生理の量が少ないことと不妊にどのような関係があるのか、お医者さんに聞きました。
「なぜ生理の量が減るの?」
「対処法はある?」
といった疑問にもお答えします。
監修者
経歴
医療法人社団 石野医院
日本医科大学
日本医科大学付属病院
日本医科大付属第二病院
国立横須賀病院
東部地域病院
石野医院
「生理の量が少ない」と「不妊」の関係
生理の量は、「女性ホルモンの分泌量」と関係しています。
生理に関わる女性ホルモン「エストロゲン」や「プロゲステロン」の分泌量が減ると、生理の量も減り、妊娠しづらくなります。
女性ホルモンの働きって?
エストロゲンは、毎月の生理に関わる女性ホルモンです。
毎月の生理には、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの2種類が関係しています。
生理に関わる「2つの女性ホルモンの働き」
◆エストロゲン
…子宮内膜を厚くする働き
◆プロゲステロン
…子宮内膜を剥がし、子宮の中を綺麗にする働き
「エストロゲン」の分泌量が多くなり子宮内膜を厚くした後、「プロゲステロン」の働きで不要になった内膜を剥がし、経血として外に出すことで生理が起こります。
生理が少ない場合「ホルモンバランスが崩れている」可能性アリ
生理の量が少ない場合、女性ホルモン「エストロゲン」「プロゲステロン」のの分泌量が減っている可能性があります。
エストロゲンの分泌量が少ないと…
子宮内膜を厚くする働きや弱まり、経血量が減る(生理の出血量が少なくなる)。
プロゲステロンの分泌量が少ないと…
内膜が剥がされずに溜まっていくという現象が起きて、経血の量が減る(生理の出血量が少なくなる)。
ホルモンバランスが崩れて、生理の量が減っているというのは、“妊娠しづらい状態”といえます。
妊娠を望んでいる女性は、女性ホルモンバランスを整えることが大事です。
ホルモンバランスは、なぜ乱れるの?
ホルモンバランスが乱れる主な原因は、ストレス・疲れ・食生活の乱れ・睡眠不足です。
女性のホルモンバランスはとてもデリケートなため、ちょっとしたことですぐに乱れてしまいます。
また、加齢が原因になることがあります。
(加齢とともにエストロゲンの分泌量が減り、生理の量も減っていきます。)
ホルモンバランスが乱れているサイン
- PMS(月経前症候群)の症状がひどくなる
- 生理痛がひどくなる
- 経血の量が少なくなる
- 経血の量が多くなる
- 不正出血が起こる
- 生理周期が乱れる
- 3ヵ月以上生理が止まる(無月経)
- 生理周期が短くなる(24日以下)
- 自律神経失調症になる(めまい・ふらつき・倦怠感など)
※PMS…生理開始3~10日前に起こる、腰痛・腹痛・頭痛などの身体的不調・精神的不調の症状。生理が始まると症状が改善するのが特徴。
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PMSってどんな症状が出るの?
つらいときはどうすればいい?
PMSの主な症状やセルフケア方法など、分かりやすく解説します。
病院へ行く目安も紹介するので、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
PMSとは
PMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)とは、月経の3~10日前から始まり、月経が始まると解消する心や体の不調のことです。
PMSが生じる原因は明らかにされていませんが、排卵後に起きる女性ホルモンの分泌量の変化や、ストレスなどが影響しているといわれています。
PMSは誰でもなるの?
日本では、月経のある女性のうち約7~8割が月経前に何らかの症状を抱えています。
また、100人中5人程度の人が「生活に支障が生じるほどつらいPMS」であるといわれています。
思春期の女性でPMSを示す割合が多い、という報告もあります。
PMSになりやすい人は?
真面目
几帳面
我慢しがち
上記に当てはまる人は、PMSになりやすいといわれています。
PMSの主な症状
頭痛
腹痛(下腹部痛)
腰痛
めまい・のぼせ
吐き気
乳房の張り感、痛み
食欲低下
倦怠感
イライラする
など
生理が始まると、「症状が軽くなる」「無くなる」という特徴があります
「PMS」と「PMDD」の違いは?
