「更年期になって太ってきた…」
「同世代で痩せていく人もいるのに…」
更年期で痩せる人と太る人の違いを、栄養士さんに聞いてみました。
食事や運動など、痩せたい人はまず何からやるべきかも解説します。
監修者
株式会社Luce
栄養士・食育栄養インストラクター
神原 李奈先生
経歴
株式会社Luce・健康検定協会 所属
CA(客室乗務員)の仕事をきっかけに、健康と食の強い結びつきを実感し、食の世界に興味を持つ。大手料理教室の講師の経験を経て、栄養士を目指すことに。栄養士免許を取得後の現在は、現役CAとして世界中を飛び回りながら、栄養士として健康や食に関する情報を発信している。
更年期に痩せる人と太る人…何が違う?
更年期に痩せる人と太る人は、食事、運動、生活リズムなどの日頃の習慣の違いが大きいと考えられます。
更年期に“痩せる人”の共通点
- 食事のバランスや食べる順番を意識している
- 運動習慣がある
- 食欲不振に陥っている
など
更年期に“太る人”の共通点
- 食事の量や内容が若い頃と変わらない
- 更年期のイライラにより食べすぎている
- 運動習慣がない
など
更年期のダイエットは「若いときより難しい」といわれる理由
若い頃とは異なり、
- 基礎代謝が下がる
- 自律神経が乱れやすい
- 女性ホルモンの減少により脂質代謝が低下する
といった状態になるため、更年期のダイエットは難しいといわれています。
まずは、「食生活の見直し」をしよう
更年期で太ってしまった人は、
- 1日3食、バランスのよい食事をとる
- 副菜→主菜→主食の順で食べる
- 減塩を心がける
といった点を食事で心がけましょう。
更年期太りは「食生活」を見直すことで改善する可能性があります。
① 1日3食、バランスのよい食事をとる
主食、主菜、副菜の揃った食事を食べると、バランスよく栄養を摂れます。
「和定食」をイメージしたメニューを心がけましょう。
3食バランスのよい食事を心がけると、代謝がよくなって痩せやすい体になりやすいです。
また、全体量は「腹八分目」に収めるようにしましょう。
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食材例
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食事一回分の目安量
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副菜
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海藻/野菜/きのこ など
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生の時点で両手たっぷり
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主菜
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魚/肉/大豆製品 など
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片手分ほど
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主食
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米/麺類/パン など
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こぶしひとつ分以内
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「タンパク質」は、毎食取り入れよう
タンパク質は「筋肉を作る材料」になるため、基礎代謝を上げるうえで大切です。
また、タンパク質は消化に時間がかかるため、毎食しっかりとることで空腹を感じにくくなり、間食や次の食事のボリュームアップを防げます。
食事を抜くのは、逆効果になることも!
食事を抜いてしまうと、空腹感が強くなり、次の食事で食べ過ぎにつながってしまうことがあります。
また、空腹時に糖質を多く含むものをたくさん食べたり、最初に食べたりすると、血糖値の急上昇が生じ、脂肪が蓄積されやすくなってしまいます。
② 副菜→主菜→主食の順で食べる
食べる順番を工夫すると、食べ過ぎを予防でき、太りにくくなります。
特に「海藻」を食事の最初に摂るのがおすすめです。
海藻に含まれる水溶性食物繊維が、糖質や脂質、塩分の吸収を緩やかにするため、太りにくく、むくみにくくなります。
③ 減塩を心がける
- 味噌汁や煮物は、出汁をとって味をつける(塩分無添加の出汁を使いましょう)
- 調味料は減塩調味料を使う
- 麺類・煮物の汁は残す
