「耳の下が急に腫れてきた…これは何?」
考えられる原因と、腫れを抑えるための対処法を解説します。
病院に行く目安や“何科で受診すべきか”も確認しましょう。
監修者
経歴
大正時代祖父の代から続く耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療のほか、京都大学医学部はじめ多くの大学での講義を担当。マスコミ、テレビ出演多数。
平成12年瀬尾クリニック開設し、院長、理事長。
京都大学医学部講師、兵庫医科大学講師、大阪歯科大学講師を兼任。京都大学医学部大学院修了。
耳の下が急に腫れてきた…これって大丈夫?
耳の下の腫れが一時的ですぐ治まれば、問題ないことが多いです。
一旦様子を見てみましょう。
ただし、痛みが2~3日続く、他にも発熱がある、お飲むときや食事のときにつらいなどがある場合は、「耳下腺炎」になっている可能性があります。
「耳下腺炎」は放置すると、症状が悪化する可能性があり要注意です。
一度医療機関で検査を受けましょう。
耳の下が急に腫れるのは「耳下腺炎」の可能性大
耳下腺炎は、耳下腺がウイルスや細菌に感染することで、耳の下が腫れます。
片方もしくは両方の耳の下が腫れ、皮膚が赤くなることがあります。
耳の前に痛みがでる耳下腺炎には、次の2種類があります。
- おたふく風邪
- 化膿性耳下腺炎
それぞれ詳しく解説します。
おたふく風邪の症状
おたふく風邪は、片方、もしくは両方の耳の下が腫れて痛む、発熱などの症状がみられます。
おたふく風邪は、3~6歳の子どもに多いです。
2~3週間の潜伏期間があり、発症してから48時間が症状のピークとされています。
\こんな症状もでるかも/
おたふく風邪の原因
おたふく風邪は、ムンプスウイルスへの感染が原因で発症します。
子どもに多いですが、ムンプスウイルスは感染力が高いため、大人でもかかることがあります。
大人が発症すると症状が重くなる傾向があるため、注意が必要です。
化膿性耳下腺炎の症状
化膿性耳下腺炎は、片方の耳の下が腫れて痛みます。両耳におこることはありません。
また、耳の下の皮膚が赤くなるなどの症状もみられます。
他にもこんな症状があります。
- 腫れた部分を押すと膿が出てくる
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
化膿性耳下腺炎の原因
口の中から耳下腺に細菌が入ることが原因で発症します。
化膿性耳下腺炎は、どの年代でもかかる可能性はありますが、高齢者に多い病気です。
術後で口腔内衛生が良くない、唾液の分泌が低下している、唾石症になっている人も発症しやすいです。
唾石症(だせきしょう)
唾液腺や導管の中に唾石と呼ばれる石ができることで起こります。唾石は、砂粒くらいの小さなもの~数cmにまで及ぶものまであります。食べ物を食べようとしたときや、食べているときに、唾液腺のある部分が腫れて、強く痛みます。
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「片方の耳の下が痛い…。大人の場合、原因は何?」
症状から考えられる病気を、お医者さんが解説します。
病院に行く目安や、何科で相談すべきかを確認しましょう。
なぜ?片方の耳の下が痛い…
片方の耳の下が痛い場合、「化膿性耳下腺炎」を発症している可能性があります。
化膿性耳下腺炎とは、耳の下の「耳下腺」という部分に炎症が起きている状態です。
耳の下が、痛くなったり、腫れたりします。
「化膿性耳下腺炎」は早期治療が大切な病気です。
化膿性耳下腺炎ってどんな病気?
「化膿性耳下腺炎」を発症すると、通常は耳の下が腫れます。
その他にも次のような症状がでることがあります。
チェックしてみましょう。
主な症状
耳の下が痛い
耳の下が腫れる
皮膚が赤くなる
口のなかに膿の混じった唾液が出る
リンパ節が腫れる
リンパ節を押すと痛い
頭が痛い
熱が出る
倦怠感がある
化膿性耳下腺炎の原因は?
「化膿性耳下腺炎」は、
不規則な生活
バランスの偏った食事
睡眠不足
疲労やストレスの蓄積
などによる、免疫力の低下が発症の原因です。
唾液の分泌が著しく低下し、口腔細菌が排世管から耳下腺に感染することが原因です。原因となる菌の多くは、黄色ブドウ球菌・溶連菌・肺炎球菌です。
化膿性耳下腺炎を発症しやすいのはどんな人?
