「息苦しい…」
「これって太りすぎが原因?」
肥満を呼吸の関係を、お医者さんに聞いてみました。
自分でできる息の整え方や、肥満で起こる動悸などの症状例も解説します。
肥満による息苦しさは命に関わることもあるため、放置はキケンです。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
“太りすぎ”による呼吸器の症状例
- 呼吸が浅く速くなる
- 軽い運動時に息切れを感じる
- 激しい運動時に咳が出る
- 息をうまく吸えない感じがする
など
また、肥満は交感神経を優位させるため、「不安」や「動悸」を感じる場合もあります。
医学的に”肥満”といわれるラインはどこから?
肥満度を示す「BMI」が25を超えると、男女ともに肥満と判断されます。
特に「BMI」40の高度肥満+合併症が認められる場合には、「重症肥満」と診断され、病気として扱われるようになります。
BMIの計算方法
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)でBMIが算出できます。
▼肥満に値する体重の例
身長160センチの場合…64㎏以上で肥満
身長170センチの場合…72.2㎏以上で肥満
肥満の影響で「息苦しくなるしくみ」
肥満の影響で息苦しくなるのは、
- 肺に負担がかかる
- 心臓が栄養不足になる
などが関係していると考えられます。
肥満による息苦しさは、心臓病の発症リスクを高くさせる「要注意な症状」です。
どんな影響で息苦しくなるのか、それぞれ詳しく解説していきます。
① 肺に負担がかかる
肥満が進むと、脂肪で肺が圧迫されて負担がかかります。
肺のふくらみやすさや肺容量が低下するため、浅く速い呼吸になります。
呼吸が浅く速くなると、十分な酸素を取り込めずに息苦しくなってしまいます。
また、脂肪の圧迫によって肺容量が低下すると、空気が気道を通りにくくなります。
すると、息切れや喘息のような症状を助長するようになり、息苦しさにつながります。
② 心臓が栄養不足になる
肥満の状態だと、呼吸が浅くなったり、ホルモンバランスが崩れて代謝が低下したりします。
同時に体の「栄養を取り込む能力」も低下するため、心臓が栄養不足になってしまいます。
栄養が不足した心臓は、「心拍数を増やす」ことで栄養補給を補おうとします。
心拍数が増えると、息苦しさを感じるようになります。
「将来の病気」のリスクにもつながる…!
心拍数を増やす「過度な心臓の働き」は、将来の「動脈硬化」「狭心症」などの発症リスクも高める恐れがあります。
息苦しくなったら「まず呼吸を整える意識を」
- 口をすぼめて、ストローを通すように息を吐く
- 吐けたら、鼻からゆっくり酸素を取り込む(鼻呼吸がカギ)
- 吸いきったら、①②を2~3回繰り返す
①~③を行い、呼吸が落ち着いてきたら、
- 息を吸うときに「お腹を膨らませる」
- 吸いきったら、3~4秒息を止めてから吐く
などを意識しましょう。
上記を行うときは、テーブルに肘をついたり、膝に手をついたりして、軽く前傾すると少し楽になります。
このまま放置すると…どうなる?
