「生理になると足の付け根にしこりができるのはなぜ?」
「押すと痛い…」
その症状は「鼠径ヘルニア」や「子宮内膜症」かもしれません。
すぐに手術が必要なケースもあるので要注意です。
監修者
フェリシティークリニック名古屋
医学博士
河合 隆志先生
経歴
’97慶應義塾大学理工学部卒業
’99同大学院修士課程修了
’06東京医科大学医学部卒業
’06三楽病院臨床研修医
’08三楽病院整形外科他勤務
’12東京医科歯科大学大学院博士課程修了
’13愛知医科大学学際的痛みセンター勤務
’15米国ペインマネジメント&アンチエイジングセンター他研修
’16フェリシティークリニック名古屋 開設
生理時にできる足の付け根のしこり。これは一体何?
生理に伴って出現する足のしこりは、
- 鼠径ヘルニア
- 子宮内膜症
の可能性があります。
これって大丈夫?病院行くべき?
痛みが弱い場合でも、足の付け根にしこりができた場合は、至急医療機関を受診しましょう。
もし「鼠径ヘルニア」であった場合、進行すると腸が壊死する可能性があります。
しこりの原因① 鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは、腸が腹膜から飛び出す病気です。
軽度であれば痛みもなく、押すと元に戻りますが、癖になると元に戻らなくなる人もいます。
生理中は免疫が下がり、疲れやすくなります。
鼠径ヘルニアは、腹圧がかかる時・疲れやストレスが多い時に起こりやすいので、生理中に発症する可能性が考えられます。
嵌頓(かんとん)を起こした場合は即手術が必要です。
※嵌頓とは
嵌頓とは周りの筋肉が腸管を閉めてしまい、腸が元に戻らなくなっている状態です。
嵌頓を起こすと腸管の流れがストップし、腸閉塞を起こします。
さらに血流が停止すると、腸が壊死するので、治療が必要です。
鼠径ヘルニアの「しこりの特徴」
柔らかいしこりができます。
押しても痛まない時もありますが、嵌頓を起こしていると痛みが生じます。
こんな症状も、でていませんか?
- 下腹部に違和感がある
- 下腹部に不快感がある
- 嵌頓を起こしていると痛みがあり、どんどん強くなる
鼠径ヘルニアになりやすい人
お腹に力を入れる仕事や立ち仕事を続けている人に多く発症します。
加齢に伴い発症しやすくなるので、誰でも起きる可能性があります。
どんな治療を受けるの?
腹腔鏡手術や開腹手術など外科手術を行います。
病院は何科?
消化器外科を受診しましょう。
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しこりの原因② 子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮の中にできる子宮内膜組織が子宮以外に発生する病気です。
できる場所は卵巣・卵管・腸・腹膜など様々です。
子宮内膜症は、生理の時に剥がれ落ちる子宮内膜と同様に生理に合わせて増殖します。
そのため、生理の時にしこりができると考えられます。
子宮内膜症の「しこりの特徴」
多くは、下腹部周辺に硬いしこりができ、押すと痛みます。下腹部だけでなく他の部分にできることもあります。
こんな症状も、でていませんか?
- 生理の出血量が増える
- 生理痛がどんどん重くなる
- 貧血になる
症状は、生理の回数を重ねるごとに悪化するケースが多いです。
子宮内膜症になりやすい人
20〜40代の女性に多く、遺伝的な要因も考えられています。
生理周期が短く、生理の期間が長めの人は子宮内膜症を発症しやすいです。
どんな治療を受けるの?
症状が軽度から中度の場合は薬物療法を行い、重度の場合は手術療法で治療することが多いです。妊娠を望んでいるかによっても治療法が変わることもあります。
病院は何科?
婦人科を受診してください。
早めに受診すれば、お薬での治療で済むこともあります。
また、子宮内膜症を放置すると生理痛がひどくなるだけではなく、不妊の原因になることもあります。
早期発見・早期治療が大事です。
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2020-05-15
足の付け根のリンパ節が痛い!
病院は何科に行けばいいの?
何科を受診するべきか、医師が解説します。
「放置するとどうなるの?」「自然治癒はする?」といった疑問についても聞きました。
足の付け根のリンパ節の痛みは何科?
