「片方だけ、乳首がかゆい!」
「ずっと治らない…。もしかして病気?」
なかなか相談できない「乳首のかゆみ」の対処法を、お医者さんに聞きました。
放置するリスクや受診した方がいい症状、何科で診てもらえばいいのかもご紹介します。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
病気ではないケース
乾燥や蒸れなどによって乳首がかゆくなることがあります。
「乳首のかゆみがなかなか治らない…」というケースでも、病気が原因ではないこともあります。
正しいセルフケア
乾燥している場合:保湿剤やワセリンなどを塗りましょう。
蒸れている場合:通気性のよい生地(綿素材など)を使った下着を選びましょう。
また、サイズの合わない小さな下着も蒸れの原因となることがあります。体にあったサイズの下着をつけることも大切です。
上記のセルフケアを行っても症状が改善されない場合、皮膚炎や病気の可能性が考えられます。一度病院を受診しましょう。
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片方の乳首がかゆくなる病気
乳首がかゆくなる代表的な原因として
- 乳房パジェット病
- アトピー性皮膚炎
- 接触性皮膚炎
- 真菌感染症
といった病気も考えられます。
片方の乳首がかゆくなる症状がでる、病気について解説します。
乳房パジェット病
乳管に生じたガンが、乳頭まで広がることで起こります。
<症状の特徴>
悪化すると、乳頭が変形したり、ジクジクして浸出液が出たりすることもあります。
対処法
腫瘍のある部分を切除します。
放射線治療を行うこともあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の原因ははっきりとしていませんが、乾燥肌気味で皮膚のバリア機能が弱いなどの体質だとなりやすいと考えられています。
対処法
ステロイド軟膏を使用して治療します。
保湿剤やワセリンを塗り、皮膚のバリア機能を維持します。
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2021-02-24
「大人もアトピーになるって本当?」
「原因はストレス…?」
成人後に発症するアトピー性皮膚炎について、お医者さんに聞きました。
対処法をチェックし、症状の悪化を防ぎましょう。
大人もアトピーを発症するって本当?
本当です。
今までアトピーの症状がなかった人が、成人後に突然発症するケースはあります。
幼少期にアトピーを患っていた方が、成人後に再発することもあります。
近年では、大人のアトピー患者の数が増えています。20~40歳代の人に多くみられます。
子どものアトピー性皮膚炎とは違い、治るまでに長期間かかることも多いです。大人のアトピー性皮膚炎は、根気よく治療を行なうことが大事になってきます。
アトピーになりやすい人
肌がひどく乾燥している人
アレルギー体質の人
生活習慣に問題がある人(睡眠不足、疲労過多、過度の飲酒、喫煙等)
大人のアトピー性皮膚炎の「症状」
かゆみに加え、「むくみのような腫れ」や「発赤(皮膚表面が炎症で赤くなっている状態)」といった皮膚症状が、繰り返し現れるケースが多いです。
<症状が出やすい部位>
顔
首
デコルテ部分
腕の内側
膝裏
※さらに悪化してしまった場合、気管支喘息や白内障など、様々な合併症が起こることがあります。
これはアトピー?あせも?どう見分ける?
アトピーとあせもは、症状の現れ方や症状の経過に違いがあります。
アトピー性皮膚炎
あせも
症状の現れ方
左右対称に出やすい
左右非対称に出やすい
症状の経過
症状の安定と再発(悪化)を繰り返す
1週間程度で自然治癒する
大人のアトピー性皮膚炎の原因
肌の乾燥
ストレス
睡眠不足
喫煙、過度の飲酒
アレルギー(ダニ、ハウスダスト、花粉等)
生まれつきの免疫異常
などが挙げられます。
「肌が乾燥」はなぜアトピーになるの?
肌の水分量が低下して乾燥すると、バリア機能も低下し、肌がダメージに弱くなります。
かゆみが生じやすくなるため、ついつい掻いてしまうことで、アトピー性皮膚炎の発症につながるのです。
「ストレス」はアトピー悪化の傾向アリ
過度のストレスは、アトピーを悪化させる原因の一つとして考えられています。
アトピーはかきむしることで症状が悪化します。
過度のストレスを抱えている人の場合は、意識せずに掻いてしまう傾向があるため、悪化しやすいのです。
病院ではどんな治療をするの?
