排便痛・性交痛・腰の痛みなどが慢性化したりするリスクも高まります。
どんな検査を受けるの?
はじめに「問診」を行い、どのような症状があらわれているのか確認します。
その後、「内診」を行い、子宮や卵巣などの状態を確認します。
必要に応じて、
直腸診
超音波検査
MRI
血液検査
腹腔鏡検査
などを行います。
内診や検査があるため、脱ぎ着がしやすい服装がおすすめです。
できれば、パンツよりもスカートの方がよいでしょう。
なお、生理中にはできない検査もあるため、できれば生理期間を避けるとよいでしょう。
子宮内膜症の治療法は?
薬を飲む「薬物療法」と「手術療法」があります。
治療方法は、症状・重症度・年齢・妊娠の希望などに応じて決めます。
治療法① 薬物療法
まずは、痛みを和らげるために鎮痛剤を飲みます。
鎮痛剤で効果があらわれない場合は「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」「低用量ピル」などのホルモン量の少ないピルを使用します。
女性ホルモンの分泌を抑え、症状を緩和させる作用がある「GnRHアゴニスト(偽閉経療法)」や「黄体ホルモン剤」などを投与するケースもあります。
治療法➁ 手術療法
チョコレート嚢胞(※)と呼ばれる卵巣の内膜症性嚢胞がある場合は、手術を検討します。
妊娠を望んでいるケースは、病気の部分のみを切り取り、卵巣や子宮の正常な部分は残します。
一方、妊娠を望まないケースでは、病気の部分の摘出だけでなく、子宮や卵巣、卵管などを摘出する手術を行うこともあります。
※チョコレート嚢胞とは
卵巣の内部に子宮内膜が増殖し、出血した血液が卵巣にたまってチョコレートのような状態になることを言います。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
こんな症状があったら婦人科へ!
上記の症状があらわれている場合、すぐに婦人科で相談するようにしましょう。
特に妊娠を望んでいる場合は、早めの治療をおすすめします。
治療を早い段階で済ませることで、不妊を防ぎやすくなります。
また、医療機関に行かずに放置すると、手術や入院が必要になるリスクが高くなります。
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どんな病気の可能性があるの?
左肋骨の下に痛みが生じる婦人科の病気には、
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
などの可能性が考えられます。
※婦人科の病気で左肋骨の下の痛みが起こるケースは稀です。
病気① 子宮内膜症(生理のたびに痛みが増す)
子宮内にあるべき“子宮内膜組織”が子宮とは違う場所に発生する病気です。
子宮内膜症が左卵巣やその周辺の左側の臓器に起こると、左助骨の下が痛む場合があります。
この場合、異常発生した“子宮内膜組織”の剥離や増殖によって、痛みが起こっています。
左肋骨の下の痛みは、生理のたびに症状が増す傾向があります。
子宮内膜症の「主な症状」
生理前から生理期間中に重い痛みのようなものを感じやすくなります。
また、生理の回数を重ねるごとに症状、痛みが強くなるのが特徴です。
子宮内膜症の「原因」
はっきりとした原因はわかっていません。
現段階では、遺伝が関係しているとも言われています。
どんな人に多い?
20代~30代の女性に多く発症します。
自分でできる対処法は?
セルフケアで快方に向かわせるのは困難です。
- 生理のたびに生理痛が重くなる
- 腹部痛などが激しい
- 日常生活に支障が出るほどの痛みがある
といった場合は、早めに婦人科で相談しましょう。
悪化すると手術が必要になるケースもあります。
婦人科で受ける治療法は?
薬での治療と手術での治療があります。
根治は閉経または手術のみですが、症状が軽いうちに早期治療できれば、お薬の治療だけで済む可能性があがります。
子宮内膜症は、再発や“がん化”のリスクもあるので、長期的な経過観察が必要です。
病気② 子宮筋腫(生理の出血が増える)
子宮の壁にできる良性の腫瘍です。
この腫瘍が左側にできると、左助骨の下に痛み・違和感が生じる場合があります。
子宮筋腫が大きくなると、お腹がポッコリと出る人もいます。
主な症状
頻尿の症状は、腫瘍が膀胱を圧迫することで起こります。
この病気の原因
女性ホルモンが影響して発症するとされています。
閉経を迎えて女性ホルモンが排出されなくなると、筋腫が自然と小さくなることもあります。
自分でできる対処法は?
子宮筋腫は自身では対処できない病気です。
症状が重い場合は婦人科での治療が必要ですが、軽い場合には経過観察となります。
なお、
など日常に影響がある場合は、婦人科で相談してください。
婦人科で受ける治療法は?
飲み薬で腫瘍を小さくする治療、手術で腫瘍を取り除く治療などが主流です。
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婦人科以外の病気のケースも
左肋骨の下に痛みを引き起こすのは、
- 尿路感染症
- 大腸がん
といった病気の可能性もあるので、注意が必要です。
ご自身の症状に当てはまる病気はないか、チェックしていきましょう。
婦人科以外の病気① 尿路感染症
尿路の左側に結石・感染症が起こると、左助骨の下が痛みます。
こんな症状はありませんか?
- 排尿痛
- 頻尿、残尿感
- 尿混濁
- 下腹部痛、背部痛
- 高熱
- 血尿
排尿痛とは、尿を出すときに感じるズキズキとした痛みです。
また、背部痛や高熱、血尿がある場合、症状が進行して“腎盂腎炎”を発症している疑いがあります。
尿路感染症の原因
細菌感染(大腸菌など)が原因です。
そのため、
など、免疫が低下しているときに多く発症します。
自分でできる対処法は?
