夏に流行する感染症、とびひ(伝染性膿痂疹)。
子どもに多い皮膚の感染症ですが、子どもから大人にうつる場合もあります。
「早く治したい」「なかなか治らなくて困っている」とお悩みの方も少なくないようです。
とびひを早く治す方法を、お医者さんに聞きました。
洗濯やお風呂の際の注意点や、家族にうつさないために気をつけることも伺ったので参考にしてくださいね。
監修者
経歴
北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長
を経て2024年JUN CLINIC横浜 就任
とびひは大人にうつる!
子どもから大人に、とびひがうつることはあるのでしょうか?
とびひは、大人にもうつることがあります。
大人にうつるのは、かさぶたタイプのとびひが多いです。
大人の場合、健康で免疫がしっかりしていればうつりにくいのですが、免疫力が低下しているとうつりやすくなります。特に高齢者は、皮膚も薄く皮膚のバリア機能も低下しているので注意が必要です。
溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因の場合は、かさぶたタイプのとびひになります。
子どもより、大人に多くみられます。季節に関係なく、一年中発症の可能性があります。厚いかさぶた・紅い斑点・米粒大の膿・発熱・のどの痛みなどを伴うとびひです。
大人のとびひの症状
※溶血性連鎖球菌が原因のとびひの場合
大人の場合は、①赤い腫れが②膿の入ったできものように変化し、さらに③厚いかさぶたになります。
発熱や頭痛、のどの痛みなどの風邪のような全身症状が出たりすることもあります。その後、快方に向かいます。
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2021-08-04
「お腹にブツブツができた…」
「かゆいけど、ダニが原因?」
市販薬の使用や病院に行く目安を医師が解説します。
かゆみの対処法やお腹にかゆみが出る病気についても聞きました。
お腹にかゆいぶつぶつが…!これはいったい何?
原因として「①虫さされ(ダニ、ノミ等)」「②汗によるかぶれ」「③化学繊維による刺激」等が挙げられます。
① 虫さされ(ダニ、ノミ等)
虫のもつ刺激や毒により、アレルギーを引き起こす神経伝達物質のヒスタミンが増加し、炎症が生じてぶつぶつが生じる場合があります。
② 汗によるかぶれ
汗に含まれる塩分や尿酸等の成分が皮膚に刺激を与えることで、かゆみやぶつぶつが生じる場合があります。
③ 化学繊維による刺激
化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなど)の下着や服による刺激が原因で、ぶつぶつやかゆみが生じる場合があります。
お腹のぶつぶつ、どう対処する?
患部をタオル巻いた保冷剤等で冷やす
汗をかいたら早めに洗い流す・拭く
汗をかいたら着替える
などの対処をすることで、かゆみを抑制できる場合があります。
市販薬を使ってもいい?
症状が軽い場合や原因が判明している場合は、市販薬を使用してもかまいません。
薬局で薬剤師に相談し、購入してください。
ただし…
強いかゆみで患部を掻き壊している
患部が拡大している
原因がわからない
という場合は、市販薬を使用せず医療機関を受診してください。
病院に行く目安
アトピー性皮膚炎を患っている
細菌等の感染が疑われる
眠れないほどのかゆみがある
という場合は、すみやかに皮膚科を受診してください。
お腹にかゆいぶつぶつができる3つの病気
お腹にぶつぶつができるのは、
汗疹(あせも)
疥癬
痒疹
が原因だと考えられます。
病気① 汗疹(あせも)
大量の汗により、お腹の皮膚表面の汗腺が閉塞され、皮膚中に汗が溜まり炎症が生じます。
高温多湿の環境下で汗が大量にかく・通気性が悪い衣類の着用・発熱が原因で発症すると考えられています。
症状の特徴
かゆみがある
赤くて小さいぶつぶつができる
透明な粒状の水膨れができる
ひりひりするような熱感がある
かゆみを伴わない白っぽい湿疹ができる
どんな人に多い?
子どもから大人まで幅広い世代で発症します。
汗っかきの人・肥満傾向の人(皮下脂肪が多い)・多汗症の人・高齢者・汗をかいても放置してしまう人に発症しやすいです。
自分でできる対処法は?