多くの場合は、アトピーの原因を調べるための検査をした後、原因と症状に合った治療が行われます。
薬を使用した治療が中心で、塗り薬(ステロイド軟膏)、タクロリムス軟膏(免疫抑制剤)や内服薬によって、症状の改善を目指します。
大人のアトピー性皮膚炎は、皮膚科で相談することができます。
大人のアトピーでお困りの場合は、受診をおすすめします。
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アトピーを改善するための対処法
大人のアトピーを改善するには、
“食事メニュー”の見直し
部屋の“清潔”のキープ
毎日の“保湿” スキンケア
を行ないましょう。
その① 食事メニューの見直し
アトピーの改善には、“身体が必要とする栄養分”をバランスよく摂取することが重要と考えられています。
なお、アレルギーが原因の場合は、原因となる食品を避ける必要があります。
昔の日本の食卓のようなメニューが理想
主食は米、汁物は具沢山のみそ汁にしましょう。
主菜や副菜には魚、豆腐、卵、大豆製品、野菜類(特に緑黄色野菜)、きのこ類、海藻類等を選んでください。
また、タンパク質・脂質・糖質など、特定の食品だけの過剰摂取等を控えましょう。
栄養の偏りは、症状の悪化を招きやすくなります。
その② 部屋の“清潔”のキープ
ハウスダストやダニ(死骸)は、大人のアトピーを発症する原因の一つに挙げられています。
それらの原因物質を排除するためには、こまめな掃除や換気が必要です。
日常生活を送る場所を常に清潔な状態にするようにしてください。
高い棚の上なども定期的に掃除して、ほこりが飛び散らないようにしましょう。
その③ 毎日の“保湿”スキンケア
皮膚が弱っていると肌が乾燥しやすくなり、少しの刺激で湿疹が発生してしまいます。
そのため、毎日しっかり保湿スキンケアを行い、乾燥から肌を守る必要があります。
毎日お風呂に入って、皮膚に付いた汚れ(アレルギー物質等)を洗い流してください。
体を洗う際は低刺激性の石鹸を使用し、ごしごし洗うのではなく、よく泡立ててから優しく丁寧に洗いましょう。泡で洗った後は、時間を置かずに早めにすすいでください。
お風呂から出た後は、乾燥しやすい状態になっているため、できるだけ早くクリーム等で保湿して水分の蒸発を抑えてください。
使用する保湿剤は低刺激性がおすすめです。迷う場合は皮膚科で相談してください。
大人のアトピーは完治する?
大人のアトピーは治りづらいと聞きました…完治することはあるのでしょうか?
大人のアトピー性皮膚炎は“現代病”と呼ばれており、完治は困難と考えられています。
しかし、原因をきちんと調べ、症状に合った治療を根気よく行うことで、日々のつらい症状の緩和が期待できると考えられます。
アトピー性皮膚炎でお悩みの場合は、一度皮膚科で相談しましょう。
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▼参考
特定非営利活動法人 日本アトピー協会 日常生活での注意事項
第一三共ヘルスケア アトピー性皮膚炎の原因
接触性皮膚炎
化学繊維の下着や、洗剤の成分などの刺激により、皮膚が炎症を起こすことで生じます。
対処法
ステロイド軟膏を使用して治療します。
保湿剤やワセリンを塗り、皮膚のバリア機能を維持します。絹やコットン素材の下着を選ぶ、洗剤を変えるなども大切です。
界面活性剤は、接触性皮膚炎を誘発しやすいので、合成洗剤ではないものを選ぶのがよいでしょう。製品パッケージに「合成洗剤」と書いていないもの、または成分に「界面活性剤」と書いていないものを選びます。成分に「石ケン」と記載あるものを選ぶとよいでしょう。
真菌感染症
下着の中が蒸れることで真菌(カビ)が繁殖し、乳首が感染することで炎症が起こります。
<症状の特徴>
重症化すると、腫れや痛みを生じることもあります。
対処法
抗真菌成分を含む軟膏を使用して治療を行います。
炎症を起こしている部分を清潔に保ちましょう。
また、通気性の良い生地を使った下着や体に合ったサイズの下着をつけることで、蒸れの防止にもなります。
市販薬で治る?
- アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎
→抗生物質を含む市販の軟膏により治療が可能です。
- 真菌感染症
→抗真菌成分を含む市販の軟膏を選ぶと良いでしょう。
ただし、かゆみの原因とは違う薬を塗ってしまうと、改善がみられなかったり、場合によっては症状が悪化することもあります。市販薬を使っても症状がよくならない場合は、病院を受診しましょう。
また、薬に含まれる成分により、アレルギーを起こす可能性のある人は、自己判断で使用せずに医師や薬剤師に相談しましょう。
やってはいけない3つのNG
乳首がかゆい時、
- 掻きむしる
- 乾燥させる
- 入浴の際、洗いすぎる
は避けましょう。悪化してしまう可能性が高いです。
「大したことない」と、かゆみを放置すると…
病院へ行かずに放置すると、乳がんのような深刻な病気を見逃すことがあります。また治りが遅くなり、治療費がかさむこともあるので、早めの受診を心がけましょう。
病院に行くべき!受診目安
- 痛みがある
- 浸出液が出ている
- 湿疹やただれが改善されない
- 乳首が変形、腫れている
といった場合は病院を受診しましょう。
何科を受診すればいい?