生理周期に伴う心と体の不調をまとめて、PMS(月経前症候群)と呼びます。
その中でも心の不調が強く出る場合は、PMDD(月経前不快気分障害)と診断されます。
PMSの対処法
1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
お腹を温める
ストレッチや軽い運動をする
PMSの症状には、上記の方法で対処するとよいでしょう。
対処法① 1日3食、栄養バランスのとれた食事をとる
PMSの症状は、ホルモンバランスの乱れにより悪化しやすくなります。
主食・主菜・副菜の揃った食事をとることで、栄養をバランスよく摂取でき、ホルモンバランスが整いやすくなります。
和定食のイメージで食事をとると、栄養バランスが整いやすいです。
食事を抜くと、体のリズムが乱れやすくなり、エネルギー不足になる可能性があるので、きちんと3食とるようにしましょう。
対処法② 1日6~8時間程度の質のよい睡眠をとる
ホルモンバランスを整えるためには、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
毎日6~8時間程度、質のよい睡眠をとることを心がけましょう。
ただし、理想の睡眠時間には個人差があります。朝目覚めたときに疲れがとれていて、日中に眠気を感じない状態になるように心がけましょう。
「深い眠り」を得るためのポイント
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
昼寝は15時までに30分以内にする
夜は11時(遅くとも12時)には寝る
夕方以降は「カフェインを含む食品」を控える
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませる
飲酒は、就寝の3~4時間前までにする
就寝の2~3時間前に入浴する
就寝前はできるだけパソコン・スマホを触らない
対処法③ お腹を温める
お腹を温めると腹痛の緩和につながります。お腹にカイロをあてて患部を温めるとよいでしょう。
温かい飲み物を飲んで、体の中から温めることもおすすめです。
対処法④ ストレッチや軽い運動をする
PMSによる頭痛には、肩や首回りの筋肉をほぐし、血流をよくすることがおすすめです。
ストレッチや軽い運動で、体をほぐしましょう。
ただし、体を動かしていて、ズキンズキンと血流に合わせて頭痛が起きたら、体を動かすのをやめて楽な姿勢で休みましょう。
病院に行く目安
体や精神面の不調によって「つらい」と感じているときは、医療機関の受診をおすすめします。
特に、
PMSのつらい症状が毎月起こる
日常生活や対人関係に支障が出ている
痛みや倦怠感が重く、仕事や学校を休むことがある
といった場合は、早めの受診をおすすめします。
PMSが悪化すると、脳機能のバランスを崩し、うつ病を発症するケースもあります。
心当たりのある方は、放置しないようにしましょう。
PMSの治療法
PMSで受診した場合、病院では飲み薬・低用量ピル・漢方薬などを用いて治療をします。
低用量ピルを使うと、生理前と後のホルモンの量の差を軽減できるため、PMSの症状がかなり楽になります。
ただし、妊娠を望んでいる場合には、低用量ピルが使用できないため、生活指導を中心とした治療になります。
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ホルモンバランスの整え方
女性ホルモンを整える基本は、「生活を整えること」です。
- 規則正しい生活を心がける
- 1日しっかり睡眠時間を確保し、質のよい睡眠をとる
- 栄養バランスの良い食事を摂る
- お腹や足などを温め、血行を良くする
- ウォーキングなど軽い運動を1日20~30分程度行う
- ストレスを溜めない
といったことを意識してください。
残念ながら「◯◯を食べれば大丈夫」「~~しておけばOK」というものはないため、日常生活の意識を変えることが必要です。
注意!生理の量が少ないのは「病気」のケースも
生理の量が少ないのは、“病気”が隠れているケースがあります。
<女性ホルモンの分泌に異常が起こる病気の例>
- 多嚢胞卵巣症候群
- 甲状腺機能低下症(橋本病)
- 下垂体腺腫
- 黄体機能不全
<生理の量が少なくなる子宮の病気の例>
生理の量が少なく、不妊でお困りの場合は、婦人科や産婦人科に行って相談してみましょう。
病気が隠れていないか、検査を受ける必要があります。
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病気①多嚢胞卵巣症候群
卵巣に小さな卵胞が詰まることで排卵に障害を起こすため、経血の量が減ります。
原因:卵巣内の男性ホルモンが多いことが原因です。
その結果、女性ホルモンのバランスが崩れ、排卵障害が起こります。
その他の症状:無月経・不妊・肥満・にきび・多毛・糖代謝異常など
病気②甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺の機能が低下するとエストロゲンの分泌量が低下し、子宮内膜が正常に作られなくなり経血量が減ることがあります。
原因:自己免疫の異常が原因だと言われています。
その他の症状:疲れやすい・肥満・脱毛・抑うつなど