肥満による息苦しさを放置すると、
などの心臓病の発症リスクを高める恐れがあります。
心臓病は命に関わるので、発症を防ぐことが大切です。
肥満に心当たりがある人は、早めに減量に取り組むことをおすすめします。
今、あなたができる5つの対策
肥満が気になり、息苦しい人は
- 体型の認識
- 食習慣の改善
- 活動量を多くする
- 質のよい睡眠を摂る
- 禁煙
を行いましょう。
まずは、取り組みやすいことから始めてみましょう。
1. 体型を認識しよう
体重を測って数値化すると、今の体型を認識しやすくなります。
肥満の解消を進めるため、理想のイメージを具体的にしましょう。
「体重測定」のコツ
体重測定は、できるだけ同じ条件下で行うようにしましょう。
例えば、
などの条件を意識して測ることで「測定条件のブレのない推移」を見ることが出来ます。
2. 食習慣を改善しよう
「まだ食べられるけど、お腹は空いていない」程度の、腹八分目を目安に食事を行いましょう。
「満腹まで食べる」「早食い」「間食が多い」「肉ばかり食べる」などの食生活はNGです。
「食事改善」のコツ
- まだ食べられるときでも、我慢する
- 1日3食、食事の時間を決めて摂る
- 1口30回を目安によく噛んで食べる
- 野菜や海藻から食べる(1日350gが目安)
- バランスよく食べる
3. 活動量を多くしよう
普段の生活+10分(1,000歩・1㎞相当)の活動量を増やしましょう。
運動を急に始めると、怪我のリスクがあるため、少しずつ軽く身体を動かす意識をしましょう。
4. 質のよい睡眠を摂ろう
肥満で息苦しいと感じる場合は、気道を塞ぎにくい「横向き」で寝ましょう。
仰向けで寝ると、脂肪で気道が圧迫されやすく、睡眠中の呼吸を阻害してしまうことがあります。
「横向きで寝る」コツ
横向きになったときに、上側になる足を少し曲げてみましょう。寝姿勢が安定します。
5. 禁煙をしよう
息苦しいと感じている人は、禁煙をしましょう。
タバコには有害物質が多く、肺胞に付着し、肺でのガス交換がうまくできず、さらに息苦しくさせてしまいます。リスクを減らすためにも禁煙を行いましょう。
「禁煙する」コツ
などがおすすめです。
(タバコの量を減らす、吸う㎎を小さくするのは、ニコチン依存が高まり逆効果になる恐れがあるため、おすすめできません)
日常に支障がでているときは、早めに病院に相談を
- 息苦しさで日常生活に支障がでている
- 日中の眠気がひどく仕事にならない
- 家族に「いびき」「睡眠時の無呼吸」を指摘される
- 睡眠中、息苦しさで目が覚める
上記に当てはまる人は、早めに病院で受診しましょう。
肥満による息苦しさは心臓の負担となるので、放置は禁物です。
また、肥満による「睡眠時の無呼吸」は、約9年の放置で4割の方が亡くなるというデータがあり、突然死のリスクも高まりやすくなります。
何科に受診すればいい?
肥満で息苦しさを感じている人は、「内科」で受診しましょう。
「太りすぎくらいで病院に行っていいのか…」と受診を迷っている方へ
内臓脂肪の蓄積による肥満は、
- 生活習慣病(ガン、心臓病、糖尿病 など)
- 脳血管疾患
など、“命に関わる病気”の発症リスクにつながります。
その過程の大半は「無症状」であることがほとんどです。
よって、肥満の人は早めに病院で受診して対処することが何よりも大切になります。
お医者さんには、なんて伝える?