- 醤油やタレはかけずに、少量つける
- 漬物、水産加工品(※1)・畜産加工品(※2)は控える
- 総菜、インスタント食品は控える
などを心がけて、減塩しましょう。
塩分を過剰摂取すると、むくみやすくなって太る原因になります。
減塩の物足りなさを感じたら、香味野菜やスパイス、酸味をプラスしましょう。
(※1)水産加工品の例
しらす、干物、スモークサーモン、いくら など
(※2)畜産加工品の例
ベーコン、ハム など
次に、生活習慣を変えてみよう
太りにくい体づくりには、
- 7~8時間の睡眠をとる
- 起きたら朝日を浴びて、規則正しい生活をする
- ストレスをこまめに発散する
など、「生活習慣」の見直しも大切です。
① しっかり睡眠をとる
睡眠時間の目安は7〜8時間です。しっかりと質のよい睡眠を心がけましょう。
睡眠不足の状態は、「食欲増進ホルモン」の分泌を促してしまうので要注意です。
\睡眠の質アップのためにできること/
- 夕食はできるだけ就寝2~3時間前までに済ませる
- 就寝2~3時間前にお風呂に入る
- カフェインを含む食品の摂取は、就寝5~6時間前までにする
- 就寝前のアルコールの摂取は控える
- 就寝前にスマホやPCでの作業は避ける
- 15時以降は昼寝しない
② 規則正しい生活をする
- 朝起きたら朝日を浴びる
- 食事は3食、規則正しく摂る(朝食は特に大切)
といった点を心がけ、生活のリズムを整えましょう。
自律神経が安定するとホルモンバランスが乱れにくくなり、減量しやすくなります。
不規則な生活は「むくみ」の原因にもなるので避けましょう。
③ ストレスをこまめに発散する
- アロマをたく
- お風呂にゆっくり浸かる
- 好きな音楽を聴く
- 友人や家族とおしゃべりする
などして、できるだけストレスを溜めないようにしましょう。
ストレスは、食欲を促すホルモンを分泌させてしまいます。
過食による肥満を避けるためにも、こまめなリフレッシュをおすすめします。
ストレス過食をしてしまうときは…
間食をしたくなったら、まずは水分補給をしてみましょう。
甘い香りのフレーバーティー(ノンシュガー、ノンカフェイン)がおすすめです。「ハーブティー」には、食欲抑制やリラックス効果が期待できるものもあります。
更年期についた脂肪を落とす方法
「有酸素運動」と「筋力トレーニング」を併せて行うとよいでしょう。
基本的には1回30分以上、週2回以上の運動をしましょう。
筋トレでは「下半身の大きな筋肉」を鍛えるのが効率的でおすすめです。
なかなか運動ができない人は、
などを日常生活の中で意識することから始めましょう。
有酸素運動は「ウォーキング」がおすすめ!
「正しいウォーキング」のフォーム
- 姿勢を真っすぐ伸ばして、頭は揺れないようにする
- 目線は真っすぐ20m先を見る
- 肩の力を抜き、リラックスする
- ひじを後ろに引くように腕を振る
- 踏み出す足はひざを伸ばす
- かかとから地面につける
簡単にできる有酸素運動では「ウォーキング」がおすすめです。
上記のような正しいフォームで歩きましょう。
背筋が伸ばすことで「背中」、腕をしっかり振ることで「二の腕」、お腹を引き締めて歩くことで「お腹周り」が鍛えられます。
筋トレは「スクワット」がおすすめ!
「スクワット」のやり方
- 脚を腰幅から肩幅に開いて立つ
- つま先は膝と同じ向きにする
- 手を胸の前で軽く組む
- 太ももと床が並行になるくらいまで、お尻を下げる
- お尻の力を抜かないようにしながら、ゆっくりと元の位置に戻す
1セット10回です。1日3セットを目安に行いましょう。
「スクワット」は下半身の大きな筋肉を鍛えられるのでおすすめです。
下半身の筋肉を鍛えると、基礎代謝を効率よく上げることができます。
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2022-03-31
「ランニングがつらい…」
「体が重くて走れない…」
ランニング中に体が重いと感じる理由を、栄養管理士さんに聞いてみました。
久しぶりに運動する人に向けたアドバイスもご紹介します。
「楽に走れるようになりたい」という方は必見です。
ランニングって体が重くてツライ…
ランニング中に「体が重い」と感じるのは、
運動不足で筋力が落ちている
体重が増えている
疲労が蓄積されている
といった原因が考えられます。
「筋力が落ちている人」は、脚を持ち上げて動かすなどのスムーズに体を動かす力が低下しているため、体が重たく感じます。
特に「体重が増えた人」は、重しを抱えているのと同じ状態になるため、より走りづらくなります。
またこの他にも、睡眠不足などによる「疲労の蓄積」も考えられます。
疲労が蓄積されていると、体を動かすためのエネルギーがなくなり、体が重く感じることがあります。
休みながらのランニングでもOK!
