「ウォーキングをしているのに、血糖値が下がらないのはなぜ?」
ウォーキングの負荷が少ないと、血糖値が下がらないケースもあります。
効果的な歩き方・おすすめの筋力トレ方法なども解説しますので、血糖値を改善させたい方は必読です。
監修者
株式会社Luce
栄養士・食育栄養インストラクター
神原 李奈先生
経歴
株式会社Luce・健康検定協会 所属
CA(客室乗務員)の仕事をきっかけに、健康と食の強い結びつきを実感し、食の世界に興味を持つ。大手料理教室の講師の経験を経て、栄養士を目指すことに。栄養士免許を取得後の現在は、現役CAとして世界中を飛び回りながら、栄養士として健康や食に関する情報を発信している。
なぜ?「ウォーキングしたのに血糖値が下がらない」
食後にウォーキングをしたのに血糖値が下がりません…。なぜなのでしょうか?
ウォーキングで血糖値が下がらない場合、
- ウォーキングの時間が短い
- 普段と歩く速度が変わらない
- 心拍数が上がっていない
- 歩幅が狭い
といった原因が考えられます。
ウォーキング自体は、血糖値の改善に有効な運動方法です。
しかし、「少しだけ歩く」という運動習慣では効果を感じられないケースも多いです。
血糖値を下げるには、「ややきつい」と感じるくらいの運動強度が必要です。
ちゃんと血糖値を下げたい!どうすれば…?
血糖値を下げる「ウォーキング方法」
- 1回につき20〜60分、1週間に150分以上行う
- 歩幅を広げて歩く
- 速めのスピードで歩く
- 食後1~2時間後にウォーキングを始める
ウォーキングで血糖値を下げるには、「心拍数を上げる」ことが大切です。
普段のゆっくりとした歩き方から、徐々に運動強度を高めていきましょう。
ただし、急に運動強度を上げたり、体調が悪いときに無理して歩いたりしないようにしましょう。
過度の負荷がかかってしまうと、運動を継続できなくなったり、ケガの原因になったりします。
また、脱水症状を引き起こさないために、こまめに水分補給を行うのも大切です。
水分補給の際は、糖質が多く含まれるスポーツドリンク等を避け、「水」や「ノンカフェイン」のお茶を飲みましょう。
運動前には「準備体操」しよう!
ウォーキング前は、胸・ふくらはぎ・太ももの筋肉をゆっくりと伸ばしましょう。
ストレッチをすることでケガの防止につながり、運動を継続しやすくなります。
筋力をつけるために!「運動初心者におすすめのトレーニング」
筋肉量が増加すると、糖の処理能力が向上するため、ウォーキングによる「血糖値の改善効果」がアップします。
運動初心者の方は、
といったトレーニングがおすすめです。
おすすめ筋トレ① カーフレイズ
- テーブルなどに手をつく
- 軽く肩幅に足を開く
- 両足で立った状態でかかとを上げる
- ゆっくりとおろす
※ふくらはぎを傷める恐れがあるので、勢いよくかかとを上げないようにしましょう。
1セット10〜20回・1日2〜3セットを目安に行いましょう。
カーフレイズはふくらはぎを鍛えるトレーニングです。
ウォーキング・ランニング・下半身の筋トレなど、どの運動にもふくらはぎの筋肉が使われるため、重点的に鍛えることでトレーニングがスムーズになります。
おすすめ筋トレ② スクワット
- 脚を腰幅から肩幅に開いて立つ(つま先は膝と同じ向きに)
- 手を胸の前で軽く組む
- 太ももと床が並行になるくらいまで、お尻を下げる
- お尻の力を抜かないようにしながら、ゆっくりと元の位置に戻す
※上体をまっすぐしたまま膝を前に突き出すと、膝を痛めてしまうことがあるので注意しましょう。
1セット10回・1日3セットを目安に行いましょう。
スクワットは、太もも全体・おしりなど「下半身の筋肉」をまんべんなく鍛えられるので、筋肉量アップにおすすめです。
おすすめ筋トレ③ プランク
- うつぶせの状態から両肘を床につけて、腰を浮かせる
- 頭からかかとまで一直線になるように姿勢を保つ
- 腰が反らないようにして、30秒間キープする
慣れるまでは両膝をつく、10秒間だけにする、といった方法もおすすめです。
1日2~3セットが目安です。
プランクで体幹を鍛えることで、他の筋力トレや有酸素運動なども正しいフォームで行いやすくなり、運動効率がよくなります。
血糖値を下げるには「食生活の見直し」も大切
血糖値の上昇には、普段の食生活も大きく関わっています。
血糖値を改善させたい方は、
- 副菜 → 主菜 → 主食の順番で食べる
- 「食物繊維」を積極的に食べる
といった点を心がけて、食事を摂るようにしましょう。
おすすめの食事① 副菜 → 主菜 → 主食の順番で食べよう
副菜
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野菜/きのこ/海藻 など
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主菜
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お肉/魚/大豆製品など
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主食
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ご飯/麺/パン など
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食事は、副菜→主菜→主食の順番で食べ進めましょう。
血糖値を上げやすい糖質を最後に食べることで、急激な血糖値の上昇を防ぐことができます。
また、早食いは血糖値の上昇に原因になるので、よく噛んで食べることも大切です。
おすすめの食事② 食物繊維をしっかりと摂ろう
「食物繊維」が豊富な食材
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野菜類/豆類/海藻類/きのこ類/果実類/玄米/胚芽米/全粒粉パン
|
「食物繊維」を血糖値の上昇を抑制する作用があるため、食事で積極的に食べるようにしましょう。
特に海藻類は、糖の吸収をさらに緩やかにする「水溶性食物繊維」が豊富なのでおすすめです。
一方で、「不溶性食物繊維」を多く含む食品は噛み応えのあるものが多く、早食いや食べ過ぎの予防になります。
また、玄米・胚芽米・全粒粉パンにも食物繊維が多く含まれているので、主食のご飯やパンをこれらに変えるのもおすすめです。
サプリメントで補う場合は、ミネラルの吸収を妨げてしまう恐れがあるため、摂取しすぎに注意しましょう。
こんなときは、迷わず医師に相談を!
