更年期に久しぶりの出血…
これって生理?何かの病気?
「更年期の生理のような出血」について、お医者さんに聞きました。
「不正性器出血」の場合、子宮体ガン・卵巣ガンといった命に関わる病気も疑われます。
要注意な症状も解説しますので、心当たりがないか確認してみましょう。
監修者
経歴
医療法人社団 石野医院
日本医科大学
日本医科大学付属病院
日本医科大付属第二病院
国立横須賀病院
東部地域病院
石野医院
「更年期に久しぶりの生理…」大丈夫?
更年期に生理のような出血がありました。生理はもう終わったと思っていたのですが…。これって大丈夫でしょうか?
問題のないケースもありますが、診察しない限り大丈夫とは言い切れません。
不正性器出血(生理以外の原因による出血)の場合、「子宮体ガン」といった命に関わる病気が隠れているケースもあります。
病気の早期発見につなげるためにも、早めに婦人科で診察を受けたほうがよいでしょう。
「問題ない」と診断されるケース
- 卵巣機能の低下で、月経の間隔が長くなっている
- キズ・ケガで一時的に出血している
といった場合、問題ないと判断されることが多いです。
閉経が近づいてくると、月経の間隔が次第に長くなっていきます。
生理が2〜3ヶ月に1度になることもあるため、「久しぶりの生理がきた」と感じる人も多いです。
また、摩擦等によるキズ・ケガが原因の場合も、傷口が治れば自然と出血も止まるため、さほど心配はありません。
ただし、一般の方が「自分は大丈夫なのかどうか」を判断することは難しいです。
安心して過ごすためにも、婦人科に一度相談しておくのがよいでしょう。
「早めの婦人科受診」をおすすめするケース
- 閉経後に出血があった
- 大量に出血がある
- 出血が8日以上続く
- オリモノが止まらない
といった症状がある場合は、病気の疑いが強くなるため、早めの受診をおすすめします。
不正性器出血が続く場合、子宮体ガン・子宮内膜ポリープ・子宮筋腫などの病気が隠れている可能性があります。
悪性腫瘍の場合、初期だと出血以外に自覚症状が出ないケースもあります。
命に関わるリスクを下げるためにも、放置せず受診するようにしましょう。
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不正性器出血を引き起こす「よくある原因」
不正性器出血を起こす「よくある原因」には、
- 萎縮性腟炎(いしゅくせいちつえん)
- 子宮頸管ポリープ
- 機能性出血
などが挙げられます。
病名
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発症のキッカケ
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症状の特徴
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萎縮性膣炎
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女性ホルモンの分泌量が低下し、膣内の自浄作用が低下することで起こる。
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子宮頚官ポリープ
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女性ホルモンの影響や細菌感染
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機能性出血
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ホルモンバランスの乱れ
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原因① 萎縮性膣炎(かゆみ・痛み)
萎縮性膣炎の症状チェック
- 赤いサラサラの血液が出る
- 乾燥しやすくなる
- 茶色や黄色のオリモノが出る
- かゆみがある
- 痛みがある
- 熱を感じる
「萎縮性腟炎」とは、膣の壁が薄くなり、膣や子宮の入り口がただれる疾患です。
加齢に伴う女性ホルモンの減少によって、膣内の自浄作用が低下し、雑菌が繁殖することで起こります。
萎縮性膣炎は、閉経後の女性に多いのが特徴です。
腟内が傷つきやすくなっているので、「下着との摩擦」「排便・排尿後の清拭」「性行為での摩擦」によって出血することがあります。
なりやすい人の特徴
