「頭に汗をかくようになった…もしかして病気?」
頭にたくさん汗をかく原因についてお医者さんに聞いてみました。
生活での注意点も解説しますので、汗を少しでも抑えたい方は必読です。
監修者
経歴
札幌医科大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
関東労災病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜市立大学附属病院 形成外科
を経て
平成30年10月より小田原銀座クリニックに勤務
令和2年6月よりよこはま港南台形成クリニックに勤務
なぜ?頭に汗をかくようになった…
頭にたくさん汗をかく場合、
- 頭部多汗症
- 更年期
- バセドウ病
などの原因が考えられます。
一般的に、頭部多汗症は男性に多く、更年期障害やバセドウ病は女性に多いと考えられています。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
原因① 頭部多汗症(男性に多い)
温度などに関わらず、頭皮・耳・おでこから大量の汗が出る人は、「頭部多汗症」が疑われます。
体には「エクリン腺」という汗を出す器官があり、主に体温調節のために働いています。
多汗症の人は、この「エクリン腺」の異常によって、汗が過剰分泌されてしまうと考えられています。
こんな症状に心当たりはないですか?
- 暑くないのに汗をかく
- 辛い物を食べてないのに汗をかく
- 頭皮や顔から汗が滴り落ちる
- 通常は数分で汗が引く(※)
(※)ひどいときは数時間~1日中続くこともあります。
頭部多汗症は、男性に発症しやすい傾向があります。
特に「不規則な生活」を送っている人は、自律神経の乱れが影響して、発汗を招きやすくなると言われています。
また、遺伝的要因も関係しているとされています。
そのため、頭部多汗症の人の中には、家族にも同じような症状があるケースが多いです。
「頭部多汗症かも…」と思ったら、皮膚科へ
頭部多汗症は、自然に治るものではありません。
「頭にたくさん汗をかいて困っている」という人は、皮膚科で相談しましょう。
軽度~中等度の場合には、「飲み薬」「塗り薬」「ボトックス注射」で治療することが多いです。
重度の場合には、麻酔薬で神経を麻痺させる「神経ブロック療法」や、交換神経を切除する「交換神経遮断術」などが行われます。
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2022-07-28
「頭の多汗症って何科に行けばいいの…?」
頭部の多汗症を相談できる診療科について、お医者さんに聞いてみました。
保険適用される基準・治療費の目安も紹介するので、多汗症の治療を受けたい方は必読です。
頭部の多汗症は「何科へ受診すればいい?」
頭部の多汗症は、皮膚科で相談しましょう。
皮膚科では、基本的に問診・診察を通して「多汗症」の診断を行います。
受診した際には、下記の点を聞かれることが多いです。
初診で聞かれること
どんなときに汗が出るか
汗が出ることで困っていること
また、医療機関によっては、「ヨード紙を使った検査」や「汗の量を調べる検査」が行われることもあります。
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頭部の多汗症は「保険適用になる?」
左右対称に多汗がみられる
日常生活に支障が生じている
週1回以上の頻度で「多汗のエピソード」がみられる(※)
25歳未満で発症している
家族に多汗症の人がいる
睡眠時は頭部の発汗がみられない
(※)汗のせいで何度も服を着替える 等
上記のうち2項目以上当てはまる場合に、保険適用となります。
保険適用が認められる“原発性局所多汗症”には、「緊張すると大量の汗を止められない」「人の視線が気になると汗が出る」などの特徴があります。
一方で、「暑いときにたくさん汗をかく」など、“一般的な汗っかき”と判断できる場合は保険適用外となります。
「保険適用になる治療」の例
頭部の多汗症の場合、
飲み薬
手術(交感神経遮断)
などによる治療は、保険適用となるケースがあります。
治療方法
どのような治療を行うか
飲み薬
薬の服用で汗を減らす
交感神経遮断(ETS)
発汗に関わる交感神経を手術で遮断する
保険適用の治療① 飲み薬
薬で神経伝達物質を抑制し、頭皮などの急な発汗を止める治療方法です。
治療にかかる費用は、1カ月分で1,000円程度です。
塗り薬などと併用すると、より効果が出やすくなります。
ただし、飲み薬による治療の効果には個人差があるため、あまり効き目が出ない人もいます。
飲み薬の「副作用」ってある?