汗をかいたらこまめに洗い流す
肌を清潔に保つ
下着をこまめに変える
通気性のよい綿素材の衣類を着用する
患部をタオルで巻いた保冷剤等で冷やす
かゆくてもかかない
病院を受診する目安
患部を引っ掻いて細菌感染を起こし、とびひ状態になっている・ただれている場合は、早めに皮膚科を受診してください。
<とびひ状態とは>
とびひになると、傷口や皮膚の一部に、かゆみのある赤み・腫れ・湿疹が現れます。その後、強いかゆみを伴う水ぶくれ(水疱)があらわれます。水ぶくれは破れやすく、かいて潰してしまうと、まるで”飛び火”のように全身に発疹が広がっていきます。
病院で受ける治療法は?
炎症によるかゆみが強い場合 → ステロイド(塗り薬)
細菌感染が起きている場合 → 抗菌薬(塗り薬、飲み薬)
アレルギーが原因でかゆみが起きている → 抗アレルギー薬(飲み薬)
を用いた治療が行われることが多いです。
どれぐらいで治る?
症状や治療内容により個人差がありますが、1~2週間ほどで症状が改善するケースが多いと考えられています。
病気② 疥癬(かいせん)
ヒゼンダニ(ダニ)がお腹の皮膚に寄生することでぶつぶつが発生します。
同居している家族間での感染もあります。
症状の特徴
赤色のぶつぶつが発生する
小さい水膨れのようなものが発生する
強いかゆみを伴う (特に夜間)
どんな人に多い?
高齢者施設や入院している人にみられるケースが多いです。
自分でできる対処法は?
疥癬は接触により感染する恐れがあります。
自己判断でケアせず、皮膚科を受診してください。
病院で受ける治療法は?
クロタミトンクリームやフェノトリンローションの塗り薬、抗ヒスタミン薬の飲み薬を用いた治療が行われます。
また、イベルメクチンという飲み薬が日本でも使用可能になりましたが、副作用が出る場合があるため医師との相談が必要です。
どれぐらいで治る?
出現している症状や治療内容による個人差がありますが、3~4週間ほどで症状が改善するケースが多いです。
病気③ 痒疹(ようしん)
痒疹には急性と慢性があります。
どちらも発症原因ははっきりとわかっていませんが、
急性痒疹 → 虫さされ
慢性痒疹 → アレルギー(アトピー性皮膚炎等)・虫さされ・内臓疾患・糖尿病・悪性腫瘍・使用中の薬
などが関係していると考えられています。
症状の特徴
かゆみを伴うぶつぶつができる
赤い色のぶつぶつができる
ぶつぶつが散らばるように発生する
小豆くらいの大きさのぶつぶつができる
硬い茶色のイボ状の塊が発生する
どんな人に多い?
急性痒疹は子どもに多くみられます。
慢性痒疹は40歳から50代に多くみられると考えられています。
自分でできる対処法は?
痒疹は強いかゆみを伴うケースが多いので、皮膚科の受診をおすすめします。
引っかくと皮膚の一部が剥がれて細菌感染が起こり、伝染性膿痂疹を起こす恐れがあります。
病院で受ける治療法は?
ステロイド薬の塗り薬・抗ヒスタミンの飲み薬・抗アレルギーの飲み薬・漢方薬を用いた治療が行われるケースが多いです。
どれぐらいで治る?
1週間程度で改善するケースもあれば、年単位の時間を要するケースもあります。
症状や治療内容により個人差は大きいです。
何科で受診すればいい?
お腹にかゆいぶつぶつができた時は、皮膚科を受診しましょう。
薬の処方により、かゆみ等の不快な症状の改善や症状の悪化予防が期待できます。
放置してかゆみが強くなり引っ掻いてしまうと、細菌感染を起こす可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
▼参考
日本臨床皮膚科医会 ひふの病気 疥癬
公益社団法人 日本皮膚科学会 痒疹・かゆみ
公益社団法人 日本皮膚科学会 疥癬
大人のとびひ、自然治癒する?
放置しておいても自然に治るものなのでしょうか?