何科に行けばよいかは、痛みの原因よって異なります。
足の付け根のリンパ節の痛みには、主に、次の原因が考えられます。
性感染症
自己免疫疾患
悪性リンパ腫
次から、それぞれの症状の特徴や「何科を受診すべき」かを、詳しく解説します。
1.「性感染症」は泌尿器科・婦人科
軟性下疳、梅毒、HIVに感染すると、リンパ節に炎症が起こり、足の付け根のリンパ節が痛くなることがあります。
症状の特徴
<軟性下疳>
ズキズキとした痛みがあり、皮膚が赤く腫れる。
赤く腫れている部分を押すと痛い。
性器や肛門に小さな水ぶくれができて痛む。
※先進国での発症は少なく、発展途上国で娼婦と性交渉のある男性が感染するケースが多い。
<梅毒>
初期はあまり痛みがなく、硬く腫れる。
小豆大くらいの大きさの硬いしこりができる。
性器や肛門、唇、指などに小さな硬い腫瘍ができる。その後、痛みやかゆみのない湿疹ができ、リンパが腫れる。
発熱、疲労感、食欲不振 など
<HIV>
初期はあまり痛みがなく、腫れるのみ。
小さなしこりができる。
発熱、発疹、疲労感、下痢、貧血など
次の症状がある場合は、男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診しましょう。
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2.「自己免疫疾患」は内科・整形外科
関節リウマチ・若年性特発性関節炎などを発症すると、自己免疫システムに異常をきたし、自分の細胞を攻撃することで炎症が起こり、足の付け根のリンパ節が痛くなることがあります。
症状の特徴
<関節リウマチ>(35~50歳の女性に多い)
しめつけられるような痛み
腫れがあり、押すと痛い
関節の痛みやこわばり
微熱・食欲不振・体重減少
<若年性特発性関節炎>(16歳までに発症することが多い)
しめつけられるような痛み
赤く腫れ、押すと痛い
関節のこわばり
発熱、発疹
(目や皮膚にまで症状が現れることも)
内科・整形外科を受診しましょう。
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3.「悪性リンパ腫」は内科、血液内科
正常な白血球のうち、リンパ球ががん化して増えると、足の付け根のリンパ節が腫れる場合があります。
症状の特徴
ほとんどの場合、押しても痛みはない
腫れがだんだんと大きくなり、小さくなることはない
腫れに弾力性はあまりなく、触ってもうごかない
激しい寝汗・体重減少・発熱などの全身症状
内科、血液内科を受診しましょう。
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自然治癒する?
足の付け根のリンパ節に痛みを起こしている病気を治療しない限り、自然には治らないと考えてよいでしょう。
放置するリスク
症状を放置することで、様々なリスクが考えられます。
症状が長引く
性感染症の場合、胎児に感染してしまう
妊娠しにくくなる
成長障害
他の臓器に障害を起こす
合併症を起こす
日和見感染症(※)にかかる
関節の変形
最悪の場合、死に至る
(※)日和見感染症…健康なときには発症しなくても、免疫力が低下したときに発症してしまう感染症
病院での治療法
軟性下疳、梅毒→抗菌薬の投与、セックスパートナーの治療も必要になります。
HIV→抗ウイルス薬、その他の感染症を防ぐ薬、症状を緩和する薬を使用します。
関節リウマチ→抗リウマチ薬の投与、生活習慣の見直し、マッサージや深部温熱療法などの理学療法、人工関節に取り換える手術などを行います。
若年性特発性関節炎→抗リウマチ薬や非ステロイド系抗炎症薬の投与、柔軟運動などを行います。
悪性リンパ腫→進行具合によって変わりますが、主に化学療法と放射線治療を行います。症状によっては造血幹細胞移植を行うこともあります。
▼参考
MSDマニュアル家庭版 関節リウマチ
MSDマニュアル家庭版 若年性特発性関節炎
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2022-12-23
子宮内膜症ってどんな病気?
よくある初期症状は?
子宮内膜症についてわかりやすく解説します。
病院へ行く目安も紹介するので、心当たりのある症状がないかチェックしましょう。
子宮内膜症ってどんな病気?
子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う膜(子宮内膜)が、子宮以外の部分で増えてしまう病気です。
通常であれば、子宮内膜は生理のたびに体の外へ排出されます。
しかし、子宮内膜症になっていると、これらが卵管を通ってお腹の中にばらまかれてしまい「出血」「炎症」「他の組織への癒着」などが起こります。
子宮内膜症の症状チェック
腹痛
腰痛
重い生理痛のような痛み
生理の出血量が多い
不正出血
性交痛
不妊
次第に出血量が多くなる傾向があり、ナプキンの交換が何度も必要になるケースもあります。
特に起こりやすい初期症状は?
