帯状疱疹の発熱は、ウイルスに対抗するための体の免疫反応です。
「熱はどのくらい続くの?」
「すぐに病院に行くべき?」
などの疑問にも回答します。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
帯状疱疹の対処が遅れると「発熱」することがある
帯状疱疹を、治療しなかったり、治療が遅くなったりすると、発熱することがあります。
多くの場合は微熱ですが、重症化すると39度以上の熱が出ます。
熱が続く期間は?
個人差がありますが、数日から1週間程度で徐々に引いていく場合が多いです。
帯状疱疹の発熱には個人差があり、帯状疱疹の状態が改善されていけば、熱も引くことが多いです。
放っておくのはNG?
顔面神経麻痺や角膜炎、網膜炎、難聴などの合併症が心配されますので、治療しないというのは危険です。
合わせて読みたい
2022-12-23
帯状疱疹ってどんな病気…?
放っておいてもいいの?
帯状疱疹という病気について、分かりやすくまとめました。
発症する原因や初期症状、治療方法についても解説します。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹とは、過去に感染した「水ぼうそうのウイルス」が再活性化することが原因で発症する感染症です。
帯状疱疹になると、体の片側に痛みやチクチクとした感覚、かゆみが生じます。
その後そこに、まわりが赤い小さな水ぶくれがたくさんできます。ピリピリとしたしびれを感じることもあります。
帯状疱疹の症状
体の片側のかゆみ
体の片側の発疹・水ぶくれ
発熱
頭痛
※かゆみ・発疹等は、腕・胸・顔に出ることもあります。
症状の経過
帯状疱疹は、「①かゆみや痛み→②発疹→③水ぶくれ」と症状が変化していきます。
① 痛みやかゆみが出る
体の左右どちらか片側に、はじめは皮膚の痛みやかゆみなどの症状があらわれます。
胸から背中など、上半身に症状が出ることが多く、顔や目の周りに発症することも多いです。
② 紅斑・発疹ができる
痛みやかゆみなどの症状がある箇所に、赤い斑点(紅斑)が出てきます。
その後、虫に刺されたような発疹ができます。
発疹は神経に沿って帯状にあらわれ、数日から1周間ほど続きます。
③ 水ぶくれができる
発疹ができた部分にみずぶくれができます。発疹の中央の部分が膿のようになり、ただれたり、潰瘍のようになったりします。
やがて、かさぶたとなり、自然に枯れて剥がれ落ちます。
皮膚の症状は、一般的には1~2周間から1ヶ月ほどで良くなります。色素沈着が残る人もいます。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹は、体内に潜んでいる「水痘ウイルス(水ぼうそうのウイルス)」が原因です。
免疫力が低下しているときにウイルスが活動を再開すると、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹になりやすい人は?
40~50代以上
疲労やストレスがたまっている
睡眠不足
免疫力が低下していると、神経細胞に潜んでいた「水ぼうそうのウイルス」が活性化して、帯状疱疹を発症しやすくなります。
※水ぼうそうに感染した人全員が、帯状疱疹を発症するわけではありません。
帯状疱疹は人にうつるの?
帯状疱疹は、周囲の人に帯状疱疹として感染することはありません。
しかし、過去に感染した水ぼうそうのウイルスが帯状疱疹の原因なので、乳幼児など水ぼうそうにかかったことがない人には、水ぼうそうとして感染することがあります。
帯状疱疹かもと思ったら…
時間をかければ自然治癒しますが、早めにウイルスや痛みを抑えるのがよいため、帯状疱疹の疑いがあったら、皮膚科にいくのがよいでしょう。
病院で処方される抗ウイルス剤を飲めば、自然治癒を待つより早い回復が期待できます。
また、免疫力が低下している状態です。まずは安静にして、食事をしっかりとりましょう。
お家では、お風呂に入ったりホットタオルをあてたりして、体を温めて痛みを和らげましょう。帯状疱疹による痛みは、血行が悪いと強く感じます。
治療内容
抗ウイルス剤の点滴や内服を行います。痛みに対しては鎮痛薬を使用することもあります。水疱には軟膏を塗ります。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
帯状疱疹の症状がさらに悪化すると…
帯状疱疹が悪化すると、神経を傷つけて、目や耳などに異常をきたすことがあります。
▼目にあらわれる症状の例
▼耳にあらわれる症状の例
▼全身にあらわれる症状の例
※後遺症が残ることがあるため、早めに病院で対処することが必要です。
帯状疱疹は“免疫力が低下している”サイン
帯状疱疹がでているということは、疲れやストレスで「体が弱っている」サインかもしれません。
帯状疱疹は、子どもに多い水ぼうそうと同じウイルスです。
水ぼうそうのウイルスは、症状がなくなっても体内に潜伏しているため、いなくなることはありません。そして、体が弱って来たときや免疫力が低下したときに力を増し、再び湿疹や痛み、発熱を引き起こします。
帯状疱疹は「冷やす」のはNG
発疹が出た場合は、患部を冷やさないようにしてください。
冷やすとウイルスが活性化し、症状が悪化することがあります。発熱があっても、できるだけ冷やさないようにしましょう。
病院に行くべき?
微熱で体を動かすのに支障がない場合は、自宅療養でも良いでしょう。
ただし、
- 38度以上の熱がでている
- 「発熱」と「帯状疱疹の諸症状」が同時にでている
ときは、病院を受診してください。
帯状疱疹の諸症状
- ピリピリ、チクチクとした皮膚の痛み
- 水ぶくれを伴う帯状の発疹
- しびれ
病院に行かずに放置すると「後遺症」の恐れが
治療が遅れると皮膚の損傷が大きくなり、後遺症として神経痛が残ってしまう恐れがあります。
38度以上の熱があるときは、顔面神経麻痺・角膜炎・網膜炎・難聴などの合併症が心配されます。
神経痛は快方まで何年もかかることもよくあるため、避けたいものです。
また、顔面に帯状疱疹が出た場合は、脳に炎症が起こるリスクがあり危険です。
重症化すると入院が必要となるケースもあるため、早めの受診をおすすめします。
受診するのは何科?
帯状疱疹の疑いがある場合は、皮膚科を受診しましょう。
どんな治療をするの?
病院では、お薬による治療を行うことが多いです。
抗ウイルス薬や解熱剤を処方し、症状の改善を図ります。
帯状疱疹ウイルスに有効とされている市販薬はありません。病院で処方してもらう必要があります。
問診、視診が中心ですが、他のヘルペスなどと区別する際に、血液検査や生検を行うこともあります。
皮膚科を探す
合わせて読みたい
2021-05-13
「帯状疱疹の前兆って、どんな症状が出るの?」
帯状疱疹の初期症状も併せて、お医者さんが詳しく解説します。
心当たりのある方は、受診すべき診療科もチェックしましょう。
帯状疱疹の「前兆」
「帯状疱疹」は、前兆として皮膚に痛みなどのさまざまな症状があらわれます。
ピリピリ、チクチクとした痛み
ツンツンとした痛み
体の片側の違和感
皮膚のかゆみ
「帯状疱疹」は、できるだけ早く治療を始めることが望ましい病気なので、帯状疱疹の前兆に気づいたら、早めに医療機関を受診しましょう。
前兆が続く期間
帯状疱疹の前兆は、おおよそ3~7日続きます。
その後、神経に沿うように帯状に赤い発疹が出て、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹の「症状の特徴」
帯状疱疹は、
かゆみや痛み
発疹
水ぶくれ
と症状が変化していきます。帯状疱疹かも、と思ったら医療機関を受診してください。
①痛みやかゆみが出る
体の左右どちらか片側に、はじめは皮膚の痛みやかゆみなどの症状があらわれます。
胸から背中など、上半身に症状が出ることが多く、顔や目の周りに発症することも多いです。
②紅斑・発疹ができる
痛みやかゆみなどの症状がある箇所に、赤い斑点(紅斑)が出てきます。
その後、虫に刺されたような発疹ができます。
発疹は神経に沿って帯状にあらわれ、数日から1周間ほど続きます。
③水ぶくれができる
発疹ができた部分にみずぶくれができます。発疹の中央の部分が膿のようになり、ただれたり、潰瘍のようになったりします。
やがて、かさぶたとなり、自然に枯れて剥がれ落ちます。
皮膚の症状は、一般的には1~2周間から1ヶ月ほどで良くなります。色素沈着が残る人もいます。
帯状疱疹の改善後
痛みは、皮膚の症状と同じように消えていきますが、時々眠れないほど激しい痛みを起こすことがあります。
また、炎症で神経が損傷したために、皮膚の症状が消えた後に痛みが残ることもあります。
帯状疱疹の合併症
顔に帯状疱疹が出た場合は、角膜炎・結膜炎などの病気や、発熱、リンパの腫れ、耳鳴り、顔面神経の麻痺などの合併症を起こすことがあります。
下腹部や腰に発症すると、便秘や尿が出にくいなどの症状を起こすこともあります。
そのため、帯状疱疹が疑われる場合は、早く治療を始めて、症状の悪化や合併症を防ぐことが大切です。
帯状疱疹は「他の人にうつる?」
帯状疱疹は、周囲の人に、帯状疱疹として感染することはありません。
しかし、過去に感染した水ぼうそうのウイルスが帯状疱疹の原因なので、乳幼児など水ぼうそうにかかったことがない人には、水ぼうそうとして感染することがあります。
感染を広げないように、医療機関で治療を受けることが望ましいです。
帯状疱疹の感染対策
水ぼうそうにかかったことがない人への感染を防ぐため、タオルなどを共用しないようにしましょう。
医療機関を受診するときは、水ぶくれが破れないように、患部をガーゼで覆いましょう。水ぶくれが破れて、細菌などに感染するのを防ぐだけでなく、周囲の人への感染対策にもなります。
病院は何科?
“帯状疱疹の前兆”が見られたら、皮膚科を受診してください。
皮膚の症状がおさまっても、痛みが残る場合には、神経内科・ペインクリニック内科で痛みをやわらげる治療をおこないます。
病院ではどんな治療をする?
医療機関では、帯状疱疹に対して、ウイルスの増殖を防ぐために、抗ウイルス薬を使った治療をおこないます。
抗ウイルス薬は、症状が出てからできるだけ早く使用することで、高い効果を期待できます。帯状疱疹の前兆を感じたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
皮膚科を探す
放置はNG!帯状疱疹が悪化すると…
帯状疱疹を放置したり、治療の開始が遅れたりすると、発熱や頭痛など全身の症状が現れることがあります。
また、ウイルスによって目や耳などの神経が傷つけられることで、視力の低下や角膜炎、難聴や耳鳴り、めまいなどの後遺症が残ることがあります。
症状がおさまっても「痛みが続く」ことも
皮膚の症状がおさまった後も、長期に渡って痛みが続く、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる病気もあるため、なるべく早く治療をしてウイルスを抑える必要があります。
50歳以上の人の約2割に起こるといわれているため、注意が必要です。
帯状疱疹の前兆に気づいたら、お近くの医療機関やかかりつけの医院に、まずは相談してみるとよいでしょう。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
MSDマニュアル家庭版:帯状疱疹
一般社団法人 千葉市医師会 大人の水ぼうそう「帯状疱疹」
公益財団法人長寿科学振興財団:帯状疱疹の症状