ランニングは、脂肪の燃焼・心肺機能の向上につながります。
ジムに行かなくても行えるため、運動不足の人も気軽に始めやすいでしょう。
ランニングを習慣づけると、血流や血糖値の状態が改善されて、糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながるといわれています。
久しぶりの運動は「ゆっくりと」始めよう
普段ランニングをしない人は、まずウォーキングくらいのゆっくりとしたスピードからはじめましょう。
疲れたら無理せず休憩を挟んでください。
体が慣れてきたら少しずつスピードを上げ、距離や時間も伸ばしていくとよいでしょう。
あなたの「運動習慣レベル」をチェック
こんな人は運動不足かも
座ってする仕事・家事が多い
歩く機会が少ない(1日6,000歩以下)
階段ではなくエスカレーターを使うことが多い
休日は家でゴロゴロしていることが多い
いつも車を利用している
軽い運動をしただけで翌日に疲れが残る
少し走っただけで息切れする
長時間歩くと膝や腰が痛くなる
座ったり、立ったりする動作がつらい
同世代の人と比較して歩くスピードが遅い
立ったまま靴下を履けない
お腹周りが太くなってきたと感じる
上記のチェック項目に、6つ以上当てはまると運動不足である可能性が高いです。
どれくらいで、楽に走れるようになる?
運動不足の人がランニングを始める場合、おおよそ2週間程度続けると、体が慣れてきます。
また、1か月程度経過すると走るのに必要な筋肉が育つため、走ることが楽に感じられるようになります。
久しぶりの運動前に「気をつける3つのこと」
久しぶりに運動する際には、
その① 運動前後のストレッチを欠かさない
その② 水分補給を忘れない
その③ 急に強度の高い運動を行わない
といったことに気を付けると、運動を継続しやすいでしょう。
その① 運動前後のストレッチを欠かさない
久しぶりに運動する人は、筋肉が凝り固まってうまく動かせないためケガをしやすいです。
運動を行う前後に、ストレッチで筋肉をほぐすようにしましょう。
「運動前のストレッチ」 → 体を温めると、ケガを防止する効果があります。
「運動後のストレッチ」 → 疲労物質である「乳酸」を流すこと、疲労の蓄積を防ぐ効果があります。
腕・肩甲骨のストレッチ
肩甲骨を回すように、左右の腕を軽く伸ばしながら回します。
肘に力を入れすぎないようにし、ゆっくりと回しましょう。
腰のストレッチ
両手を腰にあてて膝を曲げ、ゆっくりと左右交互に腰ひねります。
下半身のストレッチ
足を開脚して座り、両手は後ろの床に手をつきます。
片足をゆっくり立てるように引いて元に戻し、反対側の足も同じように動かします。
最後は両足を引いて、元に戻します。
その② 水分補給を忘れない
運動中は、通常よりも体の水分が失われます。
喉が渇いたら飲むのではなく、休憩時間など水分補給のタイミングを決めてこまめに補給するようにしましょう。
久しぶりの運動だと水分補給を忘れがちで、脱水症状や熱中症を起こしやすいです。
その③ 急に強度の高い運動を行わない
久しぶりの運動の時は、強度の低いものから徐々に体を慣らしていきましょう。
運動していたときと同じくらい動けると思っていても、体がうまく動かないことがあります。
また、ケガを招く恐れもあるため、強度は少しずつ高くするようにしましょう。
▼参考
e-ヘルスネット ストレッチングの効果
合わせて読みたい
2022-09-28
50代になってから体力が衰えてきた…。
運動不足を解消したい!
50代からの運動不足解消方法について、専門家に聞いてみました。
1日5分でできる体力アップの方法も紹介するので、体力をつけて運動不足を解消したい人は必読です。
50代からの運動不足解消方法
50代で運動不足を解消したい場合、ジョギング・ウォーキングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングを並行して行うとよいでしょう。
ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は全身の持久力を高める効果があります。また、筋トレは筋肉量減少を抑えることができます。
50代になると筋肉量が減少していき、基礎代謝量も徐々に減少していきます。少しずつでもいいので日常に取り入れていきましょう。
特に、
太ももの後ろの筋肉
お尻の筋肉
腹筋
背筋
などの大きな筋肉を鍛えるようにしましょう。。
運動不足が続くとこんなリスクが…!