とびひは、自然治癒することもあります。ただし、自然に治るまでは長い期間がかかるでしょう。
自然に治るのを待つ場合、治るまでに数ヶ月かかるケースが多いです。
とびひは“飛び火”のように、あっという間に全身に広がります。強いかゆみを伴うため、自分では対処できないことが多々あります。
「早く治したい」「肌に跡を残したくない」方は、初期症状の時点で、病院で診察をうけて、治療を始めるのが得策です。
大人のとびひを「早く治す方法」
大人のとびひを早く治すには、まずは皮膚科で薬を処方してもらうことをおすすめします。
また、早く治したいなら、“皮膚を清潔に保つこと”が大切です。汗をかいたらこまめに拭いたり、着替えたりしましょう。
とびひが軽症であれば、市販薬でも構いませんが、病院ではそのときの症状に合わせた処方薬をしてもらえます。抗生剤の入った塗り薬を処方します。
とびひが全身に広がっている場合は、塗り薬に加えて抗生剤の内服を行います。
いつ治る?
正しくケアをした場合、治るまでどれくらいの期間がかかりますか?
症状の改善が見られるのは、平均5〜7日間ほどです。
処方薬を使用して、2〜3日目に治療があっているかの判定を行います。患部の改善が良くない場合は、皮膚の細菌培養をして抗生剤の種類を変えます。
皮膚科を探す
市販薬は使える?
とびひに、市販の軟膏は塗るのは効果がありますか?
初期の場合は市販薬が有効な場合もあります。
初期のとびひであれば、抗生物質が入っているドルマイシンや炎症を抑えるテラ・コートリルなどを使用してもよいでしょう。
ただし、症状が進んでいる場合は、早めに病院を受診しましょう。
菌の毒素が血液中に入り込んだり、腎障害を合併する場合もあります。
また、市販薬は、自身で選ぶのではなく、薬剤師に症状を話して選んでもらうほうが良いでしょう。
「なかなか治らない」ときの対処
「とびひが治らない原因」は何でしょうか?
無意識のうちに患部をかいている可能性があります。
かけないように患部を覆い、しっかり完治するまで薬を使用しましょう。
とびひは、かいてしまうと広がり悪化します。なかなか治らない人は、寝ている時や無意識な状態の際に患部をかいているかもしれません。患部はガーゼで覆い、かけないようにしましょう。また、爪は短く切っておきましょう。
また、治療を開始すれば数日で症状が落ち着きますが、症状が落ち着いてきたからといって、勝手な判断で処方薬をやめると治療が完治せずに長引く場合があります。医師に指示された通りに薬は使用しましょう。
重症化するキケンも…
大人のとびひが重症化すると、猛烈な痛みをともなう「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」を発症する場合があります。
まれに、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(別名:SSSS)を発症する場合があります。これは、ブドウ球菌がつくり出す毒素が、血液中に入り発症します。高熱・皮膚の腫れ・水ぶくれといった症状が現れます。触っただけでも皮膚がはがれるので、猛烈な痛みが生じます。多くが入院しての治療を必要とします。
Q.お風呂ははいってもいい?
お風呂にはいっても大丈夫でしょうか?
湯船にはいるのはおすすめできませんが、細菌を洗い流す必要があります。
シャワー浴を行いましょう。
とびひの患者さんは、痛みがあるとお風呂に入りたがらない場合もありますが、毎日、お風呂に入って細菌を洗い流す必要があります。手に石鹸をよく泡立てて、患部をこすらないように優しく洗浄してください。
温めるとかゆみが出る場合もあるので、シャワー浴を行いましょう。また、うつさないため、家族との同時入浴は避け、最後に入浴させるようにして、タオルや衣類の共有は避けましょう。
Q.お洗濯はいつも通りで大丈夫?
洗濯するときの注意点はありますか?
いつも通りの洗濯で問題ありません。
洗濯は、通常通りで構いません。他のものと同時に洗っても大丈夫です。
Q.仕事や買い物…外出してもいい?
仕事や買い物など、外出しても問題ない?
外出OKですが、じゅくじゅくした患部をガーゼで覆ってから出かけましょう。
とびひは、患部の水疱や膿痂疹(じゅくじゅくした部分)に細菌が入っています。水ぶくれが破れ、中の液が染み出て傷ついた周りの皮膚に触れると、そこに新しい水疱・膿痂疹ができるのです。
そのため、外出に制限はありませんが、外に出る場合は水疱や膿痂疹の部分をガーゼで覆うとよいでしょう。
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2020-12-28
体のあちこちに膿がたまる…。どうしたら治るの?