飲み薬を服用すると、
口の渇き
目のかすみ
などの軽い副作用が出ることがあります。
また、汗をかきにくくなるため、高温の環境で長時間仕事をする方は注意が必要です。
※「緑内障」「前立腺肥大」「イレウス」などを患っている人は、病状が悪化する恐れがあるため、使用することができません。
保険適用の治療② 手術(交感神経遮断)
交感神経を遮断し、発汗を抑制させる治療法です。
治療にかかる費用は、保険適用で15万円〜20万円程度です。
手術の「副作用」ってある?
手術を受けると、別の部位の発汗が強くなる「代償性発汗(※)」が生じることもあります。
(※)治療した箇所の発汗が抑えられる代わりに、「背中」「腰」「腹」「ふともも」などで発汗が増加する症状
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「保険適用にならない治療」の例
頭部の多汗症のには
塗り薬
ボトックス注射
などを用いた、自由診療の治療法もあります。
治療方法
どのような治療を行うか
塗り薬
塗り薬の作用で汗を止める
ボトックス治療
薬を注射して、汗の発汗を止める
自由診療の治療① 塗り薬(塩化アルミニウム)
「塩化アルミニウム溶液」を塗って汗腺を塞ぎ、発汗を抑える治療法です。
治療にかかる費用は、薬剤100mlあたり1,200〜2,000円程度です。
効果を継続させるためには、薬を塗り続ける必要があります。
塗り薬の「副作用」
薬を塗った箇所に腫れ・炎症が起こることがあります。
※この場合は薬の使用を続けられません。
自由診療の治療② ボトックス注射
ボトックスを注射して「神経伝達物質」を遮断し、発汗を抑える治療方法です。
治療にかかる費用は、注射する範囲によっても差がありますが、1回6万円程度(※)です。
(※)麻酔代が別にかかることもあります。
一度の注射で数カ月は効果が持続しますが、継続的な治療が必要です。
また、頭皮は注射できる範囲が限られているため、効果が出にくいケースもあります。
ボトックス注射の「副作用」
ボトックス注射には、
注射をした部位が、一時的に腫れて痛む
一時的な「倦怠感」が生じる
といった副作用が挙げられます。
副作用が強く出る場合には、医師に相談する必要があります。
なお、胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中・妊活中の人はボトックス注射を行えません。
「頭の汗が止まらない」という方は、病院で相談を
汗が止まらなくて、困っている
汗のせいで、皮膚のかゆみ・炎症が出ている
といった場合は、一度皮膚科で相談してみましょう。
多汗症は、「薬を使った治療」や「手術」などで改善が期待できます。
また、「原発性局所多汗症」と診断された場合は、保険適用で治療を受けることも可能です。
まずは医師の診察を受けて、発汗の状態を確認してもらいましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
千葉市医師会 汗の病気「多汗症」
原因② 更年期(40代後半以降の女性に多い)
更年期を迎えた女性は、女性ホルモンの分泌が急激に減少することで、ホルモンバランスが乱れます。
その影響で、頭部のほてり・発汗の症状が現れることもあります。
これは“ホットフラッシュ”とも呼ばれる、更年期の代表的な症状です。
「冬なのに頭と顔に大量の汗をかいた」など悩みを抱える人もいます。
更年期症状は、40代後半~50代前半の時期に現れることが多いです。
こんな症状に心当たりはないですか?
- 発汗
- めまい
- 動悸
- 胸が締め付けられるような感覚
- 頭痛・肩こり
- 腰・背中の痛み
- 倦怠感
- 気分の落ち込み
「更年期症状かも…」と思ったら、婦人科へ
更年期からくる不調は、婦人科で治療を受けられます。
頭部からの発汗で困っているときは、一度受診してみるとよいでしょう。
更年期症状の場合、「ホルモン剤」や「漢方薬」などを使用して、症状の緩和を図ることが多いです。
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原因③ バセドウ病(20~30代の女性に多い)
バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。
新陳代謝が活発になることで、異常に汗をかくようになります。
バセドウ病は、男性より女性に発症しやすい点も特徴です。
20~30代で発症するケースが多いと言われています。
こんな症状に心当たりはないですか?