受診時には、
- 息苦しさがいつから続いているのか
- 日常で困っていることは何か
- 他に何か症状があるか
などを医師に詳しく伝えましょう。
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2022-02-17
“夜だけ炭水化物抜き”にどんな効果があるのか、栄養士さんに聞いてみました。
「なかなか痩せないのはなぜ?」
「太りやすくなるってホント?」
といった疑問にもお答えします。
ダイエットの食事で大切なポイントやおすすめの炭水化物なども要チェックです。
夜だけ炭水化物抜きって「痩せる?痩せない?」
夜に主食を抜くと、最初は痩せることが多いです。
しかし、主食以外の栄養バランスが偏っていると、その後の効果は出にくいです。
糖質はカットできていても、他の栄養素が不足、もしくは過多になっている可能性があります。
なかなか痩せられない方は、「毎日何を食べているのか」をきちんとチェックすることをおすすめいます。
炭水化物完全カットより、バランスや食べ方が大事
糖質を完全にカットしなくても、栄養バランスや食べる順番を工夫することで痩せやすくなります。
ダイエットをするときは、
副菜→主菜→主食の順で食べる
「タンパク質」を毎食取り入れる
減塩を意識する
夕食はできれば18~19時までに食べる
などを心がけましょう。
まずは食事の栄養バランスを整えることが大切です。
副菜・主菜・主食が揃った「和定食」をイメージすると、バランスのよい食事になりやすいでしょう。
① 副菜→主菜→主食の順で食べる
副菜→主菜→主食の順で食べると、満腹を感じやすくなるので食べ過ぎ予防につながります。
また、糖質や脂質が吸収されにくくなり、太りにくくなる効果が期待できます。
特に「海藻」を食事の最初に摂るのがおすすめです。
糖質や脂質、塩分の吸収が緩やかになるため、太りにくく、むくみにくくなります。
<一食分の目安量>
副菜…サラダであれば、両手たっぷり
主菜…たんぱく源は、片手分
主食…こぶしひとつ分以内
② 「タンパク質」を毎食取り入れる
タンパク質は「筋肉を作る材料」になります。
筋力量が増えると基礎代謝を上がって痩せやすくなるため、毎食取り入れることをおすすめします。
また、消化に時間がかかって腹持ちするので、毎食しっかりとると間食や次の食事量を抑えやすくなります。
③ 減塩を意識する
減塩するために、
味噌汁や煮物は出汁パック(塩分無添加)でとる
減塩タイプの調味料を使う
タレや醤油は少量つける
総菜・インスタント食品を控える
漬物、水産・畜産加工品を控える
などを意識しましょう。
減塩することでむくみにくくなるため、見た目もスッキリしやすいです。
減塩で物足りなさを感じる人は、香味野菜やスパイス、ハーブ、酸味をプラスするとよいでしょう。
▼水産加工品の例
スモークサーモン、しらす、干物、いくら など
▼畜産加工品の例
ベーコン、ハム など
④ 夕食はできれば18~19時までに食べる
遅い時間の夕食は、脂肪蓄積につながります。
可能であれば、夕食は18~19時までに食べましょう。
また、食事量を「腹八分目」に抑えることも大切です。
食べるなら…ご飯・パン・麺、どれがいい?
ダイエット中の炭水化物は、
玄米
雑穀米
ブランパン
などがおすすめです。
これらは白米や通常の小麦由来のパンよりも食物繊維含有量が多く、血糖値を上げにくいため、太りにくい炭水化物といえます。
ダイエット中に「おすすめしない炭水化物」
白米
食パン
菓子パン
麺類(パスタなど)
といった炭水化物は、ダイエット中は控えましょう。
これらは、食物繊維含有量が少なく血糖値を上げやすいため、糖が吸収されて太りやすいと考えられます。
ダイエット中におすすめの晩御飯メニュー
和食、洋食それぞれ副菜・主菜・主食ごとに、おすすめメニューを解説します。
和食のメニュー例
副菜:野菜のサラダ、海藻の酢の物、きのこの減塩味噌汁 など
主菜:鯖の塩焼き
主食:玄米、雑穀米
洋食のメニュー例
副菜:ミネストローネ(パスタ除く)、付け合わせの温野菜(根菜や芋類以外の野菜中心)など
主菜:鶏胸肉のハーブグリル
主食:ブランパン
晩御飯後にウォーキングするのもおすすめ
食事の1~2時間後に15~30分間程度「ウォーキング」すると、食べたものが消費されるため、太りにくくなるでしょう。
より効果を実感しやすくするためにも、ウォーキングするときは正しいフォームで歩きましょう。
ウォーキングの正しいフォーム
頭は揺れないようにして、姿勢を真っすぐ伸ばす
目線は20m先を真っすぐに見る
リラックスして肩の力は抜く
ひじを後ろに引くようにして腕を振る
前に出した足はひざを伸ばす
かかとからしっかりと地面を踏む
▼参考
厚生労働省 e-ヘルスネット 糖尿病を改善するための運動
タカハラ整形外科クリニック vol.43歩き方指導 ~個々にあった方法で~
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2019-10-01
冬は太りやすい、というイメージがありますよね。
その理由を、「寒さで脂肪を蓄えてしまう」「代謝が落ちてしまうから仕方ない」と考えている人がいますが、本来は、冬こそ痩せるチャンスなのです。
今回は、冬に痩せるメカニズム、おすすめの食材や運動方法までご紹介します。
冬に太りやすくなる理由
冬に太りやすくなるのはなぜ?
