なんだか平衡感覚がおかしい…。
もしかして、病気?
平衡感覚がおかしい場合に考えられる病気について、お医者さんに聞いてみました。
メニエール病など、放置していると危険な病気が疑われるケースもあるので、心当たりがないかチェックしましょう。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
平衡感覚がおかしいのは病気サイン?
最近、平衡感覚がおかしいような気がします。もしかして、何かの病気が原因でしょうか?
平衡感覚に違和感を覚える場合、何かしらの病気にかかっているおそれがあると考えられます。
特に、以下のような症状が併発している人は要注意です。
注意すべき症状と考えられる病気
- 肩こり・不眠・めまい→自律神経失調症
- むくみ・耳鳴り→メニエール病
- 突然のほてり・発汗→更年期障害
- 慢性的な中耳炎→良性発作性頭位めまい症
- めまい・失神→起立性低血圧
病気① 自律神経失調症
自律神経失調症は、体の機能をコントロールしている自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスが乱れている状態です。自律神経が乱れると、平衡感覚をつかさどる器官にも影響が出る可能性があります。
自律神経失調症は、ストレスが多く、不規則な生活をしている人は、発症しやすいといわれています。
自律神経失調症の症状チェック
- 疲れがとれにくい
- 動悸・息切れ・めまい
- 下痢・便秘
- 情緒が不安定
自律神経失調症のセルフケア
- ストレスを溜めない
- 6~8時間の睡眠をとる
- 毎日20分程度の軽い運動をする
映画鑑賞や読書など、ストレスを解消できるような趣味の時間をとりましょう。
また、遅くとも0時には布団に入って、寝るようにしましょう。
一般的に、6~8時間の睡眠をとると、疲れが残りにくいと考えられています。
寝つきが悪い人は、読書や音楽など、眠る前の「入眠儀式」を習慣化することで、眠りやすくなります。
軽い運動を習慣化すると、自律神経が整いやすいと考えられています。ラジオ体操やウォーキングなどを、毎日20分程度行いましょう。
激しい運動をするよりも、少し息が上がる程度の運動が習慣づけやすくおすすめです。
病気② メニエール病
メニエール病は、平衡感覚をつかさどる機能をもつ内耳に、むくみが生じている状態です。
疲労・ストレス・睡眠不足などで発症しやすいといわれています。
メニエール病の症状チェック
- めまい
- 吐き気・嘔吐
- 耳鳴り
- 気圧が変化する環境にいる人
- 几帳面・真面目な性格の人
メニエール病のセルフケア
- ストレスを溜めない
- 6~8時間の睡眠をとる
- 水分補給をする
「趣味に没頭する」「ゆっくり入浴する」などの方法で気晴らしをして、ストレスを溜めないようにしましょう。
朝にすっきり目覚められるように、6~8時間程度の睡眠をとりましょう。
「空調を整える」「布団や枕の高さを調整する」など、眠りやすい環境をつくるとよいでしょう。
また、水を多く飲むことで、内耳の水はけがよくなると考えられています。
男性は1日2リットル、女性は1日1.5リットルほどの水分をとりましょう。
一度に大量に水分を補給するのではなく、こまめに水分をとることが大切です。
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2023-02-28
メニエール病ってどんな病気?
どうしたら治るの?
メニエール病について、分かりやすくまとめました。
症状のセルフチェックや発症しやすい人の特徴も解説するので、メニエール病の可能性がある人は必見です。
メニエール病とは
メニエール病とは、耳の中にある「内耳」という平衡感覚を司る器官に、リンパ液が溜まっている状態です。
平衡感覚に異常が生じ、自分や周囲がぐるぐると回っているような「回転性のめまい」が起こります。
メニエール病の症状チェック
自分や周囲がぐるぐる回るようなめまい
めまいの長さが、「数十分〜数時間以上」
何度もめまいを繰り返す
耳鳴りがする
難聴発作(突然、耳が聞こえにくくなる)
耳の閉塞感
吐き気・嘔吐
上記の症状に当てはまる場合、メニエール病の可能性があります。
一旦治まっても再発することが多く、症状が繰り返しあらわれます。
▼参考
MSDマニュアル
メニエール病について
メニエール病の原因は?どんな人がなりやすい?