子宮内膜症の初期症状として、生理痛(下腹部痛)がみられます。
初期は、生理痛以外に特に症状はみられません。ただし、徐々に生理痛が強くなることが多いです。
症状が進行すると、痛みは月経時だけではなく、月経前後や月経時以外にも起こる場合があります。
子宮内膜症にかかりやすい人の特徴
20~40歳代の女性(月経がある女性)
初潮が早かった人
母親や姉妹が子宮内膜症になった経験がある(遺伝的要因)
妊娠・出産の経験がない(もしくは少ない)
帝王切開を経験したことがある
子宮内膜症になる原因は?
子宮内膜症の原因は、はっきりと分かっていません。
ただし、生理の血がお腹で逆流する現象が影響していると考えられています。
病院には行くべき?
子宮内膜症は、早めの治療が必要です。
症状に心当たりがある場合は、「婦人科」または「産婦人科」を受診しましょう。
治療を行うことで、子宮の機能が改善し、生理時の痛みや出血の正常化を目指せます。
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放置するとどうなる?
放置していると、臓器と子宮内膜が癒着を起こします。
また、生理のたびに大量に出血をするようになり、痛みや出血で通常の生活を送れなくなる人もいます。
進行すると、生理時以外も腹痛を感じるようになります。
妊娠が望めなくなったり、排便痛・性交痛・腰の痛みなどが慢性化したりするリスクも高まります。
どんな検査を受けるの?
はじめに「問診」を行い、どのような症状があらわれているのか確認します。
その後、「内診」を行い、子宮や卵巣などの状態を確認します。
必要に応じて、
直腸診
超音波検査
MRI
血液検査
腹腔鏡検査
などを行います。
内診や検査があるため、脱ぎ着がしやすい服装がおすすめです。
できれば、パンツよりもスカートの方がよいでしょう。
なお、生理中にはできない検査もあるため、できれば生理期間を避けるとよいでしょう。
子宮内膜症の治療法は?
薬を飲む「薬物療法」と「手術療法」があります。
治療方法は、症状・重症度・年齢・妊娠の希望などに応じて決めます。
治療法① 薬物療法
まずは、痛みを和らげるために鎮痛剤を飲みます。
鎮痛剤で効果があらわれない場合は「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」「低用量ピル」などのホルモン量の少ないピルを使用します。
女性ホルモンの分泌を抑え、症状を緩和させる作用がある「GnRHアゴニスト(偽閉経療法)」や「黄体ホルモン剤」などを投与するケースもあります。
治療法➁ 手術療法
チョコレート嚢胞(※)と呼ばれる卵巣の内膜症性嚢胞がある場合は、手術を検討します。
妊娠を望んでいるケースは、病気の部分のみを切り取り、卵巣や子宮の正常な部分は残します。
一方、妊娠を望まないケースでは、病気の部分の摘出だけでなく、子宮や卵巣、卵管などを摘出する手術を行うこともあります。
※チョコレート嚢胞とは
卵巣の内部に子宮内膜が増殖し、出血した血液が卵巣にたまってチョコレートのような状態になることを言います。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
病院は何科?
「鼠径ヘルニア」が疑われる場合は、消化器外科を受診しましょう。
「子宮内膜症」など婦人系の病気が疑われる場合は、婦人科に相談しましょう。
※自分では判断できない場合は、まずは内科を受診しましょう。
生理中に起こりやすいしこりをご紹介しましたが、しこりに気がついたのが、たまたま生理中で、実は以前からあったということもあるでしょう。
痛みがなくても早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けることをおすすめします。
また、定期的に婦人科検診を受けましょう。
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2020-06-08
「下腹部が痛い…」
「足の付け根にも痛みがある…」
もしかして女性特有の病気…?
どんな原因が考えられるのか、お医者さんに聞きました。
病院を受診した方がいい症状や、放置するリスクも解説します。
婦人科を早めに受診するメリットもご紹介。
下腹部と足の付け根の痛みは女性特有の病気?