「化膿性耳下腺炎」は、
免疫力が低下している
唾液の分泌が低下している
口腔内の衛生が良くない
手術後
の人が、発症しやすいです。
どの年代でもかかる可能性はありますが、高齢者に多いです。
また、上記の他にも「唾石症」の人も発症しやすいです。
唾石症(だせきしょう)とは
唾液腺や導管の中に唾石と呼ばれる石ができることで起こる病気です。
唾石は、砂粒くらいの小さなものもあれば、数cmにまで及ぶものまであり、さまざまです。唾石症の起こる原因としては、唾液の停滞や導管の炎症や、唾液の性状の変化などです。
食べ物を食べようとしたときや、食べているときに、唾液腺のある部分が腫れて、激しく痛みます。しばらくすると、少しずつ症状が消えていきます。
自然に治る?病院行くべき?
残念ながら、「化膿性耳下腺炎」は自然には治りません。
医療機関で処方してもらえる抗菌薬を使用して治療する必要があります。
そのうえで、安静にし、しっかりと水分をとりましょう。
「化膿性耳下腺炎」の症状が見られる場合、はやめに医療機関を受診しましょう。
「もしかして化膿性耳下腺炎かもしれない…?」と自己判断では難しい場合も医療機関に行って検査をしましょう。
こんなときは要注意!
膿が溜まっている状態(膿瘍)ができている場合には、切開して膿を出す治療が必要になります。
切開は、局所麻酔をして行います。 個人差はありますが、麻酔の際にほかの注射と同じように、少々痛みを感じることもあります。
病院は何科?
「化膿性耳下腺炎」の場合は、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
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放置はNG!早めの治療がオススメ
「化膿性耳下腺炎」は、医療機関での治療が必要な病気です。
症状がみられるにも関わらず放っておくと、症状が悪化する可能性があります。
症状が比較的軽い場合は、お薬(抗菌薬)で治療できる場合があります。
ただし、症状が悪化して膿が溜まっている状態(膿瘍)ができている場合には、切開して膿を出す手術が必要になるケースもあります。
指定伝染病の「おたふく風邪」との見極めも必要になるため、「化膿性耳下腺炎」の症状がある場合、はやめに医療機関を受診しましょう。
おたふく風邪
おたふく風邪は、正式には流行性耳下腺炎といい、ムンプスウイルスの感染症のことです。ムンプスウイルスは、感染力が高いため、免疫が低下していると、大人でもかかります。大人が発症した場合、症状が重くなる傾向があります。
少しでも気になる症状がある場合は、はやめに医療機関を受診するようにしましょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
耳鼻咽喉科 アレルギー科 いぬかい耳鼻科クリニック
公益社団法人 日本口腔外科学会 唾石症
耳下腺炎は“早期の治療”が大切
おたふく風邪の場合でも、化膿性耳下腺炎の場合でも早期治療が大事です。
自己判断で対処せず、すみやかに医療機関を受診しましょう。
「おたふく風邪」を早期治療できると…
早期治療は、不妊症や流産の予防となります。
おたふく風邪は、感染力が強いです。
大人が感染すると、重度の合併症を引き起こす可能性もあります。
女性が流行性耳下腺炎(おたふく風邪)を放置すると、卵巣炎を併発することがあり、不妊症の原因となります。
また、妊娠早期に感染すると、流産のリスクがあります。
「化膿性耳下腺炎」を早期治療できると…
早期受診することで、症状の悪化を防ぎ、手術での治療をしなくて済む可能性があります。
病院は何科?
耳の下が急に腫れてきたら、耳鼻いんこう科を受診しましょう。
少しでも気になる症状がある場合には、はやめに医療機関を受診するようにしましょう。
耳鼻いんこう科を探す
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「耳の下あたりが腫れてきたけど大丈夫?」
「すぐに病院へ行くべき?」
耳下腺炎の原因や正しい対処法を医師に伺いました。
放置した場合のリスクや病院に行く目安もお伝えします。
大人の耳下腺炎ってどんな症状?