原因やきっかけは今のところわかっていませんが、疲労・ストレス・睡眠不足などで発症しやすいといわれています。
30〜50歳代の女性
自分をおさえ、熱心に仕事をする人
ストレスを溜め込みやすい人
忙しい生活をしている人
に多い傾向があります。
メニエール病を疑う場合の対処法
ゆっくり休養を取ることが大切ですが、まずは医療機関で原因を確認しましょう。
メニエール病は、治療しないと治らない病気です。
放置すると、最初は片方の耳のみだった症状が、もう一方の耳にも発症してしまう恐れがあります。
病院で受ける治療法
メニエール病は、薬を使って治療することが多いです。
浸透圧利尿薬・循環改善薬・抗不安薬などを使用します。
「内耳へ直に薬を投与する治療」や「手術療法」を行うこともあります。
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治るまでの期間は?
早期に治療を開始できれば、2週間程度で快方に向かう人も多いです。
※治療を受けても完全には治らないケースもあります。
早く治すためにはセルフケアも大切!
ストレスを溜めない
6~8時間の睡眠をとる
水分補給をする
上記3つを心がけましょう。
水を多く飲むことで、内耳の水はけがよくなると考えられています。
男性は1日2リットル、女性は1日1.5リットルほどの水分をとりましょう。
一度に大量に水分を補給するのではなく、こまめに水分をとることが大切です。
病気③ 更年期障害
更年期障害とは、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌量が急激に低下した状態です。
女性ホルモンの分泌が減ると、自律神経のバランスが崩れやすくなるため、平衡感覚がおかしくなることがあります。
家庭や仕事などで「ストレスが多い生活を送っている人」は、発症しやすいといわれています。
更年期障害の症状チェック
- ほてり
- のぼせ
- めまい・動悸
- 不眠
- イライラする
- 真面目・几帳面な性格の人
更年期障害のセルフケア
- 大豆製品を積極的にとる
- 1日20分の有酸素運動
- アロマを取り入れる
イソフラボンは女性ホルモンである「エストロゲン」と似た働きをもつため、更年期障害の軽減に効果があるといわれています。
納豆や豆乳など、「イソフラボン」が豊富な大豆製品を積極的に取り入れましょう。
また、有酸素運動も更年期障害の症状緩和に役立つと考えられています。
ヨガ・水中歩行・ウォーキングなどの有酸素運動を、毎日20分程度行いましょう。
更年期の症状に役立つアロマを生活に取り入れるのもいいでしょう。
ゼラニウム・クラリセージ・ラベンダーなどの香りがおすすめです。小さな容器やスプレーなどでアロマオイルを持ち運ぶと、いつでも香りを楽しめますよ。
病気④ 良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症とは、耳の中にある耳石(カルシウムの小さな粒)が半規管に入ることで、めまいが生じる病気です。めまいによって、平衡感覚がおかしく感じることがあります。
「デスクワークの人」や「低い枕を使っている人」に多い病気といわれています。
良性発作性頭位めまい症の症状チェック
- ぐるぐると目が回る
- 吐き気・嘔吐
- 慢性的な中耳炎の人
- 寝返りが少ない人
- 運動不足の人
良性発作頭位めまい症のセルフケア
耳石を半規管から出すために、頭をさまざまな方向に動かしましょう。
積極的に頭を動かすことで、めまいの症状を和らげることができます。
耳石が半規管に落ちないように、枕は高さがあるものを使いましょう。
また、運動を習慣づけることも効果的と考えられています。ウォーキングや軽いジョギングなど、息が上がる程度の運動を行いましょう。
1日20分程度、無理のない強度で行うと続けるとよいです。
病気⑤ 起立性低血圧症
起立性低血圧症になると、起きたときや急に体を動かしたとき、長時間立っているときなど、突然目の前が暗くなりフラッとします。
急に立ち上がるなどの動作で、脳に届く血液量が減ると、めまいを起こしてしまいます。
「寝不足」「不規則な生活を送っている」「心臓がよくない」という人に発症しやすいです。
起立性低血圧症の症状チェック
起立性低血圧症のセルフケア
- 水分・塩分補給
- 弾性ストッキングを着用する
- 下半身を使った運動をする
起立性低血圧症は、水分不足が原因となることがあります。
1日に1.5~2リットルほど水分を補給し、塩分も十分とるようにしてください。
足に血液が溜まるのを防ぐため、弾性ストッキングを着用するのもおすすめです。
なお、「立っていることが多い日中」だけ着用してください。
運動すると血流がよくなるので、低血圧の改善につながります。
「散歩」「水中歩行」など、特に下半身を動かせる運動をしましょう。
「めまい・ふらつき」が見られる場合は躊躇せず病院へ!