子宮や卵巣は、下腹部・足の付け根あたりにあります。
そこに何らかの不調が生じている場合、そこに痛みが生じることがあります。
具体的には、
卵管炎・卵巣炎
卵巣嚢腫茎捻転
子宮筋腫
子宮内膜症
などの病気を発症している可能性があります。
それぞれの症状の特徴や発症しやすい人を解説します。
思い当たる症状がないか、しっかりチェックしましょう。
原因1.卵管炎・卵巣炎
人工中絶・流産・出産を経験している方に多い病気です。また、不潔な性行為や、タンポンを長時間使用している方も、膣内に細菌が繁殖しやすい状態になるため、発症する可能性が高くなります。
膣が細菌感染し、そこから徐々に炎症が広がると、卵巣にまで感染が及びます。
炎症の原因菌は、大腸菌やクラミジア、淋菌などです。
症状の特徴
お腹が張っているような感じ(膨満感)
発熱
吐き気
不正出血
膿のようなおりもの
慢性化すると、月経痛や腰痛、排尿時の痛みなどの症状があります。
痛みの対処法は?
抗生剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤を使う薬物療法と、排膿したり、病巣を摘出したり外科療法があります。
原因2.卵巣嚢腫茎捻転
20~30代の女性に多くみられます。
生殖可能な年齢の女性であれば、発症の可能性はあります。
卵巣の中に液状のものが溜まって腫れている状態(卵巣嚢腫)になり、その腫れた部分と子宮とが繋がっている付け根の部分がねじれてしまう病気です。卵巣嚢腫事自体は良性の腫瘍なので、あまり大きくない場合は経過観察となることが多いです。
症状の特徴
下腹部の激しい痛み
吐き気
嘔吐 など
痛みの対処法は?
痛みに対して鎮痛剤を使いますが、根本治療は卵巣のねじれを元に戻す外科療法を行います。
原因3.子宮筋腫
30歳~閉経前の女性に多い病気です。
子宮にできる腫瘍で、多くのものが良性です。子宮の内側や外側、筋肉の中など、できる場所はそれぞれです。女性ホルモンの影響で大きくなり、閉経後には小さくなります。
症状の特徴
生理痛が重くなる
月経量が多くなり、貧血を起こす
月経以外の出血(不正出血)
腰痛
頻尿
痛みの対処法は?
痛みは市販薬の鎮痛剤を服用しても大丈夫です。治療としては、子宮筋腫を小さくする薬物療法や、筋腫や子宮を取り除く外科療法があります。
原因4.子宮内膜症
特に若い女性に多く、20-30歳代の方に多く発症します。30-34歳が発症のピークと言われています。月経のある女性の約7~10%の方に発症すると言われており、最近では30台後半から40代後半の患者さんも増えているともいわれています。
子宮内膜が、何かの原因で子宮以外のところにできて発育する病気です。子宮以外の場所にできた内膜が排出されずに溜まってしまうことで、痛みを伴います。
子宮内膜症は、不妊の原因となります。
症状の特徴
腰痛
排便痛
性交痛 など
痛みの対処法は?
鎮痛剤や漢方薬を使います。痛みが強くなる前に鎮痛剤を活用しましょう。
医療機関では、ホルモン剤を使った内分泌療法を行うこともあります。根本治療として外科療法にて、病巣部や子宮、卵巣、卵管などを摘出することもあります。
こんな症状は早めに病院へ
次の症状が現れている場合は、一度婦人科を受診することをおすすめします。
下腹部に激しい痛み
生理痛がひどくなっている
排便・排尿時に痛みがある
なかなか妊娠できない
性交痛がある
おりものが増えた
生理の際の痛み止め薬の量が増えている
婦人科系疾患を治療せずに放置すると、他の臓器に癒着が起きたり、手術が必要になる場合もあります。また、不妊の原因にもなります。
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婦人科を早期受診するメリット
痛みや症状の原因を早く知ることで、早期に治療することができるため、症状の悪化を防ぐことができます。また、治療方法の選択の幅も広くなります。
病気の早期発見により、妊娠に必要な機能も温存できる可能性が高くなるため、妊娠を希望する場合は早めの受診がとても重要です。
初診ではどんな検査する?
<初診の流れの例>
問診による症状の確認
触診や内診
血液検査
超音波検査 等
これに加えて、症状により必要な場合は、内視鏡検査やCT検査を行います。
卵巣炎や卵管炎などの場合は、おりものの検査をして、どのような細菌に感染をしているか確認する場合もあります。
生理中に受診してもいいの?
検査によって、生理中は避けた方がよいものもあります。
病院に一度連絡をし、確認してから受診することをおすすめします。
参考
公益社団法人日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。