耳の下あたりの腫れ・痛みの症状がある場合、耳下腺炎が疑われます。
両耳に発症する場合、片側から症状出て1~2日後に反対側に発症するケースが多いです。
<耳下腺炎の痛みの特徴>
腫れている部分を押すと痛む
酸味が強いものを食べると痛みが増す
痛みで口を開きづらい
※耳の下だけでなく、顎の下が腫れて痛むこともあります。
こんな症状を伴うことも
頭痛、めまい
発熱(高熱がでることもある)
耳鳴り、難聴
濃汁が混ざった唾液が出る
耳の下をつまんで押すと膿が出る
「熱が出ない」こともある
「不顕性感染」の場合、感染しても熱が出ないケースがあります。
不顕性感染とは、細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず、感染症状を発症していない状態です。一般に耳下腺炎は、感染しても必ず発症するとはいえず、大部分がこの不顕性感染です。この場合は、一旦はお家で様子をみても問題ないと考えられます。
何が原因で発症するの?
耳下腺にウイルス・細菌が感染することで発症します。
原因となる病原体には、ムンプスウイルス、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、溶連菌などが挙げられます。
こんな人に発症しやすい!
免疫力や体力が低下している人
睡眠不足の人
疲労がたまっている人
高齢者
口の中の衛生状態が悪い人
人にうつる?
耳下腺炎には人にうつりにくいタイプと、うつしやすいタイプがあります。
うつりやすいのは、ムンプスウイルスによる「流行性耳下腺炎(おたふく風邪)」のケースです。おたふく風邪は、基本的には「1度かかったら2度はかからない」ので、過去におたふく風邪にかかったことがある人は、おたふく風邪ではなく、人にうつらない「反復性耳下腺炎」の可能性が高くなります。
※「うつらない耳下腺炎」と「うつる流行性耳下腺炎」は、症状は非常によく似ています。一般の方が症状で判断するのは難しいです。そのため「うつしてしまうかも」という前提で予防の行動をとるようにしましょう。
この症状は「流行性耳下腺炎(おたふく風邪)」かも
耳の下のひどい腫れ
酸っぱいものを食べると痛む
高熱がでる
耳鳴り
難聴
※片方の耳下腺に腫脹が発生して、1~2日後に反対側にも発生する場合が多いです。
おたふく風邪を予防する方法は?
おたふく風邪は二次感染のリスクが高いので、注意したいものです。予防には、マスクの着用・うがい・手洗いも有効ではありますが、感染力がとても強いウイルスなので、積極的な予防には、予防接種が大切です。予防接種を受ければ、万が一発症しても軽い症状で済みます。予防接種1回では免疫がつかない場合があるので、2回接種を行ってください。
どう対処する?病院行くべき?
耳下腺炎が疑われる場合は、医療機関の受診をおすすめします。
診断を受けて症状に合った治療を受けることで、より早い改善が期待できます。
すぐ病院に行けないときは…
安静にして患部を軽く冷やすことで、痛み・腫れの症状が緩和される場合があります。
また、こまめな水分補給を行い、硬い食べ物や酸味がある食べ物は控えてください。
こんな症状は早めに病院へ
高熱が出ている
痛み、腫れがひどくなっている
腹痛、頭痛を伴う
吐き気・嘔吐
首の後ろが硬くなる
体の麻痺、けいれん
意識障害を起こす
といった症状が出現している場合は、早急に医療機関を受診してください。
特に流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)が悪化すると、音を感知する神経が破壊され、難聴を引き起こす恐れがあります。
また、ウイルスが血流やリンパに入って体中に広がり、髄膜炎・膵炎・脳炎・卵巣炎・精巣炎といった重い合併症を患うケースも稀にあります。
高熱が3~5日ほど続く場合は、合併症の疑いが強くなるため、必ず受診するようにしましょう。
病院は何科?
大人で耳下腺炎が疑われるときは、内科を受診しましょう。
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どんな治療を受けるの?
飲み薬(鎮痛解熱剤や抗生物質など)で治療することが多いです。
口の中の衛生環境の悪さが原因の場合は、虫歯の治療や口の中のクリーニングを行い、清潔な状態にするケースもあります。
流行性耳下腺炎の場合、特効薬がないため、出現している症状を緩和させる鎮痛解熱剤などで対症療法が行われます。
細菌感染が原因で発症している場合には、抗生物質を用いた治療が行われるケースがあります。
どのくらいの期間で治る?
完治までの期間には個人差がありますが、1~2週間程度で症状が改善していくケースが多いと考えられています。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 大人がなると危険!!おたふくかぜ ~感染症~