まずは、皮膚科を受診しましょう。
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その後、かゆみの原因によっては婦人科、乳腺外科を受診する必要があることもあります。
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2020-10-06
片方の乳頭から分泌液が出た!
これって大丈夫?もしかして…病気?
乳首から液体が出る理由を、お医者さんに聞きました。
考えられる病気の可能性も解説します。
なぜ?片方の乳頭から分泌液が出る原因
通常は、出産により分泌物が出るようになります。母乳が分泌され始めるのは、妊娠後期の出産間近の数週間〜出産後です。この時期に乳頭から分泌物のは生理的なことです。
出産以外でも分泌物が出ることも場合によってはあるのですが、
・片側の乳頭のみから分泌物がでる
・分泌物に赤や茶色など血液が混じる
という場合には、そちら側の乳房に腫瘍ができている、異常があるなどの原因があると考えられます。
これ、大丈夫なの?
片方だけの場合は「要注意」です。
他に判断するポイントとして、分泌液の色に注目してください。
あまり心配のいらないケース
透明または白っぽいサラっとした液体が両方の乳頭から少量出ている場合は、あまり心配の要らないケースが多いです。
白いカスのようなものが下着についたり、うっすら湿っていたりする場合です。
この場合は、乳頭への刺激や、ホルモンバランスの変動によって分泌液が出たと考えられます。
病院に行くべきケース
赤、茶色いなど血が混ざっているような色であったり、明らかに血の混ざったものが出ている場合は、注意が必要です。
また、色や質感だけでなく、片方だけにその分泌物が出ている、乳房にしこりが確認できる、刺激を与えていないのに分泌物が出てくるといった場合も注意が必要となります。
このような症状がある場合、
乳がん
乳管内乳頭腫
乳腺症
といった病気が原因の可能性があります。
次から、それぞれの症状について解説します。
病気①乳がん
乳腺組織にがんが発生した状態です。
乳管からの発症が多いとされています。転移しやすい場所は、乳房に近いリンパ節・骨・肺などです。
<分泌液の特徴>
赤色〜茶色っぽい(血が混じっているような色)
片方の乳頭から出てくる
<その他の症状>
しこり(痛みを感じないことが多い)
乳房の皮膚が一部引きつっている
乳首の形や向きが左右で変わってくる
陥没乳頭でなかったのに、陥没してくる
乳がんの発症リスクが高い人
女性ホルモンである、エストロゲンが関わっていると考えられています。体にエストロゲンがある状態が長くあることが、乳がん発症の引き金の一因となります。そのため、若年層よりも40〜50代で発症率は上がります。
「エストロゲンを含む避妊薬を使用している」「閉経後にホルモン補充療法を受けている」などが発生のリスクをあげます。
また、「初潮が早かった、閉経まで長い人、出産経験がない、授乳していない」などのエストロゲンを長期間、体内に発生させている状態も発症リスクが上がるとされています。
遺伝的要因の場合もあります。親族のなかに癌の人がいないか、いる場合には何の癌であったかは確認しておきましょう。
他にも、飲酒、運動不足、閉経後の肥満といった生活習慣も発症率を上げます。
※乳がんは女性特有のものではなく、男性にも発生します。
病気②乳管内乳頭腫
母乳を乳頭まで運ぶ乳管という組織の中に腫瘍ができている状態です。
腫瘍は通常良性です。乳頭に近い、太めの乳管に発生することが多い腫瘍です。
<分泌液の特徴>
透明
黄色
赤や茶色など(血が混じっている)
<その他の症状>
乳頭周辺の乳管に腫瘍、しこり
乳管内乳頭腫の発症リスクが高い人
はっきりした原因は、未だ不明です。
女性ホルモンが一因となっていると考えられています。
病気③乳腺症
女性ホルモンのバランスの乱れが影響し、乳腺に様々な症状が現れます。
女性は、生理や妊娠などに伴い、女性ホルモンが大量に分泌されますが、その分泌に伴い乳腺が反応する状態が乳腺症です。
しこりができることもあります。しこりは通常良性です。
<分泌液の特徴>
透明
乳白色
両側性のことが多い
<その他の症状>
乳房の表面に触れると分かる状態の凸凹を感じる
乳房の痛み
乳房の腫れ
乳房のしこり
しこりが痛む
乳腺症の発症リスクが高い人
30〜50代の女性に多いとされています。
生活習慣や年齢に関係なく多くの女性に現れる乳腺の症状です。
不安な症状は早く病院へ
乳がんなど重い病気が原因であった場合、早期に発見することで完治の可能性が高くなります。
受診するのは何科?
乳腺外科を受診しましょう。
※病院によっては外科での診療となります。
乳腺外科を探す
参考
国立がんセンターがん情報サービス 乳がん