原因不明のあざが体じゅうに…。
“大人の紫斑病”について、お医者さんに聞きました。
重い病気の可能性もあるので、「何科を受診すべきか」も要チェックです。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
紫斑病で現れる症状チェック
- 紫色のあざ
- 皮膚に紫色の点ができる(点状出血)
- かゆみ
- 腹痛、下痢
- おう吐
- むくみ
- 関節痛、関節の腫れ
- 発熱
- 食欲不振
- 体重減少
※この他にも、まれに、頭痛や動悸、息切れ、意識障害、けいれんなどの症状が出る場合があります。
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2020-07-29
「腕に赤い斑点が出てる…。
「肝臓が悪いサインって本当?」
かゆみのない赤い斑点の正体をお医者さんに聞きました。間違えやすい湿疹との見分け方も解説します。沈黙の臓器といわれる肝臓。放置すると、重い肝臓の病気を見逃す可能性もあるので、しっかり確認しましょう。
腕の赤い斑点は肝臓が悪いサイン?
腕にかゆみ・痛みのない赤い斑点があらわれたら、もしかしたら肝臓が悪いサイン「クモ状血管腫」かもしれません。
クモ状血管腫は、肝臓機能が低下すると出現する症状のひとつと考えられています。
<クモ状血管腫の特徴>
クモ状血管腫とは、見た目がクモが足を広げているように見えることからこの名がついています。
少し盛り上がって見える直径3~10m程度の大きさの赤い斑点を中心として、毛細血管が放射状に拡張した状態です。赤い斑点は、指で押して圧をかけると赤い色が消失します。
あまり心配いらないケース
1個もしくは少数のクモ状血管腫が発生している場合は、そこまで心配する必要はありません。
クモ状血管腫は、小さい子どもや健康体の成人でもよくみられます。また、妊婦の方にも現れやすく、出産後自然治癒するケースが多いです。
要注意のケース
クモ状血管腫が多数発生している場合は、注意しましょう。
また、クモ状血管腫とともに、手掌紅斑(※)や強い倦怠感、黄疸がみられる場合も、病院に行きましょう。
このような症状が現れている場合、肝臓が線維化して表面が硬い状態になってしまう「肝硬変」を発症していることが考えられます。
※手掌紅斑…手のひらの親指付け根と小指付け根が赤くなる症状
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間違いやすい「他の湿疹との見分け方」
クモ状血管腫の症状には、次のような特徴があります。
毛細血管が放射状に浮かび上がっている
主に上半身に発生する
痛みやかゆみを伴わないケースが多い
徐々に大きくなっていくケースが多い
蕁麻疹など他の皮膚疾患と見分ける際は、上記の症状を確認してみましょう。
思い当たる?こんな人は要注意!
クモ状血管腫は、成人男性に多くみられる傾向があります。
肝機能の低下によって発生するケースが多いため、
アルコールを過剰摂取している
脂肪分が多い食品を過剰摂取している
運動不足
の方に多いです。
また、クモ状血管腫の原因となる肝硬変は、ウイルス感染によって発症することが多いので、次のような人にも現れる可能性があります。
血液や体液に触れる機会が多い
1992年より前に輸血経験がある
血液製剤の投与経験がある
長期間、血液透析を受けている
ボディピアスや刺青を入れている
また、自己免疫性肝炎(自身の正常な肝細胞を壊してしまう原因不明の難病)を患っている場合も、あらわれることがあります。
肝臓が悪いと、他にこんな症状も…
◎黄疸がでる(白目が黄色いなど)
◎手が赤くなる
◎紅茶色の尿がでる
◎血が止まりにくい
◎全身がかゆい
◎足がむくむ
◎膨満感が強い
◎お酒が飲めなくなる
◎男性の乳房が膨らむ
◎腹水でお腹が張っている
◎右のあばら骨あたりの痛み
◎みぞおち下あたりの血管が浮いている
●全身の倦怠感
●疲れやすい
●無気力
●嘔吐・頭痛
●食欲不振
●発熱
●頭痛
特に、◎の症状がでている場合は要注意です。肝臓になんらかの異常がでている可能性が高いです。
病院に行くべき?
クモ状血管腫が多数発生している場合や、上記のセルフチェックに当てはまる症状があった場合は、病院の受診をおすすめします。
受診するのは何科?
内科、消化器内科等の受診をおすすめします。
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早期受診のメリット
早期に病院で検査を受けることで、早い段階から治療を開始できるため、肝疾患等の重症化を予防できます。
また、肝疾患以外の場合も、原因が特定されることで、精神的負担が軽減します。
病院に行かずに放置していると、重篤な疾患を見逃して、肝がん等を発症する恐れがあります。
気になる症状がある方は、必ず病院に行きましょう。
参考
東邦大学 皮膚が示す内臓の変化のサイン
MSDマニュアル 家庭版 くも状血管腫
日本医事新報社 手を見て肝臓病を疑う─手掌紅斑[プラタナス]
日本皮膚科学会 赤アザにはどのようなものがあるのでしょうか?
学校法人日本医科大学 血管腫(赤あざ)とは
大人も発症するの?
紫斑病は、大人も発症する病気です。
特に小さい頃に重い紫斑病を患っていた場合は、成人後に再発しやすい傾向があります。
大人が発症する紫斑病には「単純性紫斑病」や「老人性紫斑病」、「アレルギー性紫斑病(IgA血管炎)」などがあります。
<単純性紫斑病>
20代の女性に多い原因不明の紫斑病です。
血管が弱くなった皮下の出血により、皮膚に紫色の斑点ができます。
<老人性紫斑病>
50~65歳の人に多い紫斑病です。
加齢によって真皮組織が老化し、そこから血管が弱くなった皮下の出血により、皮膚(特に手)に紫色の斑点ができます。
<アレルギー性紫斑病(IgA血管炎)>
アレルギー反応によって炎症が起こる紫斑病です。
詳しい原因はわかっていません。しかし、特定な食べ物を食べたり、何かに触れたりしたときに起こりやすいと考えられています。
人間の体には、細菌・ウイルスと戦うための免疫物質があり、そのうちの1つに「IgA抗体」というものがあります。
この病気は、誤作動を起こした「IgA抗体」が、体の皮膚や腎臓、腸管などの血管に炎症を引き起こしている状態です。
大人の紫斑病の原因は?
- アレルギー
- がん
- 膠原病(こうげんびょう)
- 細菌、ウイルス感染
などが挙げられます。
なんらかの病気によって血管が脆くなると、皮膚下の出血が起こりやすくなります。
また、感染症の後遺症として免疫機能に異常が起こり、紫斑病を発症するケースもあります。
「ストレス」で紫斑病になってしまうって本当?
紫斑病は原因不明な部分が多いため、ストレスとの関係性は不明です。
ただし、ストレスが免疫機能の異常を引き起こす可能性は考えられます。
病院に行くべき?
紫斑病の疑いがある場合は、医療機関の受診をおすすめします。
症状が軽い場合は自然に治るケースもありますが、病気が隠れている可能性もあるため、念のため検査を受けましょう。
また、症状が進行すると “紫斑病性腎炎”などの合併症を引き起こすリスクがあります。
腎炎を伴うと治療も長引きます。早めの受診を心がけてください。
病院は何科に行けばいい?
紫斑病の疑いがあるときは、まずは皮膚科を受診しましょう。
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どんな治療を受けるの?
「紫斑病」の疑いがある場合、血液検査・尿検査・便検査・生検などを必要に応じて行います。
「単純性紫斑病」、「老人性紫斑病」は経過観察で治療をすることはあまりありません。
「アレルギー性紫斑病」は止血薬や血管強化薬と投与したり、痛みに非ステロイド系抗炎症薬を使用した治療を行います。「アレルギー性紫斑病」は痛みが強い場合など入院することもあります。対症療法が中心なので、痛みが治る、状態が安定するまで、おおよそ1週間ほど入院することが多いです。
放置はNG!重い病気のリスクも
紫斑病には、重い病気が隠れているケースがあるため、放置は危険です。
また、紫斑病によって血管が傷つき、その部分から血液が漏れたり詰まったりした場合は、命に関わることもあります。
「原因不明のあざが体じゅうにある」という場合は、早急に受診してください。
皮膚科を探す
※記事中の「病院」は、クリニック、診療所などの総称として使用しています。
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2020-11-19
「足に赤い斑点ができた…」
「かゆくないけど、これって大丈夫なの?」
自然に治る?病院に行くべき?
足にできたかゆくない赤い斑点について、お医者さんに聞きました。
対処法と病院に行く目安も解説します。
かゆくない足の赤い斑点の正体は?
足にかゆみがない赤い斑点が出ている場合、
薬疹
IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
の可能性が高いです。
原因① 薬疹
薬疹とは
薬に対するアレルギー反応
薬の副作用
長期間の摂取による薬剤の蓄積
少量の薬剤でも過剰状態(不耐性)
本来の薬理作用と異なる効果(特異体質)
がでている状態です。
薬を使用して数分以内に症状があらわれるケースもあれば、数時間・数日・数週間後にあらわれるケースもあります。
薬疹を起こしやすい薬を使用している、薬に対して反応するような細胞や抗体がある人などがなりやすいと考えられます。
薬疹の「斑点の特徴」
赤い部分が盛り上がっていることが多いです。
皮膚が紫色・青色・灰色に変色することもあります。
赤い斑点以外の症状
倦怠感がある。
痛みがある。
口の中がただれる
熱が出る。
リンパ節が腫れる。
肝臓、腎臓、骨髄などの他臓器障害がある。
血圧が低下する。
ショックを起こす。
早く治すためにできることは?
原因となる薬を特定する必要があるため、医療機関を受診しましょう。
その際、おくすり手帳など使用している薬がわかるものを持っていくと良いです。
使用している市販薬があれば、あわせて伝えてください。
原因② IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
血管炎の一種で、頻度が高い病気です。
皮膚の細い血管に障害がおこることで、斑点が生じます。
細菌やウイルスの感染、薬剤、妊娠、悪性腫瘍などが誘因と考えられています。
3~15歳の子どもがなりやすいですが、どの年齢でもなる可能性があります
IgA血管炎斑点の「斑点の特徴」
膝から足首に、あざのような赤い斑点ができることが多いです。
斑点を触ると、軽いしこりのようなものがある場合があります。
※乳児の場合は顔、小児の場合はおしり・ふともも・背中・腕にできることが多いです。
赤い斑点以外の症状
血疱(血液を含んだ水ぶくれ)がある。
直径1cm以内の皮膚のもりあがり(丘疹)がある。
ただれている。
潰瘍がある。
微熱がある。
倦怠感がある。
関節が痛い。
腹痛や吐き気がある。
タール状の黒い便や下痢をしている。
最初の症状から数日・数週間後に、皮膚に新しい斑点や盛り上がりができることもあります。
早く治すためにできることは?
IgA血管炎が疑われる場合は、自己判断せず、早急に皮膚科を受診しましょう。
上記したような症状は通常は4週間ぐらいで治まりますが、数週間後に再発することが多いです。再発を予防するためにも、一度病院で診てもらうことをおすすめします。
皮膚科を探す
受診するのは何科?
まずは、皮膚科を受診しましょう。
特に、皮膚のもりあがりやしこりがある、皮膚症状以外にも症状がみられる場合は、一度病院に行きましょう。
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▼参考
皮膚病治療情報・皮膚科教科書 あたらしい皮膚科学 第3版 薬疹
MSDマニュアル家庭版 薬疹
公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 血管炎・紫斑病
MSDマニュアル家庭版 IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)