病気③下垂体腺腫
脳の下垂体に腫瘍ができ、ホルモンの分泌に異常をきたします。
母乳の分泌に関与している「プロラクチン」というホルモンが大量に分泌されると、妊娠していないのに母乳が出たり生理が止まったりします。
原因:現在、詳しい原因はわかっていません。
その他の症状:無月経・月経不順・不妊など
病気④黄体機能不全
黄体の働きが悪くなる病気です。
排卵後に卵胞からプロゲステロンの分泌が十分にされなくなるため、経血の量が減ります。
原因:現在、詳しい原因はわかっていません。
その他の症状:月経周期の短縮・不正出血・不妊・流産などの症状が起こります。
病気⑤子宮腔癒着症
子宮内膜が炎症を起こし、内膜同士がくっつく病気です。
そのため、子宮内膜が十分な厚さにならず、経血の量が減ってしまいます。
原因:帝王切開や妊娠中絶など子宮に関する手術や、結核菌など
その他の症状:着床不全・流産・癒着胎盤など
病気⑥子宮発育不全
子宮が十分に発育していない病気です。
子宮内膜が適当な厚さにならないため、経血の量が少なくなります。
原因:女性ホルモンの生産不足や生まれつきの子宮の形成異常が原因と考えられています。
その他の症状:月経不順、月経困難、不妊、流産など
妊娠を望んでいる方は、「早めに病院で相談を」
早めに病院を受診することで、妊娠しづらい原因となっている他の病気が見つかるケースや、妊娠しやすい状態にすることができます。
病気の発見が遅れると、不妊や子宮・卵巣摘出手術が必要になることもあります。
経血量だけでなく、生理痛など他の症状がある場合は、一度病院へ行くことをおすすめします。
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2021-06-18
「生理が3日で終わってしまった…」
「生理の出血量が少ないのは不妊症のサイン?」
生理期間と不妊症の関係性をお医者さんに聞きました。
男性の不妊症についても解説します。
※2022年4月からは不妊治療の標準治療が保険適応になりました。
本文は不妊治療が保険適応以前の記事です。
生理が3日で終わると不妊のリスクが高まる?
生理が3日で終わりました…。
これって不妊のリスクは高いのでしょうか?
月経が3日で終わるのは正常範囲なので、不妊のリスクが高いわけではありません。
ただし、2日以内で終わる場合は不妊のサインである可能性があります。
「自分が不妊症なのかどうか」は自己判断ができないことなので、妊娠を望んでいる場合は医療機関で診察を受けましょう。
月経の定義
正常な月経周期:25-38日(変動は前後6日以内)
期間:3~7日(平均4.6日)
月経持続日数の異常
過短月経:出血日数が2日以内
過長月経:出血日数が8日以上
経血量:20~140mL
生理の「出血量が少ない」ときは要注意!
生理の出血量が少ない場合、ホルモンバランスが崩れていたり、病気を発症していたりする可能性があります。
考えられる病気
多嚢胞卵巣症候群
甲状腺機能低下症(橋本病)
下垂体腺腫
黄体機能不全
子宮腔癒着症
子宮発育不全 など
婦人科で相談する目安
生理が2日以内で終わってしまうことが2~3か月以上続く場合や、定期的に性交渉を行っていても1年以上妊娠しない場合は、一度婦人科で相談しましょう。
女性ホルモンの分泌の異常や受精卵をキャッチする働きのある「子宮内膜」が充分に育っていないなどの原因があると、妊娠しづらくなることがあります。
他にも、こんな症状があれば病院へ
極端に痩せている
生理周期が一定ではなく乱れている
生理の出血量が不規則である
生理の出血量が少ない
生理痛が重い
不正出血が起こる
腹痛や腰痛が起こる
性感染症に感染している
など
不妊治療の初診の費用目安
不妊治療の初診は、今は保険適用外です。(2021年5月現在)
そのため、初診料+検査費用で1万円~2万5千円ほどかかると考えておきましょう。
※受診する医療機関や選択する治療によっても料金は異なります。
早めに婦人科で相談するメリット
年齢が若い状態での妊娠の方が、体への負担も少ないことが多くあります。
高齢出産はリスクが多いので、妊娠を望んでいる場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
病気が影響している場合、放置すると病気が進行するリスクがあります。
病気の進行によって、さらに妊娠しにくくなることがあるので、一度婦人科や産婦人科へ行きましょう。
お医者さんには、なんて言えばいい?
不妊症が疑われる時、初診では医師にどのようなことを伝えればよいでしょうか。
妊娠を望んでいるということ
直近2~3ヶ月の月経の周期
月経の量
直近2~3ヶ月の基礎体温
生理時の体調不良
生理痛の有無
など、あなたが気にっている症状をお伝えください。
夫婦で行くべき?ひとりでもよい?
夫婦で行った方がよいでしょうか?
おひとりでもかまいません。
お二人のスケジュールが合えば、ご一緒に来院されるといいでしょう。
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※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
公益社団法人日本産婦人科学会 不妊症