不規則な生活や喫煙している人は萎縮性膣炎になりやすい傾向があります。
また、女性ホルモンを抑制する薬剤の使用も女性ホルモンのバランスを崩すため、萎縮性膣炎を引き起こしやすくなります。
萎縮性膣炎の治療法
基本的には、治療で女性ホルモンを補充することで改善されます。
また、規則正しい生活を送って、女性ホルモンの分泌を整えることも大切です。
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原因② 子宮頚官ポリープ(膿のようなオリモノ)
子宮頚官ポリープの症状チェック
- 激しい運動時に出血する
- いきみなどで出血する
- 膿のようなオリモノが増え、そこに血が混ざる
「子宮頸管ポリープ」は、子宮の出口にポリープができた状態です。
9割以上が良性のポリープで、ガンではありません。
子宮頚官ポリープは組織がやわらかいため、激しい運動などをした後に出血しやすい傾向があります。
なりやすい人の特徴
子宮頸管ポリープは、細菌に感染して炎症を起こすこともあります。
そのため、
などで免疫力が低下している人は、発症リスクが高くなるといえます。
※子宮頸管ポリープを発症する明確な原因はわかっていません。
子宮頚官ポリープの治療法
病院では、ポリープの切除を行います。
ポリープを切除した後は、「ガン」がないかどうか調べるために、組織検査を行います。
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原因③ 機能性出血(出血量が多い)
機能性出血の症状チェック
- ダラダラと長く出血が続く
- 出血量が多い
- めまい
- 貧血
「機能性出血」とは、ホルモンバランスが不安定になることで起こる不正性器出血で、更年期の女性に多くみられます。
排卵が起こらず、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が作られずにいる状態が続くと、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」だけが子宮内膜に長期間作用することになります。
これにより子宮内膜が肥大して、そこからダラダラと出血してしまうことがあります。
なりやすい人の特徴
機能性出血は、ホルモンバランスの乱れが原因となります。
疲労が蓄積していたり、過度なストレスを感じている人はなりやすい傾向があります。
機能性出血の治療法
長く大量に出血している場合は、止血剤やホルモン剤を使用して治療を行います。
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不正性器出血には、子宮ガン・卵巣ガンが隠れているケースも
【要注意!】ガンの進行で現れる症状
- 下腹部の違和感・痛み
- 常にお腹がはる
- 頻尿や便秘がひどい
- 水っぽいオリモノ
- オリモノに血や膿が混ざる
不正性器出血の症状がある場合、「子宮体ガン」「卵巣ガン」「卵管ガン」といった命に関わる病気も考えられます。
いずれのガンも50代以降に多く見られ、特に「出産経験がない方」「肥満傾向の方」は発症リスクが高いと言われています。
初期の場合、不正性器出血以外に自覚症状がないケースも多いです。
上記症状を伴う方はさらに疑いが強くなるため、できるだけ早めに診察を受けるようにしましょう。
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2022-12-23
更年期障害ってどんな症状が出るの?
なりやすい人の特徴は?
更年期障害について、分かりやすくまとめました。
普段の生活で心がけたいポイントや、病院に行く目安も紹介します。
更年期障害とは
女性は40代頃から、卵巣から分泌される「女性ホルモン」が急激に減少します。
これに伴ってあらわれる、さまざまな心身の不調を総称して、更年期障害と呼びます。
更年期障害は何歳から始まる?
更年期とは、閉経前後の5年ずつを指します。
50歳前後での閉経が平均なので、ほとんどの女性が45~55歳で更年期を迎えます。
更年期障害はいつ終わる?
更年期障害が、いつ終わるかは断言できませんが、長くても10年ほどです。
更年期障害の症状をチェック
のぼせ・顔のほてり(ホットフラッシュ)
息切れ・動悸
頭痛
めまい
不安を感じやすい、イライラしやすい
など
上記の症状は、更年期障害の主な症状の一例です。
更年期の症状は多岐にわたるため、上記以外の症状があらわれる人もいます。
「更年期の症状が出やすい人」の特徴は?