- 発汗・暑がりになる
- 微熱(37.5℃前後)
- 体重減少、または体重増加
- イライラする・落ち着きがない
- 動悸・息切れ
- 首が腫れる
- 口が渇く
- 倦怠感
- 生理周期が乱れる
「バセドウ病かも…」と思ったら、内科へ
バセドウ病は治療せずにいると、心臓病を発症するリスクもあります。
症状に心当たりがあるときは、一度内科で相談してみましょう。
健康への悪影響を抑えるには、早めに治療を受けることが大切です。
バセドウ病の場合、薬の服用や手術などによって治療を行うことが多いです。
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頭部の汗を抑える「4つの習慣」
- 規則正しい生活を送る
- 6〜8時間ほどの睡眠時間を確保する
- 辛い食べ物を控える
- ストレスをこまめに発散する
自律神経を整えると、頭部の発汗を抑えやすくなると考えられます。
頭部の発汗が気になるときは、日頃から上記の習慣を意識してみるとよいでしょう。
① 規則正しい生活を送ろう
自律神経を整えるには、
- 平日と休日の起床時間の差をなくす
- 日中にしっかりと活動して、夜に寝る
といった生活習慣を心がけることが大切です。
「昼夜逆転の生活」などは、自律神経が乱れやすいので避けてください。
② 6〜8時間ほどの睡眠時間を確保しよう
毎日6~8時間程度の睡眠時間を確保すると、自律神経が安定しやすいです。
できるだけ起きてスッキリするような「質のよい睡眠」をとるようにしましょう。
睡眠の質を高めるには
- 昼寝は15時まで、30分以内にとどめる
- カフェインの摂取は就寝の5~6時間前まで
- 夕食・入浴は2~3時間前までに済ませる
- 寝酒は控える
- 寝る前にスマホ・PC画面を見ない
- 暗くて静かな環境で寝る
- パジャマは肌触りのよい素材を選ぶ
③ 辛い食べ物を控えよう
辛い食べ物には、発汗を促す「カプサイシン」が含まれています。
唐辛子が入った食べ物・調味料は、控えるようにしましょう。
④ ストレスをこまめに発散しよう
など、自分に合った方法でストレスを発散しましょう。
ストレスが少ない状態だと、自律神経が安定して発汗が落ち着きやすくなります。
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2022-07-28
「汗をかきすぎて困る…」
「多汗症って保険適用で治療を受けられるの?」
多汗症の治療で保険が適用するケースを、お医者さんに聞いてみました。
各治療のメリット・デメリットも解説しますので、治療を考えている方は必読です。
多汗症の治療「保険適用の条件」
体の両側、かつ左右対称に多汗がみられる
多汗によって日常生活に支障が生じている
週1回以上の頻度で多汗によるエピソード(※)がみられる
25歳未満で発症した
家族歴がある(親・兄弟で多汗症を発症している人がいる)
睡眠時は局所性の発汗がみられない
(※)汗のせいで1日に何度も着替える 等
発汗を「ほとんど我慢できない」「我慢できない」といった人で、上記に2つ以上当てはまる場合、多汗症の治療が保険適用となります。
上記は「原発性局所多汗症」と診断される基準で、多汗症の方は上記にほとんど当てはまることが多いです。
なお、「上記の6項目の中の1項目しか当てはまらない」、「日常的に汗が少し気になる」といった方は、保険適用にはなりません。
「汗っかき」と「多汗症」の違いは?