膿がたまる原因と対処法を、お医者さんに聞きました。
心当たりのある症状と、「何科を受診すれば良いのか」をチェックしましょう。
なぜ?体中に膿がたまる…
細菌感染で炎症が起こると、皮膚に膿がたまります。
なんらかの原因で、皮膚の細菌感染が広がっている状態です。
この症状は早く病院へ
1週間経っても改善が見られない
症状の範囲が広がっている
炎症やただれを起こしている
といった場合は、すみやかに病院へ行きましょう。
受診するのは何科?
皮膚科・形成外科を受診してください。
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膿がたまる5つの原因
体中に膿がたまる症状は、
アトピー性皮膚炎
とびひ
毛包炎の悪化
アテローム
慢性膿皮症
が原因として考えられます。
以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
原因① アトピー性皮膚炎
皮膚をかきむしることによって、その傷に膿がたまる場合があります。
アトピー性皮膚炎になると、皮膚のバリア機能が低下するため、炎症がよく起こります。
アトピー性皮膚炎になりやすい人
アレルギー体質の人や、皮膚が弱い人に発症しやすい病気です。
成人後に発症するケースは、ストレスや疲労が蓄積している人に多いです。
症状の特徴
かゆみ
ただれ
赤み、腫れ
湿疹
肌の乾燥
どう対処すべき?
まずは皮膚科で診察・治療を受けましょう。
医師の指導のもとで薬を使用し、保湿をしっかりと行うことで、症状を改善できます。
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原因② とびひ
かきむしりによって発生した菌が、体のあちこちに増えていく病気です。
とびひは、傷口に細菌が感染して発症します。
患部を触った手で他の部位をかきむしることで、症状が広がっていきます。
とびひになりやすい人
あせもや傷ができやすい人に多い病気です。
病気で免疫力が低下している人は、発症リスクが高まります。
症状の特徴
水疱
かさぶた
かゆみ
赤み
ただれ
どう対処すべき?
とびひの疑いがあるときは、すぐに皮膚科へ行きましょう。
他の部位や周囲の人への感染を防ぐには、治療が必要です。
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原因③ 毛包炎の悪化
細菌感染によって毛包の炎症が、近くの毛包へも広がっている状態です。
毛包とは、毛を取り囲む組織のことを言います。
毛包炎が悪化しやすい人
皮膚のバリア機能が低下している人に多い症状です。
アトピー性皮膚炎や糖尿病を患っていると、毛包炎が悪化するリスクが高まります。
症状の特徴
熱感
痛み
赤み
皮膚症状の広がり
どう対処すべき?
まずは病院を受診しましょう。
悪化した毛包炎の治療には、抗生物質が必要になる場合も多いです。
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原因④ アテローム
膿だけでなく皮膚のしこりもある場合は、アテロームが考えられます。
アテロームは、皮下に形成された袋に角質や皮脂が中にたまっていく病気です。
肥大化して表面の皮膚が薄くなると、膿が出てきます。
アテロームになりやすい人
年代問わず発症します。
はっきりとした原因はわかっていません。
症状の特徴
皮膚のしこり
痛み
臭いがある
どう対処すべき?
できものを潰さないでください。
潰した箇所から細菌が侵入し、傷跡になってしまう恐れがあります。
アテロームの治療には手術が必要です。早めに病院を受診しましょう。
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原因⑤ 慢性膿皮症
慢性膿皮症を発症すると、体のあちこちに膿がたまります。
現段階では、詳しい原因はわかっていません。
慢性膿皮症になりやすい人
男性や、中高年の肥満体型の人に多い病気とされています。
症状の特徴
膿が出る周囲の皮膚が硬くなり、色味が入る
痛み
臭いがある
おしりや会陰部に発症しやすい
どう対処すべき?
早期の受診をおすすめします。
慢性膿皮症の治療には、外科処置が必要です。
早期受診をおすすめします
症状の悪化を防ぐことで、皮膚を元の状態に戻しやすくなります。
症状でお困りの場合は、早めに病院で相談しましょう。
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▼参考
公益社団法人 日本皮膚科学会 とびひ