以下、それぞれの項目ごとに2~3個ずつ当てはまる場合、更年期障害を発症しやすいと考えられています。
▼睡眠
24時以降に眠り、10時以降に起床する日が週に3日以上ある
低血圧で、朝起きるのがつらい
夜中に目が覚めやすい
寝る前にスマートフォンやパソコンを使っている
浅い眠りしかとれず、熟睡感がない
▼食事
1日3食はとらない(よく欠食する)
食事の時間がバラバラ
食事量を過度に制限するなど「極端なダイエット」をしている
暴飲暴食している
好き嫌いがあり「偏った食生活」になっている
▼性格
人に比べて神経質
何事にも真面目
完璧主義
仕事などを頑張りすぎてしまう
怒りっぽく、些細なことでもイライラしやすい
▼その他
疲れやストレスが多い生活を送っている
休みが少なく、心身ともにリラックスできる時間がない
体が冷えやすい
運動する習慣がない
産後うつ・月経前症候群が重かった
※これらの症状に当てはまらない場合でも、更年期障害を発症する可能性はあります。
今からできる!更年期の症状を和らげる「5つの対策」
1日3食、主食・主菜・副菜の揃った食事をとる
1日7〜8時間程度の質のよい睡眠をとる
週3~4日、有酸素運動を行う
入浴のときは「湯船に浸かる」
こまめにストレスを発散させる
更年期の症状を和らげるには、自律神経を整えておくことが大切です。
上記の点を意識して、生活習慣を見直していきましょう。
こんな症状があったら「婦人科」で相談を!
眠れないことで憂うつな気分が続く
強い不安感がある
食欲がなく、体重が減った
息切れ・動悸がする
めまい・吐き気がする
激しい頭痛がある
上記のような症状が出ている方は、一度「婦人科」に相談してみましょう。
放置していると、症状が悪化して仕事に行けなくなるなど、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
また、更年期症状の影響により不眠が続くと、睡眠に対するこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖心から症状が慢性化する恐れもあります。
どんな検査を受けるの?
更年期症状で病院を受診した場合は、一般的に、
問診
身長・体重・血圧の測定
検査(血液・子宮・卵巣・甲状腺・心臓等の検査)
を行い、患者さんの症状に合わせて治療が選択されます。
※検査内容等は、受診する医療機関によって異なることがあります。
どんな治療法があるの?
治療法としては、エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンを飲み薬・塗り薬・貼り薬で補う「ホルモン補充療法(HRT)」や、「漢方薬」を使った治療法があります。
うつ症状が強く表れているときは、抗うつ薬や抗不安剤などの「向精神薬」が処方されます。
※飲み合わせの関係でホルモン補充療法や他の薬が使いにくい場合もあります。治療中の病気や飲んでいる薬は医師に伝えたうえで、薬を処方してもらいましょう。
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2020-06-12
「不正出血が止まらない…」
「生理じゃないのになぜ…?」
お医者さんに、不正出血が止まらない原因を聞きました。
「放置するリスク」や「病院に行くべき症状」についても解説します。
不正出血が止まらない…大丈夫?
「排卵期出血」と言う少量の出血の場合は、あまり気にすることはありません。
生理と生理の間の時期(排卵期)に起こるホルモンバランスの変化による出血です。この出血は数日でおさまることが多いです。
しかし、これを繰り返すような場合や、出血が2週間以上続く場合は、一度医師に相談した方が良いでしょう。
また、ピルの服用によって不正出血が起こる場合もあります。こちらも少量の出血であればあまり心配ありませんが、出血が3か月以上続く場合や、出血量が多い場合は病院で相談しましょう。
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病気の可能性も
不正出血が止まらない原因として、
子宮頸がん
子宮体がん
子宮肉腫
膣がん
子宮頸管ポリープ
といった病気も考えられます。
原因1. 子宮頸がん
性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頚部に感染することで起こります。
20代後半から増えはじめ、40代がもっともかかりやすい病気です。
とくに性交時の出血がみられます。出血量は多く、繰り返すのが特徴です。
<症状の特徴>
まだ細胞ががん化していない初期段階では症状はありません。
進行すると、性交時に出血をしたり、おりものに変化があらわれたりします。さらに悪化すると、下腹部や腰が痛くなることもあります。