寒いと脂肪を溜めやすくなるというイメージが先行してしまいますが、カロリーを動いた量より余分に摂らない限り脂肪はつきません。
冬は、寒いので外出が減り室内で過ごす時間が多く、ついつい間食をしてしまう機会が多くなります。
加えて暴飲暴食しやすい忘年会や新年会、クリスマスやお正月というイベントが多く、カロリーオーバーになりがちな季節。
また、寒くて必要以上に動きたくない、年末年始の長期休暇がある=「通常より運動量が減る」という現象が重なり、冬太りする人が多いのです。
実は、冬は痩せやすい季節
冬になり気温が下がると、人間の体温も必然的に下がります。体温が下がると、体温を保とうとしてエネルギーを使います。
このように、実は冬は、普段通りの生活でも代謝が上がっており、脂肪を燃やしやすいのです。この時期に上手に食べ、動けば、痩せやすい季節といえるのです。
空調の整った室内にいるよりも、外で動いて体温を上げると、より脂肪が燃焼しやすくなります。
食事で冬太り対策|食材・料理
ダイエットに向く冬の食材
ブロッコリー
クロムというミネラルを含まれています。脂肪の燃焼や筋肉を作る働きがあり、ダイエットの味方です。
生姜、ネギ
代謝は上がっていても、寒い冬は体が冷えがちです。体を温める生姜やネギもおすすめです。
生姜は、チューブでも販売されているので、持ち歩いて外で食事をするときにも使えます。
他にもシナモンも体を温める働きがあります。飲み物やスープにふりかけて取り入れましょう。
飲み物では、体を温めるほうじ茶や黒豆茶、生姜湯などがおすすめです。
生の生姜は体の熱をとる働きがあるので、発熱のときにはオススメですが、体を暖めるためには、加熱、または乾燥生姜を使いましょう。
冬のダイエットにおすすめ料理
冬は、パーティーなど人が集まる席で、油を使った料理や揚げ物をよく食べるため、太りやすいと感じる人も多いのではないでしょうか。
その分、普段の料理では、あっさりして温かい食べ物を摂るようにしてはいかがでしょう。
ネギたっぷりの鍋や、スープにポトフ、おでんなど、食材を煮込むだけの料理が美味しいのも冬です。
具材には、根菜野菜(人参、ごぼう、玉ねぎ)や赤身の部分の肉、タコなどがヘルシーでさらに体を温めます。ぜひ、ダイエット食に取り入れてください。
その際、スープは糖分や油分がたっぷりなので残しましょう。
運動|特に冬は血圧の急上昇に注意
ウォーキング
せっかく基礎代謝が上がっている冬場なので、さらに脂肪を燃やし、血行を促進してくれるウォーキングが手軽でおすすめです。
ウォーキングは、有酸素運動で脂肪を燃やしやすくしてくれます。姿勢良く、特に太ももを持ち上げて歩くようにすると、筋肉をしっかり動かすことができます。
朝、一駅分歩く、階段を使う、ちょっと遠回りをする、など少しずつ動く時間を増やしてみてはいかがでしょうか。
筋トレ
室内では、筋トレを取り入れ、エネルギーを消費する筋肉を増やしましょう。
外の温度が低い冬のウォーキングは、始める前に室内で、準備運動をして外に出るようにしてください。
寒い中で急に体を動かすと血圧の急上昇につながり体や心臓に負担がかかります。準備運動をして冬のダイエットを健康的に行いましょう。