水分を多くとりましょう。
尿から菌を排出させることで、症状が快方に向かいやすくなります。
病院は何科?
尿路感染症は、泌尿器科で専門的な治療を受けられます。
また、女性は婦人科でも相談できます。
尿路感染症の場合、抗菌薬の処方が行われます。
ただし、腎盂腎炎まで進行すると入院治療が必要となるケースもあります。
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婦人科以外の病気② 大腸がん
大腸の一部にがん細胞が増殖することで、左助骨の下に痛みを感じる場合もあります。
大腸がんの場合、大腸ポリープが“がん化”する、もしくは直接粘膜から発生するといったケースがあります。
こんな症状はありませんか?
初期は無症状の場合が多いです。
症状を自覚するときには、病気が進行している可能性があります。
大腸がんの原因
自分でできる対処法は?
大腸がんは、セルフケアで治せません。
心当たりがある方は、医療機関で検査を受けましょう。
病院は何科?
大腸がんを疑うときは、胃腸内科・内科を受診しましょう。
大腸がんの場合、薬や放射線による治療、手術が必要です。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2020-05-18
検査を受けるタイミングやメリットも知っておきましょう。
30歳以上で、3人に1人ほどの女性がなっているという子宮筋腫。「もしかして自分も…」と不安になる女性も少なくありません。
お医者さんに、子宮筋腫の検査を受けるべきケースを聞きました。「検査はどういうことをするの?」「痛いの?」といったよくある質問にも答えます。
こんなときは、検査を受けよう!
・月経痛
・過多月経
・貧血
・下腹部の痛み
等の症状がある場合は、子宮筋腫の検査を受けるべきでしょう。
子宮筋腫が大きくなると、周囲の臓器を圧迫することにより頻尿や便秘、腰痛などの症状が出てくることもありますので、検査をおすすめします。
また、子宮筋腫が大きくなると妊娠しにくくなります。今後、妊娠を希望する方は必ず医師に相談しましょう。
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検査を受けるメリット
貧血や不妊、流産、早産のリスクを回避できます。
また、筋腫が急激に大きくなる場合は、まれに子宮肉腫や悪性腫瘍の可能性もあります。検査を受けることで、これらの重篤な病気の早期発見に繋がります。
【子宮筋腫の検査方法】内容・痛み・時間
どんな検査をするの?痛みは?
子宮検査の検査方法について、詳しく解説します。
検査内容
まずは、内診で子宮の大きさや痛みなどを確認します。
そして超音波検査で腫瘍を確認して診断を行います。腫瘍の大きさによってはMRI検査を行うこともあります。
また貧血状態を確認するために、血液検査も行います。
痛みはある?
基本的には、痛みを伴う検査ではありません。
痛みの感じ方には個人差があるの、まれに痛みを伴うことがあります。
内診では膣から指を入れて、お腹の上から子宮全体の形、大きさなどをみますので、力を抜いて検査を受けるとよいでしょう。
※検査後に痛みが出た場合は、速やかに医師に相談してください。
検査時間はどのくらい?
目安として、
内診・超音波検査は数分以内、
MRI・CT検査を行うと、約20〜30分程度かかるでしょう。
検査結果はいつわかる?
内診・超音波検査は、その場で結果が分かります。
血液検査に関しては、病院独自で検査を行える場合はその場で結果が出ます。層でない場合は1〜2週間程度結果出るまでかかる場合があります。
生理中にも受けられる?
できれば、生理中は避けましょう。
生理中は、出血の影響で検査の質が落ちるなど影響が出る可能性があります。
検査は保険適用になる?
子宮筋腫の検査は、健康診断で指摘されたり、既に症状がある場合は、保険適用です。
しかし、子宮筋腫かどうか判断するための検査は自由診療となります。
健康診断や地方自治体では、子宮癌検診など無料で受けられる場合もありますので、ご確認ください。
検査は何科に行けばいい?
子宮筋腫の検査は婦人科または産婦人科を受診することをお勧めします。
ご自身のかかりつけの医院等ある場合は、一度相談をして紹介してもらうこともひとつ方法です。
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治療法についても知っておこう
子宮筋腫は、治療が必要な場合と、経過観察で様子を見る場合があります。
症状が軽いうちに、病院にいくようにしましょう。
症状が軽い場合は対症療法が主になります。貧血症状・圧迫症状等が重く、生活に支障が出るような症状の場合は治療を行います。
経過観察の場合は定期的に検査を行い、妊娠の希望の有無や子宮温存の希望の有無を考えながら治療を行います。
治療が必要な場合は、薬物療法と手術療法があります。
薬物療法
薬物療法は、子宮筋腫を小さくする、出血、痛みの緩和等に用います。
薬物療法の一つとして、月経を止める治療(偽閉経療法)があります。これは、手術前に一時的に使用したり、閉経が近い年齢の方などの治療に用いられます。
薬物療法を行うと、女性ホルモンの分泌が少なくなり、更年期障害のような状態になったり、骨量の減少を伴うこともあり、半年以上の長期治療はできません。また、治療を中止すると筋腫が元の大きさに戻ってしまいます。
手術療法
手術の場合は子宮の全摘出と筋腫だけをとる場合があり、妊娠を望む場合は筋腫摘出のみを実施します。子宮筋腫で手術を受ける場合、一般的に入院期間は10日〜2週間程度です。
参考
公益財団法人 日本産婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8
公益財団法人 日本婦人科腫瘍学会
https://jsgo.or.jp/public/kinshu.html