原因2. 子宮体がん
女性ホルモンのひとつ「エストロゲンの分泌」が過剰になると、子宮の内膜が分厚くなり、がん化します。
エストロゲンの過剰分泌を引き起こす原因として、①出産経験がない、②閉経が遅かった、③肥満である、④ホルモン薬剤の影響などがあげられます。
また、エストロゲンの分泌とは無関係に、糖尿病、リンチ症候群などの病気、家族に大腸がんの方がいるといったことが原因となることもあります。
子宮体がんは、40歳ごろから増えはじめ、50代から60代がもっともかかりやすい病気です。
<症状の特徴>
おりものに血が混ざり、褐色になるだけのものもあります。出血に加え、排尿時の痛みを感じたり、尿が出にくくなったりします。性交時にも痛みがある場合もあります。
下腹部や腰の痛み、お腹の張りを感じることもあります。
原因3. 子宮肉腫
子宮の筋肉や間質に生じる悪性の腫瘍です。子宮肉腫は、40代から60代に多い病気です。
発症頻度は非常に低いとされていますが、早期治療が必要です。子宮肉腫の原因は、はっきりとしていません。
<症状の特徴>
不正出血以外には、下腹部の痛みや張りを感じます。
原因4. 膣がん
膣がんによって膣の粘膜がただれて、出血が起こることがあります。
膣がんは、60歳以上の方に多い病気と言われています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染していたり、子宮頸がんや子宮がんを患ったり、子宮摘出をしたりしていると、膣がんにかかるリスクが高まります。
また、胎児期に、母親が流産防止のためにDES(合成女性ホルモン薬)を使用していると、生まれてきた子どもの膣がんリスクが高くなる可能性がある、という報告もあります。
<出血の特徴>
生理ではない時期や閉経後、性交中や性交後に出血することがあります。
<症状の特徴>
膣がんでは多くの場合、初期では症状がみられません。
がん細胞が大きくなると膀胱を圧迫するため、尿の回数が増えたり、排尿時に痛みを感じたりすることもあります。
その他、水っぽいおりものや性交痛、便秘等を感じる方もいますが、これらは、腟がんに特有なものではなく、他の病気が原因となっている場合も多くあります。なかには病気が進行しても、何も症状がないという人もいます。
原因5. 子宮頸管ポリープ(頚管粘膜ポリープ)
子宮頚管ポリープは、成人女性の2~5%に発症します。良性の場合が多いです。
子宮頸部の細胞の慢性的な炎症などをきっかけに、できものとして膣の中へ飛び出したものです。ポリープが大きくなると不正出血を起こしやすくなります。
特に30代から40代の発症が多いです。
ポリープの大きさは直径数mmから2~3cm程度で、やわらかく、性交渉時の刺激などにより傷つき、出血することがあります。
<症状の特徴>
多くの場合は、症状がありません。
ポリープが感染を起こすと、膿が混じったようなおりものが出ることがあります。
止まらない不正出血を放置すると…
「少量の出血だから大丈夫かな」
といって、病院へ行かずに放置するのはやめましょう。深刻な病気を見逃したり、治療が難しくなる可能性が上がります。
また、不妊や流産のリスクが上がったり、生理痛や貧血症状がつらくなることもあります。
病院を受診する目安
閉経後にもかかわらず、出血がある。
出血量が多い。
痛みが強い。
不正出血を繰り返す。
不正出血が2週間以上続く。
受診のタイミング
基本的には出血している時に受診しましょう。
出血の原因を突き止めやすくなります。また、早期に受診することで出血をとめることにも繋がります。
出血が止まった後に受診する場合には、以下の6ポイントを医師に伝えると良いでしょう。
いつ出血したのか。
出血は続いたのか。続いたのであれば、その期間。
どんな色だったか。
どれくらいの量だったか。
その他の症状。
月経周期や月経期間。
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初診ではどんな検査をするの?
まずは問診を行い、その後内診で出血している場所や状況を確認します。
必要に応じて、超音波検査で子宮や卵巣の状況の確認や血液検査を行うこともあります。
生理中に受診してもいいの?
がん検診やおりもの検査などは生理期間を避けますが、
不正出血に関しては、生理中でも受診して大丈夫です。
参考
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/
MSDマニュアル家庭版 膣がん
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/22-女性の健康上の問題/女性生殖器のがん/腟がん