運動不足が続くと、「糖尿病」「心臓病」「脳卒中」などの生活習慣病をはじめ、「認知症」「うつ」などの発症リスクが高くなります。
50代以降は、体力が衰えて、特に運動不足になりやすい傾向にあります。病気のリスクを避けるためにも運動習慣をつけるように心がけましょう。
毎日5分!無理せず体力をつけよう
ワイドスタンススクワット
トゥーレイズ(つま先立ち)
シットアップ(腹筋)
ヒップリフト(お尻上げ)
バードドッグ(四つ這いバランス)
上記の5つを無理のない範囲で行いましょう。
1日5分だけでも構いません。
おすすめの運動① ワイドスタンススクワット
足を肩幅の2倍に開く
(足先は斜め45度に開いておく)
お尻を後ろに引きながら、膝をつま先と同じ方向に曲げる
(上体は前傾姿勢で、足よりも膝が前に出ないようにする)
1秒キープしたら、ゆっくりと元の姿勢に戻る
スクワットをすると、「太もも」「お尻」「腹筋」「背筋」「ふくらはぎ」の筋肉を満遍なく鍛えることができます。
おすすめの運動② トゥーレイズ(つま先立ち)
肩幅に足を開く
つま先立ちになる
しばらくキープしてかかとを降ろす
つま先立ちをすることで、歩いたり走ったりする際に必要なふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。
また、かかとをおろすときに骨に刺激がいくため、骨粗しょう症予防にもつながります。
「歯磨きをしながら」「テレビを観ながら」など、すき間時間に“ながら運動”として取り入れると継続しやすいですよ。
おすすめの運動③ シットアップ(腹筋)
仰向けに寝て、両ひざを立てる
腰幅に足を開く
両手を太ももの上にのせて、手を滑らせながらゆっくりと上体を起こす
1秒キープしたら、ゆっくりと元の体勢に戻る
※上体を起こすとき、息を止めないようにしましょう。
腹筋を鍛えると、体幹が鍛えられることで姿勢がよくなり、転倒の予防にもつながります。
おすすめの運動④ ヒップリフト(お尻上げ)
仰向けに寝て手のひらを床につける
足は肩幅に開く
お尻をゆっくりと上げる
(背中・腰・足が一直線になるように)
3~4秒キープしたら、ゆっくりと元の体勢に戻る
※体が「く」の字にならないように、お尻をしっかり上げることが大切です。
この運動で、お尻・背中・太ももの筋肉を鍛えることができます。
特に下半身を鍛えられるため、ウォーキングやジョギングなどの運動をスムーズに行えるようになります。
おすすめの運動⑤ バードドッグ(四つ這いバランス)
四つん這いになる
右手・左足をまっすぐ前に伸ばす
(できるだけ遠くに伸ばす)
10秒間キープする
伸ばす手と足を逆にして、左手・右足をまっすぐ前に伸ばす
10秒間キープする
腹筋・背筋・お尻の筋肉を鍛えることができ、背中が丸くならず、正しい姿勢を保つことにつながります。
上記5つの運動を、1セット8~12回で実践しましょう。余裕がある場合は、それぞれの運動を一日に2~4セット行うといいです。
運動不足を乗り越えるには環境作りがカギ
睡眠環境を整える
一緒に運動する仲間を作る
運動のアプリや動画を利用する
対策① 睡眠環境を整える
就寝の1時間前から明るさを抑えた照明に切り替える
就寝直前にテレビ・スマホは見ない
就寝の3時間前までに夕食を済ませておく
などの工夫をして、睡眠の質を高めましょう。
質の高い睡眠をとることで、一日を活動的に過ごすことができます。
運動意欲が高まり、運動不足の改善につながるでしょう。
対策② 一緒に運動する仲間を作る
運動不足を改善したいと思っている友人や、家族を誘ってみるとよいでしょう。
運動に関するサークルやグループに参加してみるのもおすすめです。
仲間を作ることで、モチベーションを維持することができます。
「三日坊主になりやすい」「運動を始めても長続きしない」などの経験がある人は、仲間と一緒に取り組みましょう。
対策③ 運動のアプリや動画を利用する
トレーニングアプリや動画を利用して、様々な運動にチャレンジしてみましょう。
実施した運動の記録を取れるアプリもあり、こうしたアプリを活用することでモチベーションの維持につながります。
また、昨今では様々な筋トレ(ワークアウト)動画がインターネットで視聴できるようになりました。こうした動画の活用も、マンネリ化防止につながるためおすすめです。
▼参考
e‐ヘルスネット 厚生労働省 安全かつ効率的に「足腰」を鍛える方法
e‐ヘルスネット 厚生労働省 QOLの維持・向上に必要な大切な筋肉は?
e‐ヘルスネット 厚生労働省 標準的な運動プログラム 成人を対象にした運動プログラム
厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告 第3部生活習慣調査の結果