症状の特徴
汗っかきの人
暑いときに、たくさん汗をかく
辛いものを食べたときに、たくさん汗をかく
運動したときに、たくさん汗をかく
多汗症
暑くないのに、たくさん汗をかく
大量の汗で衣類が急に濡れるので、常に着替えを持ち歩く必要がある
緊張すると余計に汗が出る
汗の匂い、シミなどが気になって仕事や勉強が進まない
汗っかきの人は、暑い環境・運動など、なんらかのキッカケによって汗をかくことが多いです。
多汗症の場合、特にキッカケもなく汗を大量にかいてしまうため、生活に支障をきたしてしまいます。
多汗症によくある症状として、「書類が汗で濡れてしまう」「汗がひどくて握手ができない」「髪の毛が洗髪後のように濡れてしまう」なども挙げられます。
保険適用になる治療
多汗症の保険適用内の治療法としては、
「飲み薬」による治療
「塗り薬」による治療(脇のみ)
ボトックス治療(脇のみ)
などが挙げられます。
保険適用① 「飲み薬」による治療
「抗コリン剤」という飲み薬を服用する治療法です。
「神経伝達物質」を制御し、多汗を抑えます。
時間が経ってから効果が出るため、「汗を止めたい」というタイミングの1時間前に服用する必要があります。
※緑内障・前立腺肥大・イレウスなどの病気をお持ちの方は、病状が悪化する恐れがあるので使用できません。
メリット
(効果)
「急に汗をかく」という症状を緩和できる
デメリット
効果には個人差があり、あまり効き目が出ない人もいる
口の渇き・目のかすみなど、軽い副作用が出る可能性がある
汗をかきにくくなるため、高温の環境で長時間仕事をする方は注意が必要
治療費用の目安
(3割負担)
1000円程度(約1ヶ月分)
※他に再診料、処方料などがかかります。
保険適用② 「塗り薬」による治療
「エクロックゲル」という塗り薬を使用し、発汗を抑えます。
脇の多汗症のみ行える治療法です。
※緑内障・前立腺肥大がある方は使用不可です。
メリット
(効果)
脇の発汗を抑えられる
デメリット
人によっては、皮膚がかぶれてしまうケースもある
※皮膚かぶれが生じる場合は、使用を継続できません。
治療費用の目安
(3割負担)
2000円程度(約2週間分)
※他に再診料、処方料などがかかります。
保険適用③ ボトックス治療
脇にボツリヌス菌(ボトックス)を注射する治療法です。
なお、ボトックス治療が保険適用になるのは、脇のみ(※)です。
(※)脇以外の部位は自由診療となります。
施術を受けると、神経伝達物質の「アセチルコリン」の放出が阻害され、発汗を抑えられます。
メリット
(効果)
汗をかきにくくなり、汗の量が減少する
デメリット
数ヶ月しか効果がないため、繰り返しの治療が必要
経済的負担が大きくなりやすい
妊婦・妊活中の方は施術不可
治療費用の目安
(3割負担)
2万5,000円程度(両脇1回)
※他に再診料などがかかります。
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保険適用にならない治療
「自由診療」で多汗症を治療する場合、
塗り薬(塩化アルミニウム)を使った治療
レーザー治療(ミラドライ)
といったものがあります。
※「脇以外のボトックス治療」も自由診療となります。
自由診療① 塗り薬(塩化アルミニウム)を使った治療
「塩化アルミニウム」を含む塗り薬を使い、汗腺の働きを抑制します。
保険適用の塗り薬である「エクロックゲル」のみで効果が足りない際や、あるいは「塩化アルミニウム溶液」で効果が足りないときには、両方の薬剤を併用することもあります。
メリット
(効果)
汗腺の働きを少なくさせることができる
デメリット
継続した治療が必要
人によっては、腫れ・炎症などを起こすことがある
※その場合は使用を停止します。
治療費用の目安
1200円~2000円程度(100ml)
自由診療② レーザー治療(ミラドライ)
汗が出る部分に直接レーザーを照射して、汗腺を壊す治療法です。
メリット
(効果)
汗腺が少なくなり、汗が出る量が少なくなる
半永久的に効果が続く
1回の治療で効果を感じられることが多い
デメリット
治療中に痛みを感じやすい
治療後に腫れや赤みが出る期間がある
費用が高額になることが多い
治療費用の目安
20万円~40万円程度(1回あたり)
※2回の照射が必要になるケースもあります。
多汗症の相談は皮膚科へ
多汗症の治療は、皮膚科で対応しています。
※保険内で治療を受けたい場合は、保険適用の治療を提供している医療機関へ相談しましょう。
多汗症は、汗が多く出ることで日常生活に支障をきたしやすいものです。
治療で快方に向かうことも多いため、お困りの方は一度医師に相談してみましょう。
お医者さんが伝えてほしい「ポイント」
汗が出るようになった時期
気になる時期
汗の量の目安(衣類にどの程度しみるか 等)
診察時は、上記の点を聞かれることが多いです。
メモなどにまとめておくと、診療がスムーズに進みやすいでしょう。
皮膚科を探す
▼参考
千葉市医師会 汗の病気「多汗症」
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。