「めまい」や「ふらつき」によって日常生活に支障をきたしている場合は、内科で受診してください。
例えば、メニエール病を治療せずに放置していると、聴力が低下するおそれがあります。
症状の悪化を防ぐためにも、違和感がある場合は早めに病院を受診してください。
病院は何科?
病院は、内科で受診しましょう。
メニエール病や、良性発作性頭位めまい症が疑われる場合には、耳鼻いんこう科で受診してください。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2021-01-29
体がふらついて、まっすぐ歩けない…。これは何かの病気?
なぜふらついてしまうのか、お医者さんに解説してもらいました。
危険な病気の可能性もあるので、放置しないで、自分の症状をチェックしてみましょう。
まっすぐ歩けないのはなぜ?
平衡感覚の機能が低下したり、脳への血流量が減ったり、疲れていたりすると、体がふらついてまっすぐ歩けなくなります。
平衡感覚の機能低下は、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、高血圧症・低血圧症、脳梗塞などによって起こります。
また、脳への血流量減少は、短期的には睡眠不足や強いストレス、長期的には脳梗塞などの疾病が影響して起こります。
ふらつくときの対処法
光の刺激を避けましょう。暗い部屋や日陰で目を閉じて、安静にしてください。
無理に歩こうとしないことも大切です。
この症状は要注意!すぐ病院へ
安静にして症状が治まるときは、一旦様子をみましょう。ただし…
症状を繰り返す
手足がしびれる
ろれつが回らない
といった症状がともなうときは、すぐに病院へ行きましょう。
病院は何科?
「まっすぐ歩けない」ときは、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
「ろれつが回らない」、「手足のしびれ」、「麻痺」を伴うときは、脳神経外科を受診してください。
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脳神経外科を探す
ふらつきが起こる「病気」
体がふらついてまっすぐ歩けないのは
良性発作性頭位めまい症
メニエール病
高血圧症・低血圧症
脳梗塞
の可能性があります。
それぞれ詳しく解説します。
原因① 良性発作性頭位めまい症
自分の意思と関係なく、眼球が動いたり、吐き気を感じたりします。
長時間同じ姿勢でいる、就寝中の寝返りが少ないなどが主な原因です。
人間が平衡感覚を保つのに必要な三半規管のリンパ液に、異物(耳石)が入ってしまい、めまいがおきている状態です。
良性発作性頭位めまい症の「対処法」
まずは安静にしましょう。
めまいが落ち着いたら、軽く頭の体操(頭を前後・左右に傾ける、横にひねる等)をしてください。
それで症状が落ち着いた場合は問題ありませんが、症状が続く場合は耳鼻いんこう科に相談するとよいでしょう。
原因② メニエール病
ストレス、睡眠不足、疲労、気圧の変化などが主な原因となって発症します。
ふらつき以外にも、難聴、耳鳴り、吐き気などが起こります。
メニエール病は、内耳にある組織にリンパ液が過剰に溜まり、水ぶくれが起こる病気です。
三半規管など平衡機能をつかさどる組織に、リンパ液が溜まっているため、通常通りの働きができなくなります。
メニエール病の「対処法」
ふらつくときの応急的対処としては、横になりましょう。
右耳に難聴がある→左耳を下にする
左耳に難聴がある→右耳を下にする
ただし、メニエール病は病院での治療が必要な病気です。症状が落ち着いたら、耳鼻いんこう科へ行きましょう。
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原因③ 高血圧症・低血圧症
血圧が高い状態、低い状態が慢性的に続く病気です。めまいが起こるほどではかなりの血圧異常が起きています。
高血圧症
症状:動悸・息切れ・むくみ など
原因:塩分の摂りすぎ、ストレス、運動不足、肥満、喫煙、遺伝 など
低血圧症
症状:疲れやすさ・だるさ・耳鳴り など
原因:糖尿病、甲状腺機能低下症などの合併症、遺伝 など
血圧に異常が生じると、脳への血流が悪くなります。
脳への血流が悪くなると、めまいとして症状が現われます。
高血圧症・低血圧症の対処法
まずは安静にしてください。