血糖値が高めな方で、
- のどが渇いて、よく水を飲む
- トイレへ行く回数が増えた
- 体重が減ってきた
といった場合は、糖尿病の疑いがあるので、病院で診てもらうことをおすすめします。
糖尿病が進行すると、網膜症・腎症・神経障害の三大合併症を発症するリスクが高まり、失明や透析になることもあります。
また、高血糖状態は血管にダメージを与えるため、動脈硬化によって「心筋梗塞」も誘発されます。
体の健康を守るためにも、症状に心当たりあるときは早めの受診を心がけましょう。
病院は何科を受診すべき?
糖尿病が疑われるときは、内科で受診するとよいでしょう。
病院では、まず血液検査で診断を行います。
糖尿病の方には、食事療法・運動療法・薬物療法などで改善を図ります。
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2022-02-17
「毎日10キロ歩いても痩せられない…」
「これってなぜ…?」
どんなにたくさん歩いても痩せられない理由について、栄養士さんに聞いてみました。
ウォーキングで結果を出すための方法や、痩せ始める時期についても解説していきます。
「毎日10キロ歩いても痩せない」人がはまる落とし穴
どんなにたくさん歩いても、消費エネルギー量(kcal)よりも、摂取エネルギー量(kcal)が上回っていれば、痩せるのは難しいです。
毎日10キロも歩いても痩せない理由として、
スポーツドリンクやジュースの飲みすぎ
運動後に高エネルギー食品をとっている
食事量が多い
といったことが考えられます。
落とし穴① スポーツドリンクやジュースの飲みすぎ
ウォーキング中の水分補給として、スポーツドリンクやジュースを飲んでいる場合、消費エネルギー量(kcal)よりも、摂取エネルギー量(kcal)が上回ってしまう可能性が高いです。
▼摂取カロリーの例
スポーツドリンク(500ml):105kcal
オレンジジュース(濃縮還元)(500ml):230kcal
落とし穴② 運動後に高エネルギー食品をとっている
長時間のウォーキング後、お腹が空いたからと高エネルギー食品をとっていると、消費エネルギー量(kcal)よりも、摂取エネルギー量(kcal)が上回ってしまう可能性が高いです。
▼摂取カロリーの例
板チョコ一枚(60g):331kcal
落とし穴③ 食事量が多い
長時間のウォーキング後、お腹が空いたからと食事量が多くなってしまうと、消費エネルギー量(kcal)よりも、摂取エネルギー量(kcal)が上回ってしまう可能性が高いです。
たくさん歩いても「カロリー消費が少ない」ことも!
10キロも歩いても、歩くスピードがゆっくりであれば、消費エネルギーが少なくなります。
また、体重が軽い人・体脂肪が多い人も、消費エネルギーが少なくなります。
「痩せ始める時期」までには時間がかかる
1kg減量するためには7,200kcalの消費が必要です。
アメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて計算すると、体重60kgの人が、時速4km(分速70m)、歩幅70cmで10分歩いた(700m、1000歩)場合、消費エネルギーは30kcalとなります。
同じペースで歩いた場合、単純計算で10kmを歩く消費エネルギーは428.6kcalです。
1日に240kcal分のエネルギー消費を増やす、もしくは控えることができれば、約30日間で変化を実感できるでしょう。
ウォーキングで「結果を出す」ためのアドバイス
ウォーキングで結果を出すための方法を紹介します。
歩くときのフォームや歩くスピードを変えるだけでも効果が大きく変わるので、ぜひチェックしてください。
コツ1. 正しいフォームで歩く
歩くフォームの6ポイント
肩甲骨を寄せて、背筋を伸ばす
肩の力を抜く
20m先を見る
腕ふりは“肘を後ろに引く”
踏み出す方の膝は伸ばす
踵から着地する
お腹や太ももの筋肉をしっかり使うことができると、消費エネルギー量のアップにつながります。
コツ2. 早歩きでウォーキングする
フォームが意識できたら、次は早歩きしましょう。
歩くスピードは速い方が、消費エネルギー量が多くなります。
コツ3. 食事前に行う
食事をとる前に運動しましょう。
食事をとる前であれば、ウォーキング時のエネルギー源は体脂肪がメインとなります。
体脂肪を燃焼してエネルギーとして使うことで、減量へ繋がります。
ただし、糖質が全くない状態では、脂質をうまく消費できません。
もし空腹を感じているのであれば、バナナなど手軽に補給できるものから糖分を補給してから行うとよいです。
※基本的に、ウォーキング直前に食事は摂らないようにしましょう。
食後30分〜60分は、胃の中で食べたものを消化しています。消化不良を起こす可能性があります。
食後のウォーキングであれば、食後30分〜60分以降にしましょう。
ウォーキング後に「やっておくとよいこと」
効率よくダイエットをするために、ウォーキング後にはストレッチを行うとよいでしょう。
可動範囲を広げるために、上記の図のようなストレッチを行うと良いです。
▼参考
厚生労働省 身体活動・運動
タカハラ整形外科クリニック vol.43歩き方指導 ~個々にあった方法で~
青木病院 転倒予防~歩き方編~
厚生労働省 成人を対象にした運動プログラム
神戸徳洲会病院 ウォーキングは食前か食後か?