体のふらつきが慢性的に続く場合は、循環器内科を受診しましょう。
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原因④ 脳梗塞
血流が悪くなり、酸素や栄養が脳の一部へ行き届かなくなる病気です。
片側の手足の力が抜ける・片側の手足がしびれる・口がもつれるなどの症状があります。
脳へ酸素や栄養を運ぶ血流が停滞すると、回転性のめまいやふらつきが生じます。
乱れた食生活
喫煙
運動不足
生活習慣病(糖尿病や高血圧症)
によって動脈硬化が引き起こされ、脳梗塞を発症します。
脳梗塞の対処法
放っておくと命を落とす可能性があります。
すぐに循環器内科を受診しましょう。
循環器内科を探す
早期受診をおすすめする理由
体のふらつきは重い病気のサインかもしれません。
早期受診をすることで、命が助かる可能性が高くなります。ふらつきを感じたら速やかに病院へ行きましょう。
▼参考
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 めまい・平衡覚・顔面神経
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2020-12-02
ずっと車酔いみたいに気持ち悪い…。
これ、大丈夫?どうすればいいの?
不快な症状の原因と対処法を、お医者さんに聞きました。
病院に行くべきかどうかも解説します。
車酔いのような症状が続くのはなぜ?
ずっと車酔いのように気持ち悪いのは、「浮動性めまい」を起こしている可能性が高いです。
浮動性めまいは、内耳の三半規管の異常や、脳の病気などによって引き起こされます。
気持ち悪さをやわらげるには?
座る、横になるなど、楽な姿勢をとってしばらく休みましょう。
病院行くべき?
気持ち悪さが3日以上続く
頭痛がある
手が痺れる
という場合は、病院に行きましょう。
受診するのは何科?
まずは、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
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隠れた病気が疑われる場合は、他の科を紹介されることもあります。
また、頭痛や体の痺れがある場合は、脳神経外科、脳神経内科の受診をおすすめします。
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「浮動性めまい」を起こす病気
浮動性めまいが頻繁に起こる場合
内耳の異常
脳疾患
うつ病
などの病気の可能性があります。
これらの病気について詳しく解説していきますので、心当たりがある場合は病院で相談しましょう。
病気① 内耳の異常
内耳に異常が生じると、平衡感覚が乱れてめまいや吐き気を引き起こします。
考えられる病気には、メニエール病や前庭神経炎などがあります。
なりやすい人
車に酔いやすい人は、内耳に異常を起こしやすいと言われています。
また、前庭神経炎はウイルス感染によって発症するため、免疫力が下がっている人はリスクが高まります。
主な症状
めまい
吐き気、嘔吐
気分不快 など
病気② 脳疾患
脳神経になんらかの障害が生じると、めまいや吐き気を引き起こします。
考えられる病気には、脳血栓などがあります。
なりやすい人
高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を患っている人は、合併症として生じやすいです。
塩分・油分の多い食事が好きな人、喫煙や過度な飲酒を習慣にしている人は、注意しましょう。
主な症状
頭痛
吐き気
めまい
手や足の痺れ など
病気③ うつ病
うつ病による自律神経の乱れが内耳に影響し、めまいや吐き気を起こす場合もあります。
精神的、肉体的ストレスが引き金となることが多い病気です。
なりやすい人
物事を真面目にとらえ、勤勉な人がなりやすいと言われています。
主な症状
めまい
吐き気
無気力
倦怠感
頭痛
自殺願望 など
「車酔いみたいに気持ち悪い」は早めに病院へ
命に関わる恐れもあるため、症状を放置しないようにしましょう。
車酔いのような気持ち悪さには、脳疾患など重い病気も考えられます。
早めに受診して原因を特定することで、症状の早期改善が期待できる場合があります。
▼参考
MSDマニュアル 浮